※この記事は、2024年12月7日に開催された第12回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションに基づいて作成されています。
人を良くする「食」を提供する
ハンバーグレストランのびっくりドンキーは、全国に345店舗を展開しています。人を良くする「食」を提供する外食産業として、1990年代より、食材の品質・原産地・安全性にこだわり、生産者の方々と共に歩んできました。特に、お米に関しては、特別栽培米よりも厳しい自社基準を設けて契約栽培を行っています。
びっくりドンキーでは、年間5000トン以上のお米を使用しており、その契約水田は1400ヘクタールを超えます。高品質で安全なお米を持続的に大量調達するために、私たちは1990年代より、お米の契約栽培に取り組んできました。2006年には、フランチャイズを含む全店舗において、独自基準の契約栽培米に切り替えました。
「化学合成された殺虫剤と殺菌剤は使用禁止」「農薬使用は除草剤1回以下」「化学肥料由来窒素の使用を慣行栽培の半分以下」という厳しい基準のもと、安全でおいしいお米を生産しています。また、生産者の皆様に対しては、適正な価格で継続的に商品を買い取ることで、安定した経営を支援しています。
生物多様性に配慮したお米作り
現在、契約産地は、全国17団体420件以上に上ります。契約水田の生物多様性保全活動を進めており、2010年には「田んぼの生きもの調査」を開始しました。2016年には直営店用のお米の生産者を対象に、2023年にはフランチャイズを含む全ての契約生産者を対象に、年1回以上の自身の「田んぼの生きもの調査」を義務化しました。
調査実施にあたり、生産者全員が実施できる調査手法を準備する必要がありました。生きもの調査の目的は様々あります。それは、生態系のモニタリングであり、生きもの目線から農業を見つめなすきっかけであり、レジャーでもあります。
全てを満たせるのがベストではありますが、生産者に求める成果として注目したのは「生きもの目線から農業を見つめなすきっかけづくり」です。そして、活動を続けるためには「楽しさ」が重要だと考えました。
また、調査をする際には、生きものに詳しい人がいないと見つけた生きものが分からないという問題に直面しました。手間や時間がかかる調査では、生産者の負担になってしまいます。
そこで、未経験者のみで実施可能なオリジナルの「田んぼの生きもの調査」手法として、「モニタリング精度は低いけれど、感覚的に見つけた生きものを分類して記録可能な調査用紙」「安価でどこでも入手可能な道具」「体への負担が少なく短時間でも実施可能なマニュアル」を提案するとともに、産地ごとの実施講習会を行って、全員実施につなげることができました。
びっくりドンキーでは、この調査を通じて、生産者の方々に、水田が多くの生きものの宝庫であることを認識してもらい、生物多様性に配慮したお米作りを実践することを目指しています。
お米の生産者が自主的に生物多様性に取り組む
生産者の方々は、「田んぼの生きもの調査」の結果を踏まえて、オタマジャクシがカエルになるのを待つために、また、ヤゴがトボになるのを待つために、水田の水管理の一環である中干作業を延期するなど生物多様性配慮項目に自主的に取り組んでいただいています。昨年実績では、全生産者の68%にあたる292件の生産者様から、生物多様性に配慮した活動の報告をいただいています。
年に1度、生産者が活動報告を行う場も用意しています。2010年から継続して行っている「お米の生産者協議会」は、2020 年から2023年まではオンライン開催でしたが、2024年から現地開催を再開しました。50名を超える生産者様及びフランチャイズ様、精米業者様、集荷業者様が集まって情報交換会を行いました。生産者の希望で契約産地の視察も行っており、圃場を見ながら技術の情報交換なども行っています。
お客様に田んぼの生きものと触れ合う機会を提供する
お客様にお米づくりと生物多様性の大切さを知っていただくため、体験学習の提供も行っています。契約水田において生産者とお客様が一緒に行う「びっくりドンキー田んぼの生きもの調査」を開催し、実際に田んぼに入って生きものを観察する機会を提供しています。
また、自社施設である北海道恵庭市のえこりん村において、稲作体験や生きもの調査を実施し、子供たちが自然と触れ合う機会を提供しています。これらの取組を通じて、これまで延べ1万人以上のお客様が、田んぼの生きものと触れ合い、生物多様性の大切さを学んでいただきました。
さらに、オリジナルのアニメーション「ふゆみずタンゴ」を作成し、YouTube上で公開しています。「ふゆみずタンゴ」は、自然と共生できるお米作りの方法の1つ「ふゆみずたんぼ」と「タンゴ」をかけたのですが、子供でも分かりやすく水田の生きものの豊かさと楽しさが伝わるデジタルコンテンツとしてお楽しみください。
水田の生物多様性が保全される未来へ
最後に、生きもの調査の参加者の声を1つ紹介します。
田んぼに全く興味のなかった子どもが、虫や生きものを探す"目的"があることで、すっかり田んぼの"とりこ"になりました。大人も夢中でぬかるんだ土の中を突き進み、集中してしまうほど楽しかったです。次にびっくりドンキーでお米を食べる時は、今までになかった話題で盛り上がること間違いなしです!
びっくりドンキーでのお食事を通して、水田の生物多様性が保全される未来に向けて、生産者の方々との連携を含め、これからも活動を継続していきます。
グッドライフが当たり前の食事を提供し、より良い水田を守り育むお手伝いができるようなレストランを目指して、「この一皿に、たいせつなこと、ひとつずつ」
これからもびっくりドンキーをよろしくお願いいたします。
環境大臣政務官を務める五十嵐清氏から表彰される株式会社アレフの高田あかね氏と荒木洋美氏