受賞者紹介

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門

農福連携で地産地消、廃棄ゼロ。

さんさん⼭城

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城

受賞者紹介

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門

農福連携で地産地消、廃棄ゼロ。

さんさん⼭城

京田辺市の就労支援事業所である『さんさん山城』では、宇治茶や京野菜といった特産品にこだわった農福連携を実践。京野菜の生産だけでなく、良質な加工食品を販売し、コミュニティカフェをオープンするなど、地域に根ざした「福祉事業所だからこそできる」地産地消の取り組みを広げています。

*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。

どんな活動?

地域特産にこだわった「農福連携」で付加価値を創造

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城

『さんさん山城』は京都府南部の京田辺市にある障害者の就労支援事業所で、障害者、生活困窮者、高齢者、元引きこもりなど社会で生きづらさを感じる人達が農業分野で活躍する「農福連携」の取り組みを展開しています。

農家の高齢化で担い手のいない耕作放棄地を借り受け、地域特産にこだわった作物を栽培。収穫した京野菜などはJAに出荷しているほか、加工から販売までを手掛ける六次産業化に取り組んでいます。手摘み宇治抹茶を贅沢に使った『濃茶大福』や『濃茶クッキー』は地域のみなさんにも大好評の人気商品で、農福連携による農作物に高い付加価値を生み出しています。

平成29年(2017年)6月には、日替わりランチをワンコイン(500円)で提供する「さんさん山城コミュニティカフェ」をオープン。2020年からは毎月第一土曜日に「さんさん土曜市」などの催しを開催したり、地元ショッピングセンターでのイベントに出店するなど、地域の方々に開かれた事業所運営に取り組んできました。さんさん山城の畑で収穫された「京都えびいも」や「田辺茄子」といったブランド野菜は、そうしたイベントでも大人気。良質な京野菜はほとんどが大都市圏の市場に出荷されてしまうため地域のスーパーマーケットなどではあまり売られていないこともあり、地域住民のみなさんにも喜ばれています。

平成31年(2019年)には、農林水産省が新たに制定した「ノウフクJAS」(障害者が生産行程に携わった食品の認証制度)の第1号の認証を受けました。

また、農福連携の成功事例として、企業、行政、学生など多くの視察や研修を受け入れているほか、茶摘みやえびいも収穫体験などのイベントも積極的に開催。コミュニティカフェのスペースをランチ営業の時間外は、地域の市民団体の会議やサークルの例会の場として貸し出しを行っているなど、地域に根ざした施設を目指して取り組みを広げています。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城取材に伺った日もコミュニティカフェは大盛況

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城屋外には手作りのウッドデッキ席もありました(写真は開店前)

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城施設入り口には京野菜をモチーフにしたキャラクターのカラフルな看板が!

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城農業試験場だった建物の一階が『さんさん山城』の施設です

活動のきっかけは?

障害者の居場所作りとともに地域の課題解決を目指す

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城作業中の手を止めて、手話で思いを伝えてくれた職員の植原優さん(ろう者)

さんさん山城が開所したのは平成23年(2011年)のことでした。現在も施設の管理者を務める藤永実さんや、自身もろう者で支援員として活躍する植原優さんらが奔走し、ろう者の居場所作りと、農業の担い手不足解消を目指して、事業所をスタートさせました。

まずは高齢のため担い手がなく耕作放棄茶園だった茶畑を継承し、宇治茶の栽培から取り組み始めました。さんさん山城がある建物は、以前、農業試験場だったとのこと。地元のJAや農業改良普及センターなどのアドバイスや協力もあって、栽培品目や農地面積を拡大していきました。近年、政府も推進している「農福連携」ですが、事業所開所当初はまだその言葉さえ耳にすることのない時代でした。その頃から実践していたさんさん山城の取り組みは、全国でも先駆的な農福連携のモデルケースでもあったのです。

現在、さんさん山城では8名の職員体制(うち3名が障害のある職員)で、約30名の利用者(ろう者や難聴者が8割、耳の聞こえる精神・知的障害者が2割)の支援を行っており、農業や加工品の製造、コミュニティカフェの運営など多岐にわたる作業を行っています。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城管理者の藤永実さん(左)と、施設長の新免修さん(右)

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城栽培する特産野菜のキャラクターたち

成功のポイントは?

「さんさん山城だからできる仕事」を創出する

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城規格外の小さなえびいもも、丁寧に皮をむいて廃棄することなく活用します

事業所で手摘み収穫した宇治抹茶は地元の裏千家の茶道家が、地元の名刹である「一休寺」のお茶会で使用するほどの高級抹茶です。さんさん山城の人気商品である『濃茶大福』や『濃茶クッキー』には、その高級抹茶がふんだんに使われており、本物の抹茶の味が楽しめます。

イベントに出店すれば、新鮮な京野菜や加工食品が大人気。規格外のえびいもを活用した「えびいもコロッケ」は大ヒット商品のひとつで「先日出店した地元のイベントでは、1,000個以上のえびいもコロッケが、50分で完売してしまいました」(新免さん)とのこと。宇治抹茶や京野菜といったブランド価値がある特産品を栽培し、高付加価値をつけて加工品を商品化していることが、さんさん山城の取り組みの大きな魅力になっています。

それだけではありません。「障害者は必ずしも支援を受ける存在ではありません。むしろ、さんさん山城で活躍している障害者たちは、地域の伝統野菜を栽培したり、それらを使ったランチをコミュニティカフェでワンコインで提供し、地域の人たちを支えていると言っても過言ではありません」と新免さん。さんさん山城では「障害者でもできる仕事」をするのではなく、「さんさん山城だからこそできる仕事」をやっているのだという発想の転換をしたことが、魅力ある活動を展開できているポイントだと教えてくれました。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城取材時の大福作り体験にて。贅沢に抹茶が使われていることがわかります

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城地元特産の宇治抹茶を活用し付加価値の高い加工品をつくっています

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城特産の京野菜である「えびいも」も加工食品に

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城人気の食材である「鷹の爪」も商品化

レポート!

障害者のみなさんの丁寧な手仕事が印象的でした

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城菓子作りを担当する利用者(ろう者)のお手本を見ながら大福やクッキー作りを体験

さんさん山城へ到着した午前中、この日はランチ前のコミュニティカフェで、京田辺市内にフルフィルメントセンター(FC=大型配送センター)があるアマゾンジャパンと関係会社社員の方々が、さんさん山城との交流会に訪れていました。

交流会のメインイベントは、濃茶大福と濃茶クッキーつくりの体験です。日頃から菓子作りに携わるさんさん山城のメンバーがあらかじめ仕込んでおいた抹茶あんを餅に包む大福つくりと、棒状の生地を決められた厚さに切り揃えてオーブン皿に並べていくクッキー作りというシンプルな作業なのですが、それぞれにちょっとしたコツがあって難しくもあり、参加者のみなさんは笑顔で楽しんでいました。当然といえば当然ですが、指導するろう者の方は、熟練職人の手さばきでした。

アマゾン京田辺FCとさんさん山城は、この日だけではなく、ともに地域を支えるパートナーとして、さまざまな連携した取り組みや交流を行っています。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城アマゾンとさんさん山城は地域が元気になる取り組みを連携して進めています

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城焼き上がったクッキーは、自分たちの手で計量し袋に詰めてお土産に

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城実際の商品も、担当の利用者が毎日こうした手作業で作っています

昼食には、コミュニティカフェのワンコインランチをいただきました。この日のメニューは「さんさんちらし寿司」。自慢のえびいもを使った「えびいもハンバーグ」や「えびいもカレー」を味わってみたいところではありましたが、さんさん山城のランチは日替わりメニューで毎日一種類だけ。ちらし寿司を美味しくいただいた後、カフェの売店でレトルトの「えびいもスープ」をお土産に購入しました。

午後は、車で畑に移動してえびいもの収穫作業を、さらに施設に戻っての選別作業を見学しました。

収穫作業では、畝からえびいもが埋まっているところを見つけ、専用の芋掘り鍬やスコップを使い、数人で息を合わせて掘り起こします。掘り出したえびいもは土にまみれたかたまりのままカゴに集めて軽トラに積み、さんさん山城の選果場へ運びます。この日は50mほどの長さのひと畝を掘るのに小一時間といった所要時間でした。でも、こんなに手際よく収穫できるのは、作業するみなさんが慣れているのと、人海戦術が功を奏しているからこそです。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城乾いたタオルで丁寧に泥を落とすとキレイなシマ模様が浮かび上がります

さんさん山城に戻った後にも手間の掛かる作業が待っていました。京都えびいもは出荷の際、水で洗ってはいけない決まりがあるためえびいもの土は一つ一つ丁寧に乾いたタオルで拭いていきます。きれいにエビのようなシマ模様が浮かび上がったえびいもは、JAに出荷されたあと、京都中央卸売市場の仲卸業者を通して高級ホテルやミシュランの星を獲得している高級京懐石のお店などで使用されているほか、さんさん山城でも直売されています。また、JAに出荷できない規格外のえびいもは、事業所で丁寧に皮を剥き冷凍保存して、通年でカフェで提供したり、えびいもコロッケの食材として使われます。まさに「地産地消で廃棄ゼロ」の取り組みを実践しているのです。

夫婦で農業をされている農家や一般の事業者が、えびいもの収穫や選果などに、これだけの人手を割いて手間を掛けることは難しいことでしょう。でも、さんさん山城では福祉事業所の強みを活かして、多くの利用者らが丁寧な手作業で、地域の伝統野菜の維持継承に寄与する仕事をしているのです。そして、自分たちが育て、作ったものを食べた人から喜びの声を聞き、たくさんの人の笑顔を見ることで、さんさん山城がますます利用者にとってやりがいのある仕事ができる居場所になっているのだということが実感できました。

「障害者でもできる仕事をするのではなく、さんさん山城だからこそできる仕事を生み出していく」という発想転換。さんさん山城のような、地域と結びついた美味しい農福連携の取り組みが、全国に広がっていくといいですね。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城タカノツメを天日干し

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城収穫したばかりのえびいも

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城大量のえびいもをみんなできれいにしていきます。作業中は手話で会話できないのがちょっとつらいところです

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 NPO・任意団体部門 さんさん⼭城さんさん山城の原点とも言える茶園。例年、茶摘みイベントを開催しています

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