※この記事は、2024年12月7日に開催された第12回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションに基づいて作成されています。
淡路島を舞台に地域と大学が連携する
話者:深尾昌峰氏(龍谷大学)
龍谷大学の深尾です。洲本市役所のスーパー公務員である高橋さんと2人でお話をさせていただきます。
私たち龍谷大学政策学部は、11年にわたって洲本市さんと一緒に地域活性化の取組を進めてきました。学生も教員も洲本に通い続けて、地域の皆様から叱咤激励をいただきながら、一緒に汗をかいて進めてきた地道な取組です。
アワードで評価いただいたことに改めて感謝を申し上げ、私たちの取組の紹介をさせていただきます。
話者:高橋壱氏(洲本市役所)
洲本市役所の高橋です。淡路島から来ました。
龍谷大学さんに活動していただいているのは、淡路島の中央にある洲本市です。美味しいものがたくさんありますので、是非、皆様もお越しください。
島全体で東京23区ぐらいの大きさがありますが、13万人しか住んでおりません。毎年600人ずつ人口が減っています。また、淡路島には総合大学がありませんので、高校を卒業すると島外へ出て行って帰ってこないという状況が長らく続いています。
そういった中で、2013 年度から地域と大学の連携に取り組んでいます。最初の年からパートナーとして一緒に活動しているのが龍谷大学さんです。そして、龍谷大学さんは11 年間ずっと活動を継続されており、これまでに関わった学生の数は310人にも上ります。
直近の活動としては、増えすぎて困っている竹を食べて竹林の整備をしようということで「メンマ作り」、空き家が増えているため「古民家リノベーション」に取り組んでいただいております。
そして、再生可能エネルギーに関しては、千草竹原という集落に「小水量発電」を設置していただきました。もともと龍谷大学さんは、再生可能エネルギーで洲本市を活性化させることが活動のテーマの1つでした。このような小規模な自家消費型の小水力発電を作っていただきました。
その結果、視察のお客様が来たり、JICAが研修を受けに来たり、修学旅行生が来たりなど、限界集落と呼ばれるような非常に小さな集落に賑いをもたらしました。再生可能エネルギーで地域を活性化させた事例です。深尾先生に詳細の説明をお願いします。
再エネの収益を地域に還元する
話者:深尾昌峰氏(龍谷大学)
再生可能エネルギーによる地域活性化の核になるのが、ため池です。淡路には、たくさんのため池があります。それを活用させていただいて、ため池ソーラーという再生可能エネルギーの設備を一緒に作らせていただきました。龍谷大学の教員が中心となって設立した非営利型の株式会社で運営しています。
東日本大震災の時に、大学が社会的投資として従前の電力会社の株を買うのが本当にいいのかという議論がありました。「人間が制御できない原子力に間接的に投資をするのではなく、今できることをやろう」と、大学で真剣に議論をしました。
そこで、大学にも非営利型の株式会社に投資してもらい、地域の金融機関の皆様からも融資をいただきました。私たちは、FIT制度(再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間固定価格で買い取ることを国が約束する制度)を活用しながら、きちんと収益が地域に還元されるモデルを作りたいと考えてきました。
再エネの収益によって、メンマの開発をはじめとする様々な地域の取組を財政的に支えていくという構図を地域の皆様と一緒に作りました。龍谷大学もブランチオフィスを洲本に置かせていただいて、このような活動をどんどん支援しています。ため池の維持管理も地域コミュニティではなかなか難しくなっていますが、再エネの収益を原資としながら取組を進めています。
再エネから生まれるローカルイノベーション
若い学生が地域に通い、非営利型の株式会社が売電収益を地域に還元していくという“2つのエンジン”を地域に持っていくと、暮らしに踏み込んだ地域活性化になります。一般的に、「若い人が地域に来たら元気になる」と言われますが、それは幻想です。この取組は“2つのエンジン”があるからこそ、若い学生たちが地域に通いながら、生活に根ざした価値をもたらすことができています。
だからこそ、学生と地域の皆様との関係性が密です。地域の方から教わって初めて魚をさばいたなど、学生たちは貴重な経験をさせていただいています。ですから、卒業しても洲本に通っている卒業生たちがたくさんいます。移住をした卒業生も出てきました。密度が濃い交流や関係性ができています。卒業生の結婚式に、高橋さんや地元の人たちが招かれるという関係性ができています。結果的に、彼らが地域の担い手だと言っていただいていることに、大学としては非常に感謝をしています。
そして、ただ単に再エネがあるということではなくて、再エネが地域にあるものを編み直しながらローカルイノベーションを起こしつつあります。現在では、龍谷大学だけではなく、38もの大学が、このような取組に関わり始めています。淡路島は大学がない地域ですが、それを逆手に取りながら、いろいろな大学から学生が洲本市に集まるというのは凄いことだと思いますし、これまで私たち龍谷大学が洲本の皆様と一緒に地域づくりに取り組んできたことを誇りに思います。
環境大臣政務官を務める五十嵐清氏から表彰される深尾昌峰氏(龍谷大学)、櫻井あかね氏(龍谷大学)、高橋壱氏(洲本市役所)