受賞取組紹介

INITIATIVES

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞 地域コミュニティ部門

資源・人・地域の循環を支えるのは高齢者!
環・農・福 連携による「お節介プロジェクト」

十字屋グループ・NPO法人真庭あぐりガーデンプロジェクト

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞登壇者:牧一穂氏(十字屋グループ 代表)

※この記事は、2023年12月2日に開催された第11回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションおよび交流会インタビューに基づいて作成されています。

人生100年時代、高齢者が活躍できる時代へ

私たちは、岡山県真庭市で活動しています。今、社会では「農福連携」という言葉がよく聞かれますが、私たちは「環・農・福 連携」で取り組んでいます。

地域の高齢化率は、80歳以上の高齢者だけでも38%、65歳以上の高齢者で言うと40数%で、完全に限界集落です。人口は5万人ぐらいですが、このまま子どもたちの流出が続いていくと、地域にはお年寄りばかりになってしまいます。

そのような時代背景の中で、昨今では、日本を作り上げてきた高齢者の皆様方が地域課題のように言われてしまっています。しかし、本当にそうなのでしょうか。

人生100年時代、私たちより少し若い世代は、平均寿命が107歳までのびるそうです。ですから、私たちが地域で企業を運営するにあたって、どういう目的で事業活動を進めていかなければならないかということを考えさせられます。

お節介を焼く地域貢献の原点は創業の歴史にある

私たち十字屋グループは、大正5年に創業しまして、107年を迎えます。私は4代目です。東京から田舎に帰りまして、夜7時ぐらいになるとお店が全部閉まってしまう状況を目の当たりにして、最初の頃は『なんで自分はこんなところに帰ったんだろうか』と思っていました。

しかし、地域に関わってみると、今まで住んでいたところと全く違うからこそ見えるものがありました。非常に魅力あるものがたくさんありました。

私たちの会社は、共に生かされている「共生」というテーマで地域貢献を行っていて、柔らかく言うと「お節介」です。「地域でお節介を焼くんだ」ということをテーマに事業を行っています。

岡山県は、地域に想いのある方たちが多いということが特徴的です。当時、同志社大学を作った新島襄が岡山に来られて、多くの方たちに自分の哲学を示されたわけです。その中で、倉敷の大原孫三郎さんのような先達が、強い想いを持って地域貢献をなされました。

当時、岡山は福祉にも力を入れており、地域の石井十次という人が日本で初めて孤児院を作りました。大原孫三郎さんがパトロンとして支援をして、2,000人の戦争孤児を助けたという歴史があります。

私の曾祖父さんも新島襄に感銘を受けて、金森通倫という新島の1番弟子に師事して勉強し、神道の神主を辞めて地域貢献をするようになっていきました。初めは、竹炭商と米の精米業から事業を始めました。

その頃、地域で結核が増えていました。岡山は、当時、アメリカからの宣教師が医療を伝えて下さったので、医療先進地域でもありました。私の先代も、地域貢献への想いから医療福祉に関わるようになり、結核の二次感染を抑えるために廃液をどう処理するかという活動をするようになったわけです。20年赤字だったそうですが、地域の医療福祉に向き合ってきた歴史があります。

共生の役割として地域の課題解決に目を向ける

私も岡山に帰って、自分は何ができるだろうかと思っていた時に、関わって下さった大学の先生が講演でお話をされました。 『山の上に木がありますけど、なぜこの木は枯れずに生き残るのでしょうか。誰かが肥料を撒いてくれるわけでもありません。それなのに、どこからエネルギーを得ているのか。』 そこで、先生は続けました。 『鳥が海の魚を食べて、そして山に帰ります。山に帰ると、木が枝を張って、そして巣が作れるようになっています。そこで、糞をして、窒素、リン酸、カリが落とされて、初めて樹木は生きることができるんだ。』と。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

その話を聞いて、『「共生」という企業理念のもと、共に生かされているのであれば、自分たちも自分たちの役割を果たさなければならない。107年の歴史で、4代目の私が事業を潰してしまってはならない。』と思いました。そこで、何をしようかと考えた時、地域に目を向けると、実に様々な課題がありました。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

私たちの真庭市は、非常に広いです。岡山県の県北にあって、ここには、このような問題が山積しています。どこの地域も一緒だと思います。この問題をどう解決するのか。まず財政支出を抑えなければならない。広域ですので、行政サービスをするために、多大な費用がかかってしまっています。これを何とかしなければならないと考えました。

高齢者が主役となって循環型社会をつくる

まず着目したのが、地域から出る廃棄物をどう処理するかという問題です。今まで燃やしていた廃棄物を集めて有効活用しようと考え、バイオマスに着手しました。

多くの都市で、バイオマスで生まれた液肥が配れないという問題があります。しかし、私たちは、長年、液肥の拡散について取り組んできたことから、今現在、真庭ではこの液肥が不足してきているほど活用されている状況です。

私たちは地域で循環型社会を作っていくために、これまで化石燃料で燃やしていた廃棄物を有効活用し、バイオマスで生成された液肥で野菜を育て、そこに地域のおばあちゃんたちが100人集まってカット野菜を作っています。最高齢は95歳。そのカット野菜を学校給食や地域のレストランなど、いろいろなところで使っていただいています。

地域のおばあちゃんたちも、過疎地域での生活や年金問題など、いろいろ大変なことがある中で、そういう方たちが、カット野菜のお仕事を通じて今までの経験を活かして、ちょっとした収入を得ながら、地域でみんなが集まって、やりがいを持って活動する。地域の高齢者に手仕事や役割を創出し、収入だけではなく「はりあい」や「活躍の場」の創出となっています。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

「今日行く(きょういく)」と「今日用(きょうよう)」と言われますけど、“今日も行くところがある”と“今日も用事がある”。それで、皆さんが元気になる。そこで、健康寿命を伸ばすために手足を動かすとどういうことができるのかということに着目して、岡山大学との連携で「サルコペニア(加齢による骨格筋量の低下)」に関する特定臨床研究をしています。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

このように、たくさんの方たちが、お節介焼きで地域にお越しになります。そこで、今度は観光局と組んで、温泉地域を巻き込みながら多くの方たちが見ていただけるような取り組みに発展させて、子どもたちも元気に活躍できる場をつくりたい。今、私たちは、地域のお年寄りと若い人たちが多世代共生できる仕組みづくりに取り組んでいます。

是非、岡山県真庭市にお越しいただいて、この取り組みを一緒に盛り上げていただきたいと思います。皆様のお節介をお待ちしております。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞環境大臣政務官 朝日健太郎氏(左)から表彰された十字屋グループ 代表の牧一穂氏(右)

【受賞取組の現場訪問】

グッドライフアワードでは、2024年3月19日(火)に十字屋グループ・NPO法人真庭あぐりガーデンを訪問し、施設の見学やそこで作業している地域の方々と交流いたしました。

十字屋グループの牧代表は環境衛生業という中で、地域に出てお仕事をしてきたことから高齢化が進む真庭の実態を肌で感じ、危機意識を感じたそうです。地域に根付いてきた企業として、地域に恩返ししたいとのことで、「お節介」をキーワードに地域に貢献する事業を行ってきました。ときに「利益」よりも「地域貢献」のファクターが大きく従業員の方が苦労することも・・・。

その中で、バイオガス事業からできた液肥を使って、栽培した地元野菜を食べられる施設「真庭あぐりガーデン」は多くのお客様で賑わっていました。採れた地元野菜は、地域のおばあちゃん達がカット・調理されていらっしゃいます。お野菜の地産地消だけでなく、岡山や近畿圏へアンテナショップを整備し、「地産外消」にも取り組み、真庭へ利益を還元しています。

今回、訪問させていただいた際には、施設で作業をされている地域のおばあちゃん達と御挨拶させていただきました。また、育児中のママさんも加わり、その場所が多世代が交流する場となっていました。

様々な地域課題を資源として捉え、組み合わせることで事業を行っており、地元自治体である真庭市からも信頼されていました。真庭市と共に地域循環共生圏に取り組んでいるのがわかります。

何よりも牧代表の人柄と地域を巻き込む推進力が原動力であると感じました。

環境省 地域政策課

第11回 グッドライフアワード

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