※この記事は、2024年12月7日に開催された第12回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションに基づいて作成されています。
スーツ専門店として環境問題に向き合う
私たち「青山商事」は、「洋服の青山」「SUIT SQUARE(スーツスクエア)」を運営しているスーツ専門店です。この業界の中では唯一、47都道府県に出店しています。ご紹介させていただきますのは、「終わらない服を作ろう」という取組です。弊社の創業60周年記念の1つとして立ち上げた企画になります。
私たちを取り巻く環境として、大量に衣料品が生産、廃棄されているという現状があります。それが、廃棄物問題につながっていたり、焼却をしてしまうと二酸化炭素の排出という問題につながっていたり、アパレル業界は環境問題が身近にあると思います。そのような中で、スーツのリーディングカンパニーとして、やはり環境問題にしっかり向き合って取り組んでいく意義があると考えました。
「不要衣類の回収(下取りサービス)」という取組自体は、1998 年から着手しています。最初は、全国の「洋服の青山」で、お客様から不要になったスーツや礼服等を回収するということから始めた取組です。当時は「CSR」という言葉がようやく出てきたばかりの頃でしたので、当然、「SDGs」という言葉もなく、「サステナブル」という言葉もなく、いち早く環境問題に向き合ってきたと自負しております。
当時は、まずは回収の周知を目指して、不要になったスーツをお持ちいただくと1万円の割引クーポン券と交換するというようなスキームで、お客様への販促手段の1つとして取り組みました。主に「小さくなって着れなくなったから」「ちょっと破れてしまったから」という理由でスーツをお持ちいただくお客様が多く、新しいスーツや礼服を新調するためにご利用いただいていました。
終わらない服を作る“WEAR SHiFT”
私たちは、「終わらない服を作ろう」という服のリサイクル活動を「WEAR SHiFT(ウェアシフト)」と定義しました。
店頭に回収箱を設けて、不要になった衣類を今まで通りに回収し、店舗から専門業者に一括送付すると、回収された服がウールに変わったり、スーツに変わったり、コートに変わったり、素材によってはポリエステルがコップなどの容器に変わったり、様々な形で不要衣類を活用しています。
「終わらない服」を作る「WEAR SHiFT(ウェアシフト)」という取組は、服を何度でも繰り返し循環させてリサイクルできるような仕組みを作っていこうという発想から生まれました。服の回収ボックスとして、写真のような箱が各店舗に設置されております。
弊社の強みは、やはり全国津々浦々にお店があるということだと思います。お客様が近くのお店にお持ちいただくことによって、私たちは不要な衣類をお預かりしているのだと捉えています。いわば、文字通り、「お客様と共に歩むエコ活動」です。分かりやすいフレーズとして、お客様にお伝えしています。
また、回収量については、コロナ前の2018年が約400トンほどでした。コロナ禍では回収量が減りましたが、少しずつ回復して昨年度は約355トンまで回収量を増やしております。
実際のモノづくりとしては、リサイクルウールを使用した商品開発を行っています。これまでに、リサイクルウールコートやウェアシフトスーツを生み出しました。まだまだリサイクルできる割合は低いのですが、「服から服へ」の実現に向けて挑戦しています。
特に、リサイクルウール原料の抽出は全て手作業で行いますので、時間も手間も労力も、さらには費用もかかります。ですので、リサイクルによる商品開発は、社内でもかなり苦労したと聞いております。しかし、試行錯誤の末、ついに、リサイクルウールによる「スーツ」や「コート」が誕生したのです。
防災毛布の寄贈や森づくりにも発展させる
リサイクルウールコートやウェアシフトスーツなどの販売商品だけではなく、私たちは、一部の不要衣類を「防災毛布」に生まれ変わらせています。2019年から、11の自治体に向けて、約2300枚の防災毛布を寄贈しました。
防災毛布を寄贈する自治体としては、①過去に大きな災害があった地域、②離島や遠隔地、③我々「洋服の青山」の店舗がある地域、この3つの条件を満たした自治体に寄贈をしています。
最初に防災毛布を寄贈した自治体は、地震に見舞われた石川県の輪島市でした。その後、鹿児島県奄美市、新潟県佐渡市と、離島遠隔地を中心に寄贈させていただきました。防災連携協定や包括連携協定などにもつなげ、地域とのコミュニケーションを図っています。
また、不要衣類の回収量に応じて、ものづくりだけではなく、森づくりも行っています。2022年、高知県梼原町、森林保全団体more trees、青山商事で3者間の森林保全協定を結びました。梼原町は、“雲の上の町”と言われている場所です。 回収した不要衣類1kg あたり10円をmore treesに寄付をして、梼原町にある「AOYAMAの森」の森づくり活動に生かしています。
お客様の不要衣類の回収から、商品に変わる“モノづくり”だけではなくて、“森づくり”にも繋がっているということで、皆さんにもご理解いただけると非常にありがたく思います。
今後は「販売したスーツの量と同じだけ、不要になった衣類を回収したい」という目標とともに、やはり少しでもリサイクルスーツの割合、リサイクル量を増やしていきたいと思っています。
その目標を達成するためには、皆様のご協力が必要です。不要になった衣類は、捨てず、燃やさず、是非とも、「洋服の青山」や「SUIT SQUARE」までお持ちください。
環境大臣政務官を務める五十嵐清氏(左)から表彰される青山商事株式会社