受賞取組紹介

INITIATIVES

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞 地域コミュニティ部門

対馬の海の豊かさを取り戻したい!
~みんなで取り組む食べる磯焼け対策~

有限会社丸徳水産 / 一般社団法人MIT

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞登壇者:犬束徳弘(丸徳水産)、犬束ゆかり(丸徳水産)、吉野元(MIT)

※この記事は、2023年12月2日に開催された第11回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションおよび交流会インタビューに基づいて作成されています。

対馬で磯焼けが深刻化する

【話者】吉野元氏(MIT)

長崎県の対馬は、水産資源が非常に豊かで、日本全体の水産業を支えています。

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ご存知の通り、韓国と九州の間には、対馬海流が通っています。豊かなプランクトンがたくさん生まれるような場所ですので、様々な魚が対馬で成長して日本海に流れていきます。例えば、「大間のマグロ」や「氷見のブリ」は、対馬の豊かな海で育った魚ということになります。

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その対馬では、今、全国的にも問題になっている「磯焼け」が深刻になっています。これは私が7年前に撮った写真です。漁師さんに言わせると、これでも海藻が少なくなっているとのことでした。

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しかし、最近は、もう、このような状態です。透明度が高くて綺麗な海と思われるかもしれませんが、全く海藻がなくて、海の砂漠化という状態が起こっています。

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その主な原因は、気候変動であると言われています。水温の上昇です。冬の水温が15度以上になると、南方系の魚の「イスズミ」「アイゴ」が活性化して藻場を食い散らかすことの影響が大きいと言われています。実際、対馬では磯物が深刻に減っていて、漁師さんが現金収入を得るのが厳しくなっているという状況です。

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食害魚を資源化する仕組みをつくる

これが、獲った「アイゴ」「イスズミ」です。本当に大量に獲れます。

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実際に内臓物を見ますと、海藻がたくさん入っていることが分かります。

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これを対馬市さんと連携しながら、どのように獲って資源として活用するかという仕組みを考えて、地元の漁師さん、加工業者さん、運送業者さんと共に事業を進めていくことになりました。

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実際に、8つの漁協さん、16の低地網事業者さんに協力をいただいて、定置網に入った魚を都内の運送業者さんに運びます。それを丸徳水産さんに受け入れていただいて、捌いて美味しく食べるという形になっています。

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7月には、大量のアイゴやイスズミが定置網に入ることが分かっています。

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そこで、獲った魚を大切に冷蔵保存しながら都内に運んで、丸徳水産で捌いていただきます。

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実際に7月の水揚げが突出して多いのですが、去年、今年と、20トン以上の魚が水揚げされたということになります。

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イスズミ/アイゴの商品開発を成し遂げる

【話者】犬束ゆかり氏(丸徳水産)

このイスズミとかアイゴは、とにかく海藻を食べるものですから、もう臭くて臭くて、猫もまたいで通る。そこ辺に置いておいても、トビもカラスも突つきもしないと言われるようなもので、対馬の人はほとんど食べません。

このイスズミをなんとかして美味しく食べようと考えました。「どうしたらこの臭いがとれるんだろう」と、私の素敵な愛する主人のことも忘れて、2019年から本格的に1年間ずっと臭いのことだけを考え続けました。「どうしたら、いつも味が変わらないようにできるか」とか、いろんなことを考えまして、ついに、美味しい食べ方、臭いのとり方を発見しました。

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そして、2019年、フッシュワングランプリのファーストフィッシュ部門で、見事グランプリをいただきました。

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ここに至るまで、対馬の漁師さん方からは、対馬弁で「おなごになんができるげなか」「イスズミでなんができるげなか」「できあせん、できあせん」と言われて、「いや、でも、うん、なんとかするんだ」っていう熱い思いで走ってきました。

それで、イスズミに「そう介」という名前をつけて、「そう介のメンチカツ」のように、おつまみシリーズとして常温で持ち運びができる商品までできました。

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私たちがフィッシュ1グランプリで受賞してから、対馬中の風向きが変わりました。漁師さん方も理解してくれるようになり、議員さんも「じゃあ、なんとか補助金つけてやらなくちゃいけない」と言ってくれたり、オール対馬で応援していただきました。

その中でも熱かったのが学校給食の栄養師の先生方です。「犬束さん、なんとかみんなで食べようよ。消費しようよ」っていうところで、2019年から学校給食で使っていただいています。年に数回、一緒になっていろんな料理を作ったり、先生方が海の教育を子供たちにしてくださったりしています。

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みんなでHAPPYな地域をつくる

島外からも、いろんな応援団がやってくるんです。 今まで「猫もまたいで通ったり、蹴散らされてた魚」が、グッチの直営の銀座のオステリアのレストランで、なんと2万5000円のコースの前菜に出てくるということになりました。

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この方を初め、いろんな方が「バーガーのパテにしてみようよ」とか、そんな取り組みが進みまして、全国各地の方が協力してくださるようになりました。

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第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

私たちは、イスズミやアイゴを根絶やしにしようとは思っていません。イスズミやアイゴが食べる量に、海藻のバランスが調和できればいいと思っています。その食害魚を有効に活用することで、価値がなかった魚に価値が付いて、漁師さんもハッピーになって、地域全体がハッピーになれればいいなと思っています。

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そして、最後に、皆さんにご紹介したいことがあります。対馬は、海ゴミの漂着が全国1位です。いろいろな海の問題を抱えています。その問題を、漁師さんが自分の船でアテンドして「海の環境についてお客様に話す」という体験ツアーを作りました。

このツアーでは、魚釣りを体験したり、養殖場を見たりしながら、磯焼けの状況や漂着ゴミの現状を全て見てもらいます。漁師さんがアテンドして話をするので、漁師さん自身も環境問題に関心を持って意識が変わってきました。

全国いろいろなところからツアーに来て下さっています。私たちが海の環境を守るためにできることを一緒に考えていただきたいと思います。

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【話者】犬束徳弘氏(丸徳水産)

今、全国的に、漁村がどんどん過疎化しています。このままでは、魚がいなくなる前に、魚を取る漁師がいなくなってしまいます。だから、対馬で「儲ける漁業」「語る漁業」の仕組みをつくりたいと思っています。まずは、漁協の空き家を有効活用して宿泊施設を作って、地域のコミュニティーを巻き込みながら、交流人口を増やしていきたいです。

今後、海の現状を学べる体験ツアーを広げながら、語る漁業をつくりたいと思っています。漁村に伝わる風習、漁法、海への思いを語る漁業をつくりたい。漁業には、一般的な「獲る漁業」のほかにも、養殖のような「育てる漁業」もありますが、私たちは体験ツアーを通じた「見せる漁業」、そして「語る漁業」を大きくしていきたいと思っています。

そうすれば、交流人口が増えて、経済の循環が回ります。漁民が仕事に誇りを持って、モチベーション上がります。私たちは、今、その仕組みをつくっています。一歩ずつ、進めていきます。

是非、皆さん、対馬に来て、美味しい食害魚の料理、そして体験ツアーにご参加ください。ありがとうございました。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞環境大臣政務官 朝日健太郎氏から表彰された犬束徳弘氏、犬束ゆかり氏、吉野元氏

【受賞取組の現場訪問】

グッドライフアワードでは、2024年7月16日(火)及び17日(水)に丸徳水産を訪問し、磯焼け対策に取り組む現場や、その主な原因である未利用魚・食害魚(イスズミやアイゴ等)を利活用した取組について見学するとともに、(一社)MITからも取組についても話を伺いました。

近頃、記録的集中豪雨や熱中症のニュースをよく目にしますが、海洋にも地球温暖化による気候変動の影響は及んでおり、約20年前までは豊富な海藻に恵まれ、様々な魚介類が生息していた対馬の海においてもその影響が顕在化しています。

我々が最初に訪問したのは、丸徳水産直営の“お食事処 肴や えん”。こちらでは、泥臭さが強く、獲れても廃棄されてしまうことが一般的で、磯焼けの主な原因であるイスズミやアイゴを丁寧に処理し、美味しく調理して提供していました。未利用魚とは想像が付かないほど食べやすく、長年の試行錯誤の賜を感じることができました。学校給食での提供ルートも確立させており、食べることで皆が貢献できる磯焼け対策として、子供たちはじめ市民に親しまれているということでした。イスズミを「そう介」という愛称で呼ぶといった工夫も取組が広がる秘訣でしょう。 海水温が上昇したことで急増した南方系の食害魚を未利用魚から転換させ、地域資源として活用し持続可能な形で藻場の再生を目指したいとお話をされていたことが特に印象に残っています。

また“海を遊びながら学んで記憶する”をコンセプトにした海遊記ツアーにも参加しました。このツアーでは、対馬近海で起こっている様々な問題(生態系の変化、水揚げ量の減少、漁師をはじめ漁業人口の減少、地産地消の衰退など)を楽しく分かりやすく知ってもらうため、実際に船に乗り、子供や大人が海や自然環境の大切さを学ぶ機会を提供しています。ツアーの中では藻場再生の現場を水中メガネで観察したり、食害魚を餌にして養殖場の魚に餌やり体験をしたりなど、参加者が体験を通して環境問題に触れ、またツアーとして記憶に残るような工夫を感じることができました。また特徴的な点として、このツアーでは地元漁師が講師として船を出し説明をする仕組みをとっており、地域と漁村の連携を図るだけでなく、漁獲量が減少している対馬の海での新しい稼ぎ方の1つとして例示し、環境・社会・経済の好循環を生み出す1つのきっかけとなっているところです。

こうした取り組みを皮切りに他地域との連携、新たな地域課題の解決やビジネスモデルの創出といったまさに地域循環共生圏としての持続可能な好循環が生まれていくことを切に願っています。

環境省 地域政策課

第11回 グッドライフアワード

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