受賞取組紹介

INITIATIVES

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門

空き家を活用して、挑戦を応援する「さかさま不動産」

株式会社On-Co

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞登壇者:水谷岳史氏(株式会社On-Co 代表取締役)

※この記事は、2023年12月2日に開催された第11回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションおよび交流会インタビューに基づいて作成されています。

不動産をひっくり返す

株式会社On-Co代表取締役の水谷岳史と申します。僕たちの「さかさま不動産」の取り組みをご紹介させていただきます。

基本的に、僕たちは「ふざけたことをたくさんやろう」というコンセプトがあるので、さかさま不動産のロゴは、不動産(ふどうさん)の「ふ」という文字を上下反対にひっくり返して作りました。これには、「不動産をひっくり返す」という意味が込められています。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

まずは、実際に僕たちの取り組みを利用してくれた方の映像がありますので、ご覧いただきたいと思います。

ご視聴ありがとうございます。ご覧いただいたのは、「サウナをやりたい」「自転車屋さんをやりたい」「本屋さんをやりたい」という方々のお話です。さかさま不動産では、掲載を希望される方すべてにインタビューをさせていただいて、ウェブサイトでご紹介しています。

▼マッチング実績|さかさま不動産
https://sakasama-fudosan.com/magazine/

ご覧いただいたような方々が、さかさま不動産を使って、理想の物件に巡り合っています。大家さんから「この方にうちの家を使って欲しい」と連絡をいただいて、マッチングをしています。

大切な想いとともに家を引き継いでもらう

昨日も長崎の方からお電話いただいきました。今はもう東京の世田谷に住んでいらっしゃって、長崎に家が余っているということで、「どうせだったら使って欲しいから、誰かいい人いませんか」というご相談でした。このようなお問い合せが、1日にたくさん入ることもあります。

そのような情報に基づいて、僕たちが「だったら、こういう人に使っていただくといいんじゃないですか」とお勧めするケースもありますし、大家さんが「直接この人に貸したい」「この人と連絡が取りたい」と言っていただくケースもあります。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

僕たちは、成約した数を追いかけるわけではなく、1つ1つの物語が少しでも伝わっていけばよいと思っています。空き家は、空き家と言う以前に、そもそも誰かの大切な家に違いないわけです。どんな想いでその家を引き継いてもらうかというところも踏まえて、不動産を借りてもらうということをしていただきたいなと思っています。

2040年には、日本の全ての家に占める空き家の割合が43%になるという試算もあります。本当にもったいないと思います。こんなに家がたくさん余っているのに、なぜ新しい家が建つのだろうと…。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

日本は地域で挑戦しやすい国になる

2011年から約10年、僕たちは、名古屋駅の近くで、地域コミュニティづくりとして、「ちっちゃい村を作ろう」というテーマで空き家を8軒ぐらい改装させていただきました。その時も、空き家がいっぱいありました。ところが、なかなか貸してもらえません。不動産リストにも載っていません。そこをなんとかちょっとずつでも貸してもらえるように活動しました。

「何かやりたい」という若い子たちがいます。でも、彼らにはお金がありません。僕らも、やっぱりお金がありませんでした。だから、なんとか安く貸していただけるように、大家さんにお話をします。その結果、「僕たちの熱量が大家さんに伝われば、空き家を貸してくれるんだ」という経験ができました。それを、なんとかいろいろな人に使ってもらうようにしたのが、さかさま不動産です。

例えば、海の近くでカフェを開きたいという子が、さかさま不動産にいたとします。日本は沿岸部だらけですので、海の近くでカフェができる空き家はいっぱいありそうだと思うわけですが、自分で探すとなると、やっぱりなかなか探しきれないものです。

だから、今、僕たちは、全国でネットワークを作ろうとしています。今、全国14箇所、さかさま不動産の概念を理解して、地域でさかさま不動産を運営してくる方を集めています。「海の近くでカフェをやりたい」という人が出てきたら、「あ、うちいいよ」というように、いろいろな地域の方が、挑戦したい人を気に入って呼んであげる仕組みを作っています。そうなると、日本は地域で挑戦しやすい国になると思います。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞

一方、地域側で、地域が求める人材を選ぶ必要があると思っています。まちづくりは、合意形成しながら進めていく必要があります。やたらめったら、いろいろなところでいろいろなことが起こるというのではなく、地域側が「この地域をどのようにしたらよいだろうか」とちゃんと考えて、求める人材を選んで呼んでくるということが大切です。さかさま不動産では、それが実現できるのではないかと思って進めています。

無料で運営するからこそ情報が集まる

そのさかさま不動産は、実は、全て無料でサービスを運営しています。ビジネスモデルがないのです。これは僕の個人的な考えですが、結局、ビジネスで解決できない課題が社会課題として残っているのではないかと思います。なので、「とりあえず無料でやろう」「無料でどこまでやれるか、やってみよう」と思っています。

面白いことに、無料でサービスを運営することによって、情報はたくさん集まってきます。空き家を借りたい人と、空き家を貸したい大家さんの情報が集まってきます。しかも、地方自治体さんからよく問い合わせいただくのが、「空き家はあるけど、貸してくれる人がいない」というご相談です。そこで、僕たちの持つ情報に基づいて、地方自治体さんと一緒に連携させていただいています。

空き家を借りたいというユーザー側には、やはりお金がありません。お金がない子からお金をもらうより、「この子を応援したい」という大家さんからお金もらうより、もう僕たちはお金をなしにして、さかさま不動産は無料にしてしまう。そして、「この取り組み、いいよね」「この取り組みで、できることがあるね」「この取り組みで、課題が解決できるね」というような方と一緒に仕事をしていきたいと思っています。

ただ、なかなか全てがうまくいくわけでもなく、今、いろいろな方にご説明させていただいています。もしかしたら、それこそ、来年、さかさま不動産が潰れてもおかしくないので、なんとか頑張りたいと思っているところです。

概念を変えることで社会問題を解決する

ずっと目標としているのは、さかさま不動産そのものがどうこうということではなく、社会の概念を変えていきたいということです。不動産を社会のインフラとして捉えたとき、一般的には「不動産は探すもの」になっていますが、そうではなくて「不動産は、探してもらうもの」であってもいいと思うわけです。僕はビジネスがしたいのではなくて、新しい構図を創りたい。それを目指して活動しています。

やっていること自体は、すごく単純です。利用者が不動産を探すのではなく、大家さんが不動産を貸したい人を探すというように、構図をくるっと変えただけです。4年前、概念をひっくり返した時に空き家問題がどうなっていくのかという仮説を持って、みんなで試していこうと思って始めました。もしかしたら、新しい切り口さえ見つかれば、社会問題は簡単に解決できるのではないか。それが、さかさま不動産をビジネスにしていない理由でもあります。

さかさま不動産の運営を3年続けてきて、24件しかマッチングしてないのに、グッドライフアワードの表彰式に来させていただくというのは、すごいことだと思います。不動産事業だったら、絶対に潰れています。でも、僕たちは概念を伝えていますから、それに共感してくれる人がいて、そこからまたいろいろな仕事につながっています。

「社会問題の解決には、これが1番良いやり方なのではないか」という実績を打ち立てるところまでいけると、今度はそれを教育分野に持っていきたいと思っています。生徒や学生たちに対して偉そうにビジネスモデルを解説している大人の概念をぶっ壊したいです。

なので、「まず、やりたいことをやろうよ!あなたの熱量が消化できる何かを作って、それをずっとやったら、結局、誰もやっていないことをやったことになる。あなたしか知らないことが生まれるから、その時にまた仮説を立てて、どんどん進めていけばいい」ということを伝えたい。それこそが仕事の仕方なのだということを高校生に教えるフェーズに進んでいきたいと思っています。

空き家の探し方もさかさまにしていきたい

今、面白い仮説を検証しようとしています。地域で空き家を探すのではなく、東京で空き家を探すほうがよいのではないかということです。空き家の探し方も、さかさまです。

ある企業の方とお話をしていて、企業の従業員のみなさんが、実家に対して課題を持っているということが分かりました。すでに東京で生活が完成していて、故郷には帰れないけれども実家はあるという方がたくさんいらっしゃいます。団塊世代の50代の方々には、そろそろお父さんやお母さんを施設に入れなければならないという事情が少なからずありますので、実家をどうするかということは、とても気がかりになっているわけです。

となると、東京の大企業の人たちにさかさま不動産を紹介して、実家を誰に託すかという選択肢を持っていただくことは、非常に相性が良いということになります。この構想を大企業の方に提案したら面白いということになり、早速、動き出しています。

東京で生活が完成している人たちは、なかなか実家に帰れないから、故郷の役所にも行けない。役所にも行けないから、結局、空き家バンクにも行けない。だったら、大企業が従業員のみなさんにさかさま不動産を紹介して、従業員の持つ課題解決に応えてあげることは、福利厚生の一貫としても有益ということになります。

1つ事例ができたら、どんどん東京の企業さんと連携していきたいと思います。結果的に、東京の企業にとって「地域で空き家を持っている人たちを集める」ということが、ある種の社会的責任を果たすというスタンダードになれば、もっと地方の空き家が動いていくことになるはずです。

そうなると、さかさま不動産には、空き家の非流通物件情報がますます集まるということになります。そして、またどんどん仕事が広がると思いますので、僕たちはそのような姿を目指していきたいと思います。

皆様の応援のおかげで、さかさま不動産を続けることができています。引き続き、どうぞよろしくお願いします。

第11回グッドライフアワード 環境大臣賞環境大臣政務官 朝日健太郎氏(左)から表彰された株式会社On-Coの水谷岳史氏(中央)と奥田啓太氏(右)

第11回 グッドライフアワード

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