プラスチック製のペットボトル消費を減らすため、マイボトルの携行を呼びかけ、カフェや公共施設など無料で給水できる場所を紹介するアプリを提供。企業・自治体を巻き込んだ取り組みや、ビーチクリーンなどのアクションを通じて共感のネットワークを広げています。
*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。
どんな活動?
サステナブルを「あたりまえ」にするためのコミュニティ
『mymizu』の公式ウェブサイトの冒頭には「給水で、世界を変えよう」というキーワードが掲げられています。プラスチック製のペットボトル消費を減らすため、マイボトルの携行を呼びかけ、カフェや公共施設など無料で給水できる場所を紹介するスマホアプリを提供、給水という人々の日常的な行動を通じて、サステナブルが「あたりまえ」の世界を実現するためのプラットフォームやコミュニティづくりを進めているのが『mymizu』の取り組みです。
日本で初めてローンチされた無料給水プラットフォームである mymizu アプリは、App Store でも Google Play からでもダウンロードが可能。カフェやレストラン、公的施設(水飲み場)など、全世界45カ国で20万カ所以上の無料給水スポットが登録されていて、自分がいる場所から近い給水スポットを地図上で簡単に探すことができます。
日本国内の給水スポット登録は1万カ所以上。給水を希望する方に無料で飲み水を提供できる店舗や施設を運営していれば、無料でプロフィールを作成し、mymizu の給水パートナーとしてアプリに登録することが可能です。日本国内の給水パートナーはすでに1800店舗以上、Audi Japan(国内約135箇所の販売店)や、IKEA Japan(国内全店舗)といった企業も名を連ねています。
mymizu の活動は、アプリだけではありません。共感する人たちと集い、ペットボトルやごみを減らすことを自分ごととするためのアクションとして、月に1回程度の「mymizu ビーチクリーン」イベントを開催。また、企業や自治体などと連携してペットボトルの消費量を減らすためのワークショップやセミナーを開催したり、一定期間のチーム戦で「どのチームが一番ペットボトル消費量を減らせるか」を競う mymizu チャレンジというプログラム(有料開催)を提供しています。
活動のきっかけは?
沖縄旅行でプラスチックごみに埋もれた砂浜を見て……
この写真は長崎県の対馬で撮影したものです
mymizu の共同創設者であり、非営利型一般社団法人 Social Innovation Japan の共同代表者でもあるマクティア・マリコさんとルイス・ロビン敬さんが、2018年に訪れた沖縄旅行で目にした光景が、mymizu のプロジェクトがスタートするきっかけでした。美しく澄んだ海を前にして、足下の砂浜は大量のプラスチックごみで埋め尽くされていたのです。
水資源が豊富で、蛇口をひねれば美味しい水が飲めるのに、大量のペットボトルが消費されているのはなぜだろう。疑問を抱いた2人は、それを解決していくためのアクションとして、mymizu の構想を話し合いました。
近年、サステナビリティという言葉への注目度が高まっていますが、本当にサステナブルな社会を実現するためには、多くの人の行動が不可欠です。PETボトルリサイクル推進協議会の『年次報告書2021』によれば、日本では2020年度の1年間に約217億本のペットボトルが出荷されました。資源回収率は96.7%なので、およそ7.2億本のペットボトルはリサイクル回収されることなく、燃えるごみや不燃ごみとして処分されるか、川などに落ちて海に流され、プラスチックごみとして漂流してしまいます。とはいえ、プラスチックごみで埋もれた砂浜を見て課題を感じたとしても、それを解決するために「課題が大きすぎて、自分が何を、どこから始めたらいいのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。
無駄なペットボトルを消費する側に回るのではなく、マイボトルを持ち歩きアプリを活用して給水する、水分補給という日常的な行動を変えることを通じて、「サステナブルがあたりまえの世界を実現」したいということが、mymizu を立ち上げた2人の思いです。
成功のポイントは?
mymizu というサステナブルなアクションをブランディング
ルイスさんとマクティアさんが共同代表者を務める Social Innovation Japan は、企業へのコンサルティングや人材育成、コミュニティ構築などを提供する非営利型の一般社団法人です。
おふたりの経歴を伺うと、ルイスさんはエジンバラ大学国際ビジネス学修士課程を卒業し、世界銀行やUNDPのコンサルタントなど、20ヶ国以上の国際機関やNGOで活動。マクティアさんはロンドン大学卒業後、中日新聞社のロンドン支局、その後、駐日英国大使館の国際通商部に勤務、現在はアメリカを拠点に世界140カ国でサーキュラーエコノミー(循環型経済)を促進する「Circular Economy Club」の東京担当を務めるなど、ともに豊かな国際経験と、サステナブルビジネスやソーシャルビジネスへの知識や経験を積み上げてきていることがわかります。
マクティア・マリコさん
ビーチクリーンイベントで挨拶をするルイス・ロビン敬さん(左)
mymizu は、Social Innovation Japan の公式サイトでも、「イノベーション創出」の事例として紹介されています。つまり、この mymizu の取り組みは「環境に良いことを何か始めたい」という思いに対して、持続可能なビジネスとしてのソリューションを発想し、社会に実装するモデルケースとしてデザインし、ブランディングされているのです。
たとえば、水滴の中に地図上の地点を表すピンマークをデザインしたロゴマークは、シンプルでわかりやすくて、美しい。サステナブルを実現するためのアクションを、美しく楽しいパッケージに包み込んでいるからこそ、理念に共感した多くの人がアプリをダウンロードして、多くの企業や店舗、自治体などがパートナーとして協力しているのだと感じます。
レポート!
楽しそうでかっこいい! 由比ヶ浜でのビーチクリーン活動
2021年12月11日、神奈川県鎌倉市の由比ヶ浜海岸で行われたビーチクリーン活動へ取材に伺いました。12月とはいえ絶好の晴天に恵まれて、セーターでは汗ばんでしまうほど。参加者のみなさんは、お揃いのmymizu ロゴ入りTシャツで集まりました。
参加者が集まると、まずは輪になってヨガストレッチ。さらに、フライングディスクをバトンのように投げながら、受け取った人がひとりずつ自己紹介していきます。ルイスさんやマクティアさんは日本語もネイティブ並みですが、まだあまり日本語が得意じゃない参加者もいらしたようで、自己紹介の共通言語は英語です。
ビーチクリーンを始めるために用意されたトングは鮮やかなブルー。自己紹介の後、みんな思い思いにビーチでのごみ拾いを始めたのですが、その様子さえ「楽しそうでかっこいい!」のが印象的でした。
グッドライフアワードは、環境に優しい社会の実現を目指し、日本各地で実践されている「環境と社会によい暮らし」に関わる活動や取組を表彰して紹介するプロジェクトです。「環境と社会によい暮らし」と聞くと、節約による不便さや窮屈な印象を抱く人がいるかも知れませんが、決してそうではありません。mymizu のように、環境と社会によい活動は「楽しそうでかっこいい!」ことでもあるのです。