※この記事は、2024年12月7日に開催された第12回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションに基づいて作成されています。
捨てられるカートリッジを見て「もったいない」
皆さん、エコリカをご存知でしょうか? プリンターインクのカートリッジを集めてリサイクルする会社です。
カートリッジのリサイクルというと、「簡単な仕事だろうな」と思われるかもしれませんが、とても大変でした。「どうやってカートリッジを集めたらいいのか分からない」「集めたカートリッジに、どうやってインクを詰めるのか分からない」といったところからスタートで、しかも、純正メーカーさんがあまりいい顔をしない… 非常に苦労しました。
よく、「どうしてこんな大変な事業を始めたんですか?」と聞かれます。
私は岐阜の郡上八幡の出身で、郡上八幡は別名「水の街」と言われまして、湧水を再利用する仕組みがあります。水舟の1段目は飲み水として使い、2段目では野菜を洗い、3段目では食器を洗う。食器に付着した残飯は下の池に流れ、そこに棲む鮒や鯉の餌となります。
そのような背景もあって、捨てられるカートリッジを見て、常々、「もったいないな」と思っていました。そこで、「なんとかして、このカートリッジのリサイクルを事業化できないか…」と思ったのが、エコリカの始まりです。
三方よしで日本全国に事業展開
この事業で1番必要なのは、使用済みのカートリッジです。それでは、どこで集めるのが良いのか。売っているところで集めればいいということで、インクカートリッジの販売店に回収ボックスを設置しました。
ただし、販売店に設置にするのも非常に苦労をしました。どうやったら普及するのかについて考えまして、このカートリッジを“買い取ろう”ということになり、販売店には手数料を支払うことにしました。使用済みカートリッジを集めて儲けていただくことで、ゴミを減らす。これは、近江商人で言いますところの「社会によし」です。
続いて、弊社の製品を並べて売っていただくことで利益になるということで、「売り手によし」。さらに、純正品に比べて安く売ることで、「買い手によし」。これで、三方よし。ということで、この事業はあっという間に日本全国に広がりました。
圧倒的なカートリッジ回収力
エコリカには、カートリッジの回収を支える2つの柱があります。
1つは、回収ボックスです。当初、東大阪の会社に発注したら、1台35万円もしました。これでは持たないということで、改良に改良を重ね、今では5万円ぐらいで回収ボックスを製造しています。
もう1つは、エコリカの提供するカートリッジのパッケージです。これをベリッと破って、新しいカートリッジをプリンターに取り付けた後、古いカートリッジをまた袋に戻します。すると、この袋がジッパー付きになっているので、手を汚さず、カバンを汚さず、お店まで持ってきていただくことができます。
現在、年間で排出されるカートリッジは2億個で、その84%がゴミとして未だに捨てられています。そのような中で、郡上八幡にあるエコリカ回収センターには、毎日、使用済みカートリッジがフレコンの袋で約2杯ずつ集まっております。
また、エコリカでは、使用済みカートリッジを店頭に持ってきていただくために、様々な啓蒙活動をしています。イメージキャラクターは、足立梨花さん。エコな梨花、足立梨花ということで、選定しております。その他、球場広告を出したり、スタジアムを含めていろんなところにイベントで参加したりしております。
20年で2億個のリユースを実現
エコリカの事業が立ち上がって、すでに20年になります。この20 年で集めたカートリッジは約4億個で、リユースで実際に製品化してお客様の手に渡ったカートリッジは2億個を超えています。
また、製品化できなかったカートリッジについては、マテリアルリサイクルやサーマルリサイクルで、さらなるチャレンジを続けています。当初は再生ペレットにして折りたたみ式コンテナなどを作っていたのですが、石油の価格の変動が大きいことからマテリアルリサイクルを引き受けていただける会社が少なくなって、ほとんどがサーマルリサイクルになってしまうのは残念だと思っています。
エコリカでは、カートリッジの回収から販売まで、我々の事業そのものがSDGsとなっております。多方面から評価もいただける取組となりました。ただし、まだまだカートリッジを完全には回収しきれておりません。今後もさらなるチャレンジを続けます。
環境大臣政務官を務める五十嵐清氏から表彰される宗廣宗三氏(株式会社エコリカ 代表取締役社長)