ここから本文です。

上高地利用動態調査

交通調査

 上高地では昭和50年からマイカー規制が実施され、今ではマイカーによる渋滞はありませんが、夏や紅葉シーズンは観光バスによる渋滞が発生するようになっています。それを解決するため平成16年より混雑が予想される日に観光バス規制が行われるようになりました。上高地自然保護官事務所では、規制の効果や規制日の設定が適しているかどうかなどを調べるため交通調査を行っています。

写真:沢渡駐車場で路線バスへの乗換に要する時間を調べる調査員
[沢渡駐車場で路線バスへの乗換に要する時間を調べる調査員]

冬期利用動態調査

 上高地は4月〜11月までのシーズンを終えた後、約5ヶ月の間冬期閉鎖され旅館など施設も営業を終了します。過去、冬の上高地に入る人は冬山登山者ぐらいで、道中は雪崩などの危険もあり一般の人が気軽に行ける場所ではありませんでしたが、平成9年に安房トンネルが開通し、国道158号線が通年通行可能になったことで交通アクセスが格段に良くなり、冬山登山者だけでなく日帰りで冬の上高地をトレッキングするという人が急増しています。現在ではトレッキングツアーが企画されるなど大勢のグループでの散策も行われていますが、冬山の経験のない人が気軽に入山している状況を危険視する声や、歩道以外の場所を歩いたりするため湿原や野生動物への悪影響を心配する声が出ています。
 上高地自然保護官事務所では冬期の上高地がどのように利用されているのか、現地調査やアンケートなどを行い現状把握し、今後の冬期利用と自然保護のあり方を検討しています。

写真:上高地冬期入山者
[上高地冬期入山者]

写真:冬期入山者にアンケートを行う調査員
[冬期入山者にアンケートを行う調査員]

北アルプス(北部地域)植生復元及び外来種対策事業

 立山黒部アルペンルートの弥陀ヶ原周辺は高山植物の宝庫で、チングルマやワタスゲなどが群生し、歩くアルペンルートのコースとしても人気の場所です。この弥陀ヶ原から桂台沿線及び称名滝周辺の外来植物の除去を行っています。
 外来植物は繁殖力が強く高山植物の生長を妨げたり、在来種と交雑するなど、多様性を低下させる恐れがあります。除去を行う植物は、セイヨウタンポポ、オオバコ、クローバーなどです。ナチュラリストの指導の元、周囲の植生に配慮しながら除去活動を行い、除去した植物は種類毎に数量を計り記録します。
 外来植物の除去は、範囲が広いため継続的な取り組みが必要です。環境省と富山県では「外来植物除去のちらし」を作成配布することで、広く普及啓発活動を行っています。

上高地野生動物対策事業

 上高地は2000〜3000m級の山々に囲まれた標高1500mの盆地で、原生に近い自然を保っており様々な動植物が生息していますが、ツキノワグマやニホンザルなど適切に対応すべき動物も生息しています。近年ニホンザルが人慣れし人との距離が非常に近くなってきており、また人を恐れないツキノワグマが餌を探して歩道近くまで出てくるなど、野生動物と人とが接触する機会が多くなり、何らかのトラブルが発生する可能性が出てきています。上高地自然保護官事務所では、公園利用者の安全を確保するため、また野生動物が餌付けや生ゴミ等によって本来の生活を乱されることのないよう、野生動物対策事業として調査、追い払い、地元事業者への説明、公園利用者への啓蒙等を行っています。
 近年ではニホンザルが歩道上や施設近くに出没し、通行する人を威嚇するなどの行動も見られています。これは人の食物に餌付いているわけではありませんが、長い期間保護地域であるため世代が変わるごとに人への警戒心を無くしているものと思われます。人とサルが同じ場所にいるとトラブル発生の可能性があり、お互いの領域をはっきりと区別させるため、上高地地域が団結し「サル監視員」となって歩道上や施設近くに出没したサルの追い払いを行っています。

写真:歩道に出てきたサル
[歩道に出てきたサル]