内海産業株式会社インタビュー
“買い物ゴコロに、火をつける。”
内海産業が挑むサステナブルな未来
いま、企業に求められているのは「環境への配慮もビジネスの力に変えること」。
内海産業が打ち出しているカーボンオフセット付きノベルティが、企業の脱炭素経営の身近なきっかけになるかもしれません。


左から 長野 伸一様(営業推進部 購買促進課 次長)、堀江 剣太郎様(執行役員 企画部長)、
長野 慎様(代表取締役社長)、藤井 由徳様(企画部 検査流通課 課長)
内海産業株式会社は、年間1万社以上の顧客の購買促進支援を行い、累計100万個の販売数を超えるヒット商品を数々生み出してきた販促領域において豊富な実績を有する企業です。
そんな同社が近年力を入れているのが、顧客企業が環境配慮型製品の活用を通じて、環境負荷を下げることのできる商品づくり。
商品開発のテーマにはSDGsへの貢献を据え、海洋プラスチックの削減につながるエコバッグやカーボンオフセットを活用した商品など、生活者の行動変容をもたらし、顧客企業のブランド力を高めるアイテムを次々と開発しています。
今回は、販促の世界から“脱炭素経営”に挑む同社の取組と、その背景にある思いを伺いました。
インタビュー実施日:2025年8月21日
小さなエコが大きな価値に―内海産業の商品づくりの舞台裏

長野 慎様(代表取締役社長)
まずは脱炭素経営に取組まれたきっかけを教えてください。
長野 慎様きっかけは、企業間の交流を通じ、他社が積極的にサステナビリティに取組んでいる姿に触れ、私たち自身も関心を持つようになったことです。
内海産業には良いと思ったことは積極的に取入れる文化があり、商品開発を含め、学習と実践を通じて成長してきた背景があります。2017年には改めてミッションやビジョンを定め、理念を社内に浸透させることでどのように社会に貢献できるかを模索していた時期にSDGsと出会いました。自社の存在意義や価値を社会の中で定義していく上で親和性が高いと考え、SDGsに関する取組を進めることになりました。
ありがとうございます。取組の内容について、まずはどのような活動や施策を実施されたのか教えてください。
長野 慎様2019年、内海産業は国連グローバルコンパクトに署名すると同時に、サステナビリティに対するコミットメントとして『ハッピーショッピング(8.4)宣言』を公表しました。ここで掲げたパーパスは、『買い物を楽しみ、モノを大切にする、持続可能な社会づくりに貢献する。』というものです。
この宣言では、社会に対して 『人びとの買い物ゴコロに火をつけ、意欲ある購買を創出し、“買い物を楽しみ、愛着を持ってモノを大切にする社会” を実現する。』という姿勢を示しました。
ノベルティ事業を通じて、単なる販促だけでなくサステナビリティ課題への意識づけにも取組まれているのですね。
長野 慎様内海産業はノベルティグッズの販売を通じて、顧客の予算で生活者に商品を届けられる立場にあります。だからこそ、購買欲に火をつけるだけでなく、商品を通じて環境課題への意識を喚起するきっかけを提供できると考えました。2019年以降、この理念に基づいた商品の供給量を増やすなど、様々な取組を継続しています。

内海産業が展開するCFP算定結果にカーボンオフセットを付加し実質ゼロカーボン化したノベルティアイテム
御社は多様な製品を展開されていますが、商品開発の中で環境や脱炭素化に関して、どのような考え方や取組を実践されてきたのでしょうか。
長野 慎様商品開発においては重点開発テーマを設定し、その一つとして環境省が推進する「プラスチック・スマート」に賛同。海洋プラスチック削減につながる商品企画に力を入れてきました。
その一例がエコバッグです。レジ袋削減を通じてプラスチック使用量の低減に貢献しています。さらに食品ロス削減につながる商品なども展開し、生活者のライフスタイル変革を後押ししています。
CO₂排出削減や地球温暖化対策に貢献する側面を持ちながら、同時に内海産業の製品を導入する企業が自社のサステナビリティへの姿勢を発信できるアイテムの企画に取組んでおります。単なるノベルティや販促ツールにとどまらず、顧客企業の環境配慮の姿勢を伝達できる商品としての普及・浸透を目指しています。
なるほど、一方で、こうした取組の背景には、顧客からの要請もあったのでしょうか。
長野 慎様内海産業は “削減量への貢献”を重視し、本社ビルの再エネ100%化やモーダルシフト(鉄道輸送活用)など様々な施策を検討・実践してきました。
その中で、社会的要請や取引先からの期待に応えるため、CFP算定の必要性を強く認識しました。地方公共団体や関連業種のノベルティでCFPが要件化される可能性や、先進的な環境方針を持つ企業に対応する商品が求められる可能性もあります。将来的に全商品への算定が必要となるかもしれません。そうした課題意識からCFP算定に実際に取組むことを決めました。
社内外に広がる脱炭素経営の波及力
多様な製品を展開される御社では、今お話しいただいたCFP算定など、具体的な取組を進めてこられていますが、これらの取組によってどのような効果がありましたか。
長野 慎様CFP算定済みの商品を市場に出すことで、どういった業態の顧客に需要があるのかを具体的に把握できました。
また、社員がCFP算定やカーボンオフセットの仕組みを理解しないと実務や顧客対応ができません。そのため社員が自然と学ぶ機会となり、結果的に社内の啓蒙につながったことも成果だと感じています。
さらに、この取組は同業他社との差別化にも直結しています。展示会などに出展した際には「環境配慮商品」という訴求ポイントを打ち出しやすく、来場者からの注目を集めやすいという効果も実感しています。
その他には、どのようなメリットがありましたか。
長野 慎様採用活動の面でもプラスの影響が見られました。サステナビリティに積極的な企業だと認識されることで関心を持たれ、ディスカッションや面談の場でも話題になります。求職者がCFPを詳しく知らなくても、企業姿勢が伝わることで志望度の向上につながる可能性があると感じています。

藤井 由徳様(企画部 検査流通課 課長)
近年は採用の他にも、顧客や取引先企業などからもサステナビリティへの理解度が企業を評価する基準の1つになってきていると思います。事業活動の中で、サステナビリティに関する取組がどのように活かされているかについてもお聞かせください。
藤井様営業が商品を提案する際に、カーボンオフセットやゼロカーボンに関する知識を活用して説明することで、顧客からの信頼獲得や新たな商談機会の創出につながっています。こうした営業活動における成功体験が社員のモチベーションの向上にも寄与しており、内海産業にとって脱炭素の取組が営業面でも大きな効果を発揮していると考えております。
顧客の評価が原動力に―現場で実感するサステナビリティの手応え

長野 伸一様(営業推進部 購買促進課 次長)
こうした取組について、顧客の方から直接フィードバックを受けることもあるのでしょうか。
長野 伸一様顧客の多くは大手企業ですが、担当者が必ずしもサステナビリティに関する知識を十分に持っているわけではありません。その中で内海産業の営業が説明を行うと顧客の力添えとなり、褒めていただく機会が多くあります。こうした評価は大きな励みになっています。
商品を通じたカーボンオフセットの取組については、どのような事例がありますでしょうか。
長野 慎様内海産業は以前よりカーボンオフセットを商品に結びつける取組を進めてきました。例えばPC購入時に付属する特注キーボードカバーでは、裏面にCO₂排出権付き商品であることを記載し、企業姿勢を伝える提案を行い、他社との差別化を実現しました。CO₂排出権付き商品の開発・販売を通じ、脱炭素化を打ち出したい顧客から好評を得ています。
最初の一歩はヒット商品から。CFP算定に立ちはだかった壁と突破口

堀江 剣太郎様(執行役員 企画部長)
将来的に想定されるさまざまな可能性を踏まえ、現段階から対応策を講じていらっしゃるのですね。取組を進められる中で、実際に直面された課題についてお聞かせいただけますでしょうか。
堀江様内海産業では大きく「取組前」と「取組中」で課題がありました。
取組前は、取扱商品や協業会社が非常に多いことが強みである一方、どこから手を付ければ良いか分からない、という課題がありました。最終的にはまずヒット商品の1つに絞って算定を始めることで、ようやく一歩を踏み出すことができ、その経験が次の挑戦につながったと考えています。
取組中は、ヒット商品を対象としたため1次サプライヤーからは協力を得やすかったものの、2次・3次サプライヤーから十分な理解を得ることが難しく、苦労しました。そこで1次サプライヤーに説得をお願いし、伴走いただいたコンサルから助言を受け、回答しやすいフォーマットを作成して提供するなど工夫を重ね、完遂することができました。
B to Bから広がる未来―内海産業の次なるビジョン
今後の取組について、方針や展開のビジョンをお聞かせいただけますでしょうか。
長野 慎様まずは直接の販売先である企業において、サステナビリティへの理解を深めていただくことが重要だと考えています。そのため、今後もB to B領域における活用事例をさらに拡大し、取組の幅を広げていくことを目指しています。
現時点ではB to Bの訴求がメインだと理解していますが、今後B to Cへの普及についてはどのようにお考えでしょうか。
長野 慎様B to Cに関しては、CFPそのものを価値として受け取っていただくよりも、商品自体の完成度を高めることが大切だと捉えています。既存製品の価値を向上させることにより、結果として生活者の手に広く行き渡り、認知の拡大や環境課題への理解につながる形が望ましいと考えています。
メッセージ

実質ゼロカーボンノベルティアイテムの
カーボンフットプリント算定対応チーム
最後に、脱炭素経営に挑戦しようとされている企業の皆様に向けて、メッセージをお願いします。
長野 慎様SDGsの2030アジェンダの中の『我々は、地球を救う機会を持つ最後の世代にもなるかも知れない。』という言葉に強く共感しています。内海産業は中小企業であり、与えられるインパクトは小さいかもしれません。しかし、もし私たちが取組まず、誰も行動しなければ、本当に手遅れになってしまう。
一人ひとりが参加することで地球を救える可能性があります。我々は自らの責任として、できる範囲で将来に対する責任を果たしていきたい。その意識に賛同し、ともに取組む仲間が増えることを強く願っています。
最後に
内海産業は、ノベルティという身近な商品を通じて脱炭素経営に挑み、ゼロカーボン商品の開発やCFP算定など、実践を積み重ねてきました。その歩みは顧客や社員の意識を変え、社会との信頼関係を強めています。
B to Bを起点に、やがて生活者へと広がっていく取組は、まさに「小さな一歩から大きな未来をつくる」挑戦といえるでしょう。身近な領域から始めることで、サステナブルな価値を着実に社会へ広げることができます。課題に真摯に向き合いながら、サステナブルな価値を社会へ波及させていく内海産業の姿勢を、ぜひ次の一歩に踏み出す参考としていただければ幸いです。