受賞者紹介

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門

世界初! 環境にやさしい石けん系消火剤でインドネシアの森林を守る

シャボン玉石けん株式会社

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社

受賞者紹介

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門

世界初! 環境にやさしい石けん系消火剤でインドネシアの森林を守る

シャボン玉石けん株式会社

環境に優しい石けん系消火剤を開発。地球温暖化への影響が深刻なインドネシアの森林火災や泥炭火災の消火剤として普及させることに取り組んでいます。とくに、地球の泥炭層でくすぶり続ける泥炭火災には、地中にも浸透しやすい石けん系消火剤が有効で、消火後の植物の生育への影響が低い特長があります。

*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。

どんな活動?

泥炭火災の消火に石けん系消火剤を活用

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社インドネシアでは森林火災が深刻な社会問題となっています。

森林の減少は地球温暖化の原因のひとつです。赤道直下に位置して広大な熱帯林が広がるインドネシアでは、年間におよそ50万ヘクタール(=5000平方km ※東京都の面積は約2100平方km)以上の森林が消失していると言われており、乾期に多発する森林火災や泥炭火災が森林減少の大きな原因であり、深刻な社会課題となっています。火災による被害は森林減少だけではなく、ことにヘイズ(煙害)による健康被害や飛行機の離着陸への影響は甚大で、マレーシアやシンガポールといった周辺の諸国にも影響を及ぼしています。

植物が十分に分解されず堆積した「泥炭層」が燃える泥炭火災は、地中で長時間くすぶり続け、地面から煙が湧き上がり続けます。表面に水をかけるだけではなかなか消火することが難しく、長期化、広域化しやすいやっかいな火災でもあります。

シャボン玉石けんでは、産学官連携で開発した石けん系消火剤をインドネシアの森林火災や泥炭火災消火に活用することに着目。独立行政法人国際協力機構(JICA)「中小企業海外展開支援事業」などを通じて、インドネシアの消火活動に石けん系消火剤を普及される取組を行っています。

石けん系消火剤には普通の水に比べて地中深くまで浸透しやすい特長があり、水のみよりも効率的に消火できます。さらに、もともと「無添加石けん」にこだわった商品開発を徹底してきたシャボン玉石けんならではの技術により開発された石けん系消火剤は、化学合成の界面活性剤を含んだ消火剤と比べて環境への残留性が低いという特長を持ちます。そのため、泥炭火災や森林火災で植物が消失した後に、再び植物が生育することを阻害せず、水と同等であることが確認されました。これらのことから、インドネシア政府や消火活動に携わる行政機関、関係者からも注目されています。

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社現地での泥炭火災消火実験の様子。

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社

活動のきっかけは?

北九州市消防局からの要請で商品開発

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社北九州市の本社工場。

シャボン玉石けん株式会社は、福岡県北九州市に本社があり、創業は1910年(明治43年)という伝統ある石けんメーカーです。雑貨商として始まり、1960年代には、合成洗剤を製造販売していましたが、先代の森田光德社長が国鉄(当時)の依頼で機関車を洗浄するための無添加石けんを開発したことをきっかけに、合成洗剤による肌荒れや湿疹といった弊害に着目。「体に悪いとわかった商品を売るわけにはいかない」という決心のもと、合成界面活性剤はもとより、香料、着色料、保存料などを一切使用しない無添加石けんにこだわった製品作りに転換し、「健康な体ときれいな水を守る」という企業理念のもと、今もその方針がさらに発展しながら受け継がれています。

そのシャボン玉石けんが、石けん系消火剤の開発に着手したのは、2001年、北九州市消防局からの依頼がきっかけでした。1995年に起きた阪神淡路大震災で、ライフラインの破断や建物の倒壊で消火用水を確保できず、消火活動が難航したことが課題となっていました。少ない水で消火できる海外製の消火剤はすでに発売されていましたが、消火後に合成界面活性剤が残留することによる環境負荷への懸念がありました。当時から北九州市では「環境首都」を目指しており、地元の無添加石けんメーカーであるシャボン玉石けんに、環境に優しい消火剤の開発を依頼したのです。

とはいえ、発泡性や安定性など、効果的に火を消すために求められる性能を満たした石けん系消火剤の開発は簡単なことではありませんでした。数年間はさまざまなサンプルを試作して試行錯誤を繰り返します。石けん系紹介剤の研究開発は難航しましたが、シャボン玉石けんは無添加石けんメーカーとしての誇りを貫き開発を続け、また北九州市の行政当局も本気で開発を支援。協議を重ねつつ、北九州市立大学国際環境工学部や、防災やハイテク技術に強みをもつ企業などの協力を経て、2007年、石けん系消火剤『ミラクルフォーム』の商品化に成功したのです。

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社石けん系消火剤『ミラクルフォーム』

成功のポイントは?

企業理念「健康な体ときれいな水を守る」を軸に連携を実践

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社化粧石けんやシャンプー、洗顔、洗濯用、台所用など多様な製品ラインナップ。

シャボン玉石けんの社員数は約150名で、大きな企業というわけではありません。しかしながら「健康な体ときれいな水を守る」という企業理念を掲げ、「人と環境に優しい無添加石けんの普及によって、社会に貢献する」、「たゆまぬ努力と研究で、よりよい製品開発に努める」といった方針は、徹底して貫かれています。石けん系消火剤を完成させるという理念に基づく熱意が、およそ7年がかりの研究開発を成就させる原動力となったといえるでしょう。

さらに、早くから産官学の連携を実践したことが、石けん系消火剤の商品化に結びつき、インドネシアをはじめとする海外への事業展開にも繫がりました。今、国連が採択した『SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)』が注目されています。17のゴール(大きな目標)と169のターゲット(具体的な目標)が掲げられているのは、ご存じの方も多いでしょう。

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社公式HPから引用。

シャボン玉石けんによる石けん系消火剤の開発はSDGsなどが策定されるよりもずっと以前からの取組です。また、そもそもの「健康な体ときれいな水を守る」という企業理念は、17のゴールのうちの「3/すべての人に健康と福祉を」「14/海の豊かさを守ろう」「15/陸の豊かさを守ろう」といった目標に合致しています。

さらに、環境にやさしい石けん系消火剤でインドネシアの森林火災、泥炭火災の被害軽減に貢献しようとする「世界初!環境にやさしい石けん系消火剤でインドネシアの森林を守る」の取組は、「9/産業と技術革新の基盤をつくろう」「17/パートナーシップで目標を達成しよう」といったターゲットを実践してきたことになります。

石けん系消火剤の開発や製造販売は、シャボン玉石けんにとっては「本業」のビジネスです。消火剤そのものの市場はまだそれほど大きくはなく、目先の利益だけにとらわれていたとしたら、開発は完遂することができなかったかも知れません。でも、1999年の開発当初から、現在のSDGsが掲げる意義や社会貢献を実現する意欲があったからこそ、現在の取組に繫がってきたということです。

もともと、固形石けん・粉石けんが主力商品だったシャボン玉石けんですが、消火剤の研究開発を通して、液体石けんを安定させる技術などが進展、液体のボディソープやシャンプー、洗濯用石けんなどの開発にも広がっていったそうです。また、産学官連携の消火剤共同研究と製品化で得られた技術や経験は、人材育成や組織体制強化にも繫がっています。

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社シャボン玉石けんが取り組むSDGsの概念。

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レポート!

泡がスムーズに消える様子などを実験で確認

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社

2020年、世界全体を巻き込む新型コロナウイルスの影響で、インドネシアでの普及活動などはやや停滞しています。今回の取材では、北九州市のシャボン玉石けん本社を訪ね、無添加石けんの製造工程などを見学。さらに、無添加の石けん系消火剤と、合成界面活性剤を使用した石けん系消火剤を消火器で散布する実験などを見せていただくことができました。

石けんづくりは、牛脂、パーム油、オリーブオイルなどの天然油脂にアルカリ成分(苛性ソーダ)を加え、大きな釜で蒸気加熱する「ケン化」と呼ばれる工程から始まります。シャボン玉石けんの工場に据えられた釜の大きさは50トン。かき混ぜたり塩を加えたりする過程を経て、約1週間加熱し熟成させるそうです。仕上がり具合は職人さんが自分の舌で味見して確かめます。大きな釜が並び、職人さんが厳しい目を光らせながら仕事をしている様子は、伝統的な酒蔵の風景を見るようでした。

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社父親である先代社長から受け継いだ理念を発展させる森田隼人社長。

森田隼人社長と、取締役研究開発本部長の川原貴佳さんに開発時のエピソードなどを伺ったあと、川原さんと研究開発部のスタッフの方に、いくつかの実験を見せていただきました。

まず、石けん系消火剤と、ただの水の浸透性の違いです。水だけの場合、表面張力が強いので、木や土の表面で球状になってしまい、あまり浸透していきません。しかし、石けん系消火剤を混ぜた水では、界面活性剤の作用で水の表面張力が小さくなり、スムーズに浸透する、つまり消火性能が水よりも高くなるのです。

さらに、工場脇の敷地内で、合成の消火剤と石けん系消火剤を実際に散布して、石けん系消火剤は泡が消えていく時間が短い様子を見学しました。散布して3分ほどで、石けん系消火剤の泡はほとんど消えたのに対して、合成成分の消火剤の泡はほとんどそのまま残っていました。その様子からは、石けん系消火剤の成分は自然に還り分解されやすいのですが、合成界面活性剤の成分は環境への悪影響が大きいことも実感できる思いでした。

家業を法人化して会社を創業し、無添加への決心を実行に移した先代の光德さんから、現在の森田隼人社長が、当時まだ30歳という若さで事業を継承したのは2007年のことでした。社会全体で環境への意識が高まるなか、「健康な体ときれいな水を守る」という無添加石けんへのこだわりはますますシャボン玉石けんにとって大切な理念になっています。「事業を発展、継続させていくには、人材が育つ環境をつくることが大事」と森田社長。産官学の多様な連携で社会貢献を目指し、海外へも活躍のステージを広げるこの取組は、森田社長のみならず、シャボン玉石けんの社員のみなさんにとって、とても有意義なチャレンジとなっているのです。

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社消火剤の噴射から2分後、石けん系消火剤(写真右)の泡がスムーズに消えていく様子が確認できました。

第7回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門 シャボン玉石けん株式会社熟練の職人が厳しい目を光らせるケン化釜。

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