受賞者紹介

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞

次世代へとつなぐ循環の環(わ)
~生ごみ循環でまちを元気に~

⼤⽊町

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町

受賞者紹介

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞

次世代へとつなぐ循環の環(わ)
~生ごみ循環でまちを元気に~

⼤⽊町

町の中心部に位置する国道沿いに、生ごみや浄化槽汚泥などをエネルギー資源や有機質の肥料として活用するための施設である『おおき循環センター くるるん』を開設。隣接した道の駅では、液肥を活用した野菜の販売や地産地消レストランが大人気。ごみ処理費用の軽減とともに、地域の雇用創出などにも貢献しています。

*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。

どんな活動?

生ごみなどのメタン発酵施設が町のシンボルに

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町メタン発酵槽を中心にガスホルダー、液肥貯留槽などが並んでいます

福岡県南部、筑後平野の中央部に位置する大木町は、人口は約1万4000人、町全体がほぼ平坦で掘が町全体の14%を占めており、イチゴやアスパラガス、シメジ、エノキ、花ござなどを特産とする農業が盛んな町。環境課題への取り組みとして、2006年(平成18年)に建設されたのが『おおき循環センター くるるん』です。

『おおき循環センターくるるん』では、町内から回収された生ごみや浄化槽汚泥、し尿などを、異物除去や破砕などの処理を行った上で、メタン発酵槽によりエネルギー資源(バイオガス)や有機質の肥料(液肥)として活用しています。バイオガス発電は施設の電力として利用。液肥は町内の農業や、家庭菜園などで100%活用されています。生ごみ・し尿・浄化槽汚泥によるメタン発酵施設としては、全国で初めての事例となりました。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町生ごみタルを満載した収集車が循環センターに到着

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町生ごみの投入やタルの洗浄は手作業で行います

『おおき循環センターくるるん』の処理能力は高く、年間およそ1200トンの生ごみ、2000トンのし尿、8800トンの浄化槽汚泥を投入し、約37度程度の中温で22日間発酵。生産されたバイオガスで出力25kWの発電器2基を通じて、1日あたり約700kWh(年間で約24万kWh)の電力を発電しています。また、年間約5500トンの液肥を生産することができます。

2010年(平成22年)には『おおき循環センターくるるん』に隣接する場所に『道の駅おおき』を開設。液肥を活用した地元産の野菜の直売所や、地産地消の健康地域応援レストラン(デリ&ビュッフェくるるん)をオープンして、町内外の来訪者で賑わうスポットになっています。関連施設の職員は地元雇用とすることで、地域の雇用創出にも貢献しています。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町町の中心部で隣接している『おおき循環センターくるるん』と道の駅

敷地内には、環境学習室や資料展示室などを備えた環境学習棟を併設しています。自治体による生ごみ循環事業の先進的な成功事例として、全国各地から例年3000~4000人もの見学や視察を受け入れ、町の循環事業を発信するシンボル的な場所となっているのです。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町学習棟の中庭には廃棄物を活用したオブジェも展示

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町年間およそ4000人の視察を受け入れています

活動のきっかけは?

持続可能な「循環のまち」を目指す

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町町内には堀と呼ばれる水路が張り巡らされています

『おおき循環センターくるるん』を軸としたプロジェクトの原点は「次世代につけを残さない」「持続可能な循環のまちづくり」を進めようとする発想でした。現在の境公雄町長が役場の環境課職員だった頃のこと、町内にごみ焼却施設はなく、生ごみを含めた可燃ごみは、近接した自治体の焼却施設で処分していたそうです。当時の町長が環境課題への取組みに熱心であり、肥沃な平地や、町内に張り巡らされた掘のおかげで水にも恵まれた農業の町であるにも関わらず、大きなコストを掛けて「生ごみを燃やしているのはどうなんだ?」という問題が提起され、境町長自身が担当者としてその解決法を模索したそうです。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町 境公雄町長

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町 道の駅おおきの施設では再生可能エネルギー活用も進めています

最初からメタン発酵による資源活用だけを目指したわけではなく、生ごみを堆肥化して家庭菜園などで活用する試みも進めました。とはいえ、生ごみを堆肥化して利用するには手間も掛かり、全町民に広げる取組みとしては数々の課題もありました。

そこで、地域の大学などとも協力し、浄化槽汚泥や生ごみをメタン発酵させて資源活用する計画を発案して約3年に及ぶ研究を進め、複数のプラント建設会社からの提案を受けてプランを策定。処理や発酵時に臭気が漏れるようなこともないことを確認して実現したのが『おおき循環センターくるるん』でした。

『おおき循環センターくるるん』が稼働して、生ごみの資源化を進めたことで、大木町のごみ処理費用は年間約3000万円を節減することに成功しました。さらに、2008年(平成20年)には、徳島県上勝町に次ぐ全国で2番目のゼロ・ウェイスト宣言となる「大木町もったいない宣言」を採択し、さまざまなごみの再資源化を進めています。こうした取組みによって、可燃ごみは約60%削減となり、CO2排出量は年間73%削減するなど、経済的にも環境的にも大きな成果を挙げています。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町 紙おむつ専用の回収ボックス

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町 町民は無料で液肥を活用できます

成功のポイントは?

処理施設ではなく「循環施設」であるビジョンを町民と共有

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町『大木町環境プラザ』には町民が分別したごみを持ち込みます

『おおき循環センターくるるん』は町の中心部の国道沿いに位置しています。生ごみを含めた可燃ごみや、し尿・浄化槽汚泥などの処理施設といえば、住民の暮らしに影響が少ない場所に作られることが多いでしょう。でも、境町長は「町の真ん中に建設することに大きな意義があった」と強調します。『おおき循環センターくるるん』ができる以前、大木町ではし尿や浄化槽汚泥を海洋投棄していたそうです。し尿処理施設を新たに建設するのにも、大きなコストが必要です。臭気の心配もなく、生ごみとし尿・浄化槽汚泥を資源化できる『おおき循環センターくるるん』をあえて町の真ん中に建設することには、そこが「処理施設ではなく循環施設である」ことを、広く町民にアピールする狙いがありました。

さらに、生ごみなどのメタン発酵によるバイオガスシステムを設けても、住民による生ごみの分別が徹底され、その他の資源ごみの分別も進めなければ適切な効果を挙げることはできません。そのため、『おおき循環センターくるるん』の稼働と前後して「大木町もったいない宣言」を採択して、資源ごみや粗大ごみを分別して町民自らが持ち込む『大木町リサイクルセンター』(2012年に『大木町環境プラザ』へ名称変更)を開設。ゼロ・ウェイスト(ごみを出さないライフスタイルを目指す指針)のビジョンを全町民と共有することを目指したのです。

大木町では「燃やすごみ」と「プラスチック類」、「紙おむつ」は指定の専用袋に入れて回収場所に出されたものを収集。生ごみは住民が分別して「回収タル」に出し、無料で収集しています。また、缶やびん、金属類などの不燃物や新聞紙、雑誌、古着などの資源ごみは、24品目に分別して住民が環境プラザへ持ち込む仕組みができあがっています。

ごみの処理から循環へ。環境に対する意識を共有し「住民の協力を得られるようになったことで、事業の8割方ができあがったと感じています」と境町長。現地取材に伺ったとき、中学生の女の子が母親とともに生ごみを回収タルに運ぶ様子を見ることもできました。ごみ分別という、暮らしの中で基本的な環境への取組みが、大木町では「当たり前」になっていることを実感できました。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町まだ使えるものはリユースショップで販売

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町環境プラザにはおもちゃの病院も開設

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町各家庭で分別した生ごみは週2回、地域毎に決められた曜日に回収タルで集められます

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町 生ごみ収集の様子

レポート!

「循環」を支える町民のみなさんに感じる熱意

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町液肥を活用した菜の花畑の風景は大木町の春の風物詩

大木町での取材では、年間5500トンほどもできあがる液肥の活用を支える方々にお話しを伺うことができました。『おおき循環センターくるるん』で生まれる液肥は、『くるるん』など町内数カ所に設置されている大型の「液肥タンク」や小規模な「液肥スタンド」から、町民は無料で使うことができます。とはいえ、多くの量を活用するために必要なのが、実際に農業に携わる方々の協力です。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町 中村勝さん

町内で米などを生産する中村勝さんは、生ごみコンポストへのチャレンジ当時から、町の姿勢に賛同し、協力してきた方です。液肥の活用についても当初から参画して試行錯誤を重ね、現在ではおよそ15ヘクタールほどの田んぼで、10アール当たり5~6トン程度の液肥を散布しているとのこと。農地への液肥散布車などは町が差配して有料ですが、コストは10アールあたり1000円程度。化学肥料を使用すると6000円は掛かるそうなので、コストを削減しながら循環の農業を実現できていることになります。液肥を活用して生産された米は特別栽培米『環のめぐみ(元気つくし)』としてブランド化。道の駅などで販売するほか、学校給食にも利用されています。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町 今村利光さん

町内の農業者が中心となって設立された「液肥利用推進協議会」初代会長の今村利光さんは、液肥を活用する方法のひとつとして、米作りを控えた春の田んぼを、液肥を使って育てた菜の花畑にする取り組みを続けています。収穫した菜種油は『環のかおり』としてブランド化。家庭で使用された後は食用廃油として環境プラザで回収し、バイオディーゼル燃料(BDF)として町内で循環しています。鮮やかな花が咲き誇る季節には、菜の花畑に特設の見学台まで自作して、バンド演奏などを行うイベントまで開催するということです。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町 荒木フサエさん

子どもたちや未来の世代に美しい自然、美しい町を残すことを目標に設立した住民グループ『あーすくらぶ』会長の荒木フサエさんも、生ごみ堆肥化への試行錯誤の頃から、町のチャレンジに共感し、協力しているキーパーソンです。『くるるん』は「着想から完成までほぼ10年を掛けたプロジェクトでした。長崎大学の中村修先生の協力で実施した実験プラントや全国の先進事例の視察などに参加しました。簡単な計画ではなかったですが、本当にやってよかったと感じています」と荒木さん。現在も町内で環境意識の啓発を目指した講演やイベントを開催するなど精力的に活動し、自宅では液肥を使った家庭菜園を楽しんでらっしゃいました。

「規則だから」というだけでなく、「廃棄や処理から循環へ」という意識が根付き、当たり前のこととして生ごみを分別して回収タルに運び、資源ごみを循環センターに持ち込む町民の多くのみなさんの姿。そして「町に頼まれたから」ではなく、地域の未来のために自分自身ができることとして、自ら発案し行動するキーパーソンのみなさんの言葉に触れて、改めて『くるるん』を町の中心に建設することに意義があると強調した境町長の思いが、町の住民のみなさんに浸透していることを感じます。

早朝の生ごみ収集の様子などを見たかったので一泊二日の日程での取材となったのですが、昼食は二日とも、道の駅の地産地消レストラン『デリ&ビュッフェ くるるん』のビュッフェスタイルのランチをいただきました。値段は大人1名1500円。地元素材を活かした料理はとても美味しく、ドリンクやデザートも豊富にあって大満足の内容でした。伺ったのは二日とも平日でしたが、ランチタイム(11~15時)はほぼ満席の大人気でした。

目に眩しいほどの黄色に輝く菜の花畑。そして「循環施設」に隣接した道の駅のレストランで談笑しながら、液肥を活用して育てた地産地消の味を楽しむ人たちの様子を拝見し「循環施設を町のシンボルに」という境町長の思いが、大きく結実していることを実感できる取材となりました。

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町 デリ&ビュッフェ くるるん

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町たくさんの料理やデザートなどが並びます

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町平日でもほぼ満席の大人気でした

第8回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 ⼤⽊町道の駅のショップでは循環から生まれた商品も販売しています

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