湘南・省エネネットワーキングは24年間にわたり神奈川県の湘南地域で、SDGsの目標から、気候(地球温暖化防止)、エネルギー(省エネルギーと再生可能エネルギー)、健康(ライフスタイル)、教育(環境学習)、まちづくり(脱炭素社会)、パートナーシップ(連携)について活動を続けています。自然豊かで明るい湘南という地域に根ざして、幅広いネットワークによる省エネを中心にしたSDGsへの取組に、世代を超えた住民が参加しています。
*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。
どんな活動?
湘南地域で地元に根ざしたSDGs活動を展開
湘南・省エネネットワーキングは、地球温暖化防止の京都議定書が採択された翌年の1998年に、神奈川県の湘南地域に在住の市民が参加して発足した環境ボランティア団体です。 団体構成員は15名で、省エネの実践と地域での省エネ普及のための啓発活動を長年続けています。
その活動は多岐にわたります。たとえば、各家庭にエネルギー計測器「省エネナビ」を設置し、毎月の冷暖房などの電気使用量をチェックすることで「省エネ家計簿」としてデータを収集しました。また省エネの有効な手段についても、参加者からの報告によって「省エネ事例集」としてまとめています。
また、独自の「省エネカレンダー」を作成して配布。毎月のテーマをチェックしていくことで「省エネの達人」を目指すという活動を、先駆けて実践していました。 さらに、家電量販店の省エネ家電の販売調査では、冷蔵庫を省エネタイプに買い換えると10%の節電になる調査結果を発表するなどして、地域の省エネ家電の買替促進と普及に貢献しました。
近年では、家庭での温暖化防止対策として、中学校・高校生向けにグリーンカーテンづくりの体験講座を毎年開催。朝顔やゴーヤの苗を受講生に配布してグリーンカーテンの涼感を体験し、季節に合わせた省エネの方法や自然環境との共生を教えています。 また鎌倉市のまちづくり審議会に市民委員として参画して、自然環境と調和したまちづくりにも取り組んでいます。 そして、横のつながり=パートナーシップの形成としては、静岡県掛川市の「NPO法人おひさまとまちづくり」、神奈川県茅ケ崎市の「NPO法人ちがさき自然エネルギーネットワーク」の2団体を招聘して「脱炭素・省エネ湘南サミット」を開催。 また、奈良県奈良市の「ならエコ・エコの和」、茨城県鹿嶋市の「鹿嶋省エネ研究会」をそれぞれ訪ねて、情報の交換なども図っています。
活動のきっかけは?
市民レベルで省エネの意識を高める活動をスタート!
湘南・省エネネットワーキング代表 前島 仁氏
グッドライフアワード実行委員 AMIY MORI氏
今回、AMIY MORI実行委員とともに湘南・省エネネットワーキングの活動を取材しました。
湘南・省エネネットワーキングは、大手電機メーカーで地球温暖化防止担当部長を務めていた前島 仁氏が24年前に立ち上げました。 当時は、一般市民の地球温暖化防止や省エネに対する意識がいまほど高くない中、会社員時代から地球温暖化問題にかかわっていた前島氏は、市民レベルで省エネの意識を変えていくことの重要性を実感。そこで地元の湘南という自然豊かで明るいイメージのある地域の名前を冠して、NPO活動をスタートさせました。前島氏は当時をふり返り、「政治的な活動よりも、地元で実務的に省エネの活動に取り組みたかった。」と語っています。
地球温暖化防止の京都議定書が採択された翌1998年に、地元でも地球温暖化防止に取り組もうと鎌倉市と相談して、仲間と共に活動を開始。団体名に示す通り「省エネルギー」を原点に、地球温暖化防止を目的として、再生可能エネルギー、環境学習、脱炭素社会、まちづくり、持続可能な環境共生社会とSDGsへの取り組みなどに広げてボランティア活動に取り組んでいます
成功のポイントは?
世代を超えた多くの市民が参加!
代表の前島 仁氏は、「省エネの普及拡大にどうやって向き合うか?それには年齢は関係ありません。いまでは地元の多くのシニアや若い次世代を担う方々に集まってもらっています。」と胸を張ります。
現在、湘南・省エネネットワーキングは地域に根ざし、SDGsの目標から気候(地球温暖化防止)、エネルギー(省エネルギーと再生可能エネルギー)、教育(環境学習)、まちづくり(脱炭素社会)に活動を拡げ、持続可能な社会の未来をつくるためにパートナーシップを形成して、地域における政策提言および普及啓発の活動に努めています。
そんな活動実績が認められ、グッドライフアワードの前にも、2021年に神奈川県「かながわ地球環境賞」表彰の県知事賞を受賞、さらに環境省「地域環境保全功労者(団体)」表彰の環境大臣賞を受賞しています。
レポート!
地元中高生の環境ワークショップを取材!
今回は、神奈川県鎌倉市で地元の中学生・高校生の女子3名などが参加する環境ワークショップを取材しました。
まず、事前説明会を行ったあと、街を散策しながら地域の環境をチェックし、鎌倉市にある「大船フラワーセンター」で路面温度の計測などのフィールドワークを行います。
参加理由について、女子高校生のひとりは「地元である鎌倉の自然に興味があって、自分ができるSDGsは何か知りたかった。」、女子中学生は「授業で環境について調べる機会があって、ワークショップに参加しようと思った。」と答えてくれました。
説明会のあと、さっそく鎌倉市内を流れる柏尾川を観察します。普段見なれている川も立ち止まってよく見ると、水鳥がいて魚が泳いでいるものの大きな廃棄物などが川底に沈んでいました。環境が良いといわれる鎌倉市でも、川にはプラごみや粗大ごみが捨てられている!その事実に地元っ子である参加者の中高生は驚き、普段から川の環境に関心を持っていなかったことに気づきを得ていました。
そして、一行は鎌倉市の日比谷花壇大船フラワーセンターに到着。ここは1962年に神奈川県農業試験場の跡地に開設された植物園です。農業試験場で研究・改良されていた、玉縄桜(タマナワザクラ、ソメイヨシノを改良した早咲きの品種)やシャクヤク、ハナショウブなどを中心に国内外の観賞植物が数多く集められています。
ここでは植物の生態などを学びながら、地面の温度調査を行います。コンクリートやアスファルト、鉄板などのひなたと日陰の温度を測り、専用のシートに記入していき、身の回りの地球温暖化を意識していきます。
温度調査を終えて、彼女たちは、「環境問題というと国際的で大きなイメージだったのですが身の回りにも存在していました。これをきっかけに自分の地域の環境についてもっと意識したいと思います。」と語ってくれました。
取材に同行した実行委員のAMIY MORI氏は、「地域のシニアが若い世代に環境や地域のことを教えている姿を見て、とても素晴らしいと思いました。環境問題を遠い存在だと思っていた中高生が、川やゴミを観察することで環境って身近なことなんだという気づきがあったことがとても素晴らしいなと思います。彼女たちから『こうした地域での環境活動を受け継いでいきたい』という心強い言葉も聞けました。」と笑顔で語ってくれました。
今後の展望
プロジェクトが目指している事、今後やりたい事
湘南・省エネネットワーキング代表 前島 仁氏
湘南・省エネネットワーキングは、地域での地道な努力を積み重ねて発展し広がりつつあります。 代表の前島 仁氏は、「グッドライフアワードで高く評価していただいて感謝しています。これまでの活動を継続しつつ、新しいテーマにチャレンジしていきたいと考えています。具体的には世界が脱炭素社会に大きくカーブを切っている今、電気自動車、燃料電池、蓄電池、さらに水素社会を目指すことなどについて、親しみやすい講座などを通じて市民にわかりやすく伝えていきたい。それに近隣の地域の団体とパートナーシップを組んで、意見交換、活動の紹介などを積極的に行っていきたいと思います。」と抱負を語ってくれました。