受賞者紹介

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 学校部門

2世代教育(100年)による6次産業化を目指した次世代里山利用デザイン・プロジェクト

新渡戸文化学園

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 学校部門 新渡戸文化学園

受賞者紹介

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 学校部門

2世代教育(100年)による6次産業化を目指した次世代里山利用デザイン・プロジェクト

新渡戸文化学園

こども園から短大までの一貫教育を行う学園の教育活動として、幅広い年代の生徒とともに保護者も参加。東京都檜原村を舞台に、農業や林業に携わる地元の方や自治体とも連携して六次産業化まで展開し、エシカルな消費意識を育みながら持続可能な里山利用を推進するプロジェクトです。

*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。

どんな活動?

持続可能な里山利用を実践的に体験できるプログラムを実施

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 学校部門 新渡戸文化学園

新渡戸文化学園は1927年(昭和2年)創立の学校法人で、こども園から短大まで、2歳から20歳までの生徒や子供たちの成長を見守り、社会で活躍できる人材育成に取り組んでいます。

環境大臣賞を受賞した『2世代教育(100年)による6次産業化を目指した次世代里山利用デザイン・プロジェクト』は、東京都檜原村をフィールドとして、特産品であるジャガイモや、生徒たちのアイデアから始まったオーガニックコットンの栽培などの農業、林業における枝打ちや間伐作業などを体験する機会を提供。小学生から短大生まで、さらには小さな生徒の保護者も一緒に参加することで、参加者が体験を通じて、自然と「SDGs」に向かう行動を学び、考える貴重な教育の場とするだけでなく、大人にも気付きをもたらす活動となっています。

里山で生徒たちが体験といっても、いわゆる林間学校のような「その日だけ」の活動ではありません。2017年に本格始動してからまだ数年の取組ではありますが、すでに3つの具体的なプロジェクトが立ち上がっています。

① 村内の耕作放棄地を開墾してオーガニックコットンを栽培。収穫、糸紡ぎから加工、染色までを手がけてTシャツなどの製品に仕上げるプロジェクト。
② 檜原村の名物であるジャガイモ(ブランド名は「ヒノジャガ」)ジャガイモあんのおやきを作って販売するプロジェクト。
③ 薪や炭、堆肥利用が中心だった里山に実や枝葉をおいしく楽しむことができる樹種の植樹を進め、それらを食品加工することによる6次産業化を進めるプロジェクト。

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 学校部門 新渡戸文化学園中心に立って取組を進める山藤旅聞さん。

取組の仕掛け人であり中心的な役割を担って指導しているのは、新渡戸文化中学校・高等学校で理科(生物)の教諭である山藤旅聞(さんとうりょぶん)さんです。とはいえ、例に挙げたプロジェクトの発想は、山藤さんが教材のようにして指し示したものではありません。

参加する生徒たちが檜原村の里山での体験で感じたことや気付いた課題をもとに考え、取組に協力してくれる地元の方々や、山藤さんの人脈を通じて集まってくる人たちとの交流を通じて発案し、計画を作り上げていくのです。

あまり多くの人数が集まっても作業の分担が難しいこともあり、現地での活動に参加するのは毎回10~20人程度ですが、2017年の活動開始から2020年までに、のべ500人ほどの中高生や短大生が参加してプロジェクトを進めてきました。2019年からは小学生とその保護者への案内を始め、本格的に「2世代教育」の取組へと拡大しています。

活動のきっかけは?

SDGsを未来づくりに活用できる人材を育てるために

収穫したコットンからの種取り作業風景。

都心で暮らす生徒と保護者(2世代)と、檜原村の里山を繋ぎ、6次産業化を視野に入れながら持続可能な里山の活用を考える。この取組が目指すのは、現地での実践を通じて生徒や保護者にエシカルな物差しを構築し、消費意識の変容を促すこと。そして、SDGsをただの知識として理解するだけでなく、持続可能で豊かな未来を築くための行動を実践できる人材を育てることです。

新渡戸文化学園に赴任する以前、都立高校で教鞭をとっていた頃から、山藤さんは社会課題解決に向けた教育に取り組んでいましたが、その中で「都会の教室での授業では、気候変動などの社会課題を自分ごととして考え、行動に移すための指導には限界がある」と感じていたそうです。2015年ごろのこと、大学生になって世界旅行から戻ったかつての教え子から「社会課題のすべてがボルネオにありました」と聞き、山藤さん自身がボルネオを訪問。熱帯雨林の伐採や貧困、格差などの課題が混在していることを痛感しました。ちょうど、国連ではSDGsが採択されて「これは教育にも活かせる」と感じます。

ただし、詰め込み型の「試験のために学ぶ」といった教育では、自ら気付き行動できる人材の育成にはなかなか結びつきません。SDGsは、社会課題を解決するための「手段」であって、17のゴール(目標)をテスト勉強のように覚えても意味がなく、実際に自分で社会課題解決のための行動を起こせること、そのための発想や行動力を育てることが大切であるということです。

山藤さんは「生徒たち自身が社会課題を体感して考えるための一次情報が必要で、実際に課題を体感して行動を実践するためのフィールドが必要」であると考えました。そんな中、知人からの紹介で、檜原村の村有林を管理しながら自然の中でさまざまな体験ができる場を提供している「NPO法人 フジの森」との出会いがあり、この取組の基礎となる枠組ができあがっていきました。

オーガニックコットンの苗。

 /><small>作業の合間の沢遊びも大切な体験です。</small>
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      <p class= 成功のポイントは?

「思い」と「気付き」が織り成す取組として拡大中

自らも社会課題の解決に向けて行動しながら、有意義な教育のあり方を模索した山藤さん。現在の檜原村での取組には、山藤さんが都立高校の教諭時代から活動を共にしていた仲間の先生たちも共感し、新渡戸文化学園以外にも都立や私立の複数の学校が参画しており、学校の枠を超えて先生や生徒が参加するようになっています。

檜原村の森を舞台に、ふれあい体験や地域住民との交流ができる場を提供していたフジの森との出会いも、山藤さんが取り組んできたソーシャルな活動で育んできた「人の縁」で繫がりました。そして、相澤美沙子事務局長をはじめとするフジの森の人々との取組を進める中で、檜原村の自治体や教育委員会、地域で農業や林業に携わる人たちとの関係が広がっています。

持続可能な未来を築きたいと願うたくさんのキーパーソンの思いが繫がり、都会から参加する生徒や保護者たちの気付きを促して、新たな「思い」が育っていく。檜原村での取組は新渡戸文化学園としてオフィシャルに認められた活動ではありますが、生徒に義務づけられた「カリキュラム」ではありません。参加する生徒たちは誰かに押しつけられるのではなく、自らの「思い」で自発的に参加しています。取組に参加し、関わるたくさんの人たちの「思い」と「気付き」が重なり合って、6次産業化を視野に入れた具体的なプロジェクトに繫がっていることが、この取組の価値あるポイントといえるでしょう。

公式HPから引用。

新渡戸文化学園は、教育目標のシンボルとして「Happiness Creator = 学園で学んだことを生かして将来自分の大切な人や社会を幸せにすることを通じて、幸福な人生を描いてもらいたい」という理念を掲げ、まさに「持続可能で幸福な社会の発展に貢献する有為な人材を育成すること」を目指しています。山藤さんは、新渡戸文化学園の教諭であるとともに、「大人も子どもも、教員以外の大人も教員も、パートナーシップを組んで未来の教育を創っていく」プロジェクトである『未来教育デザインConfeito』の共同設立者として、SDGsを使った出前授業や講演などの活動を行っています。

学園の方針と山藤さんの思いがシンクロしていること。さらには、そうした学園の理念があるからこそ、学園ではアフタースクールの指導員として活躍しながら、山藤さんとともにSDGsに関わる取組のサポートをする白田侑子さんや、『未来教育デザインConfeito』共同設立者であり学園では英語教諭である山本崇雄さんなど、同じ思いを抱く「人」の力が集まることで、多彩かつ有意義な取組へと発展しつつあるのです。

山藤さん(写真奥左)と山本さん(奥中央)は、多様な個性をつなげ笑顔を生み出す教育デザインの実践に取り組む仲間でもあります。

6月に行われたオンライン授業でも大活躍の白田侑子さん。

レポート!

地域との信頼感を繋げながら着実に活動を継続

檜原村での活動拠点となっている『フジの森』。

環境大臣賞受賞後の2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって檜原村の現地に生徒を集める活動は控えめになりました。それでも、檜原村で迎え入れてくれる方々と相談の上、教師を中心にした大人たちだけで感染拡大防止に配慮しながら現地を訪問。オーガニックコットンやジャガイモ栽培などの作業を継続して、取組に協力してくださる方々との信頼関係を繋いでいます。

東京都の緊急事態宣言が解除された6月21日(日)には、山藤さんらの教師、大人を中心に人数を絞ったメンバーが檜原村を訪問。オーガニックコットンやジャガイモ畑から、作物の生育状況や取組の進展などを伝えるオンラインLive授業を実施しました。

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日曜日ではありましたが、ミーティングアプリを活用した授業には、中学生以上の生徒や学生、60人以上が参加。世界各地でオーガニックコットンの普及に尽力し、この取組における檜原村でのコットン栽培のアドバイザーでもある稲垣貢哉(みつや)さんや、ジャガイモ畑の世話をしていくれているNPOフジの森の小澤さんや、地元農家の清田さん、檜原村役場職員である坂本さんからの話などが展開されました。

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10月18日(日)には、小さな子どもから短大生まで、保護者を含めて約50名が参加する現地での活動が行われました。この日は久しぶりの活動ということもあり、リピーターの参加者のみが対象。6次産業化プロジェクトの作業ではなく、フジの森が管理する里山での「森づくり体験」というプログラムでした。林業で大切な作業である枝打ちの見学と体験をする班と、森の中を巡る観察路整備を行う班に分かれ、小さな子供たちは作業後の食事のための薪割り作業を分担します。

活動の取材にはグッドライアワード実行委員から大葉ナナコ委員も参加。参加した生徒や学生が現地で働く方々から真摯に学ぶ意義と里山の森の気持ちよさを実感するとともに、昼食には地元の野菜を使った手作り料理もいただきました。幼児から大人まで、幅広い世代が体験を共有する2世代教育の素晴らしさを体感し「こうした取組が全国に広がっていけば素晴らしいこと」という感想を語ってくださいました。

昼食に準備など、フジの森のスタッフや保護者が協力して活動をサポートします。

生徒や学生自らが自然の中での体験を通じて社会課題に気づき、解決するための行動のアイデアを考えて実践する。この取組には「決まったカタチ」はありません。活動を重ねていくほどに、さらに新しいアイデアが生まれ、活動の幅が広がっていくことでしょう。数年後、檜原村での学びを体験した生徒や学生の中から、また新たなSDGs活動のキーパーソンや、豊かな未来づくりの担い手が登場することを期待しています。

枝打ち作業の現場を見学。

枝打ちのための木登りにもチャレンジ。

取組紹介

新渡戸文化学園

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