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省エネ型自然冷媒機器導入企業担当者インタビュー集
(流通・小売)

株式会社東急百貨店株式会社東急百貨店

  • 環境配慮型ビルとして建設された渋谷ヒカリエへの出店にともない、CO2ショーケースを導入。
  • 高層ビルであること、機器の設置スペースが限られることから、水冷式の省エネ型自然冷媒機器を日本で初めて導入。
  • 冷却水温度による性能への影響などについてデータ取得・検証を行い、安定稼動を実現。
  • 熱交換後の冷却水の利用など、技術者との意見交換により更なるアイデアを得ることが期待される。
株式会社東急百貨店

平成24年4月にオープンした渋谷ヒカリエ。その中の東急百貨店が運営する商業施設「ShinQs(シンクス)」には、これまでにない「初」が多々ある。そのひとつが国内初の「水冷式自然冷媒冷凍機システム」の導入である。都市型商業施設の場合、室外機を屋外に設置することが困難であったが、水冷式*1とすることで課題を克服、現在も稼働している。

-省エネ型自然冷媒機器を導入した経緯についてお聞かせください-

渋谷ヒカリエはオフィスや商業施設、劇場などで構成される高層複合施設で、東急百貨店はその中の中核となる商業施設「ShinQs」*2を出店しています。

東急百貨店は、渋谷に「本店」と「東横店」の2店舗を展開していますが、旗艦店である「東横店」の一部を改装するにあたり、売上の減少をどのようにヘッジするかが課題でした。そこで渋谷ヒカリエに商業施設を導入する計画が明らかになった段階で、「東急百貨店だからこそできること」、「東急百貨店だからこそ提供できる価値」をデベロッパーに提案、その後、商業施設として出店することとなりました。

渋谷ヒカリエが立地する地域は「都市再生緊急整備地域」であり、区域での開発にあたっては様々な要件が規定されています。この中には当然ながら環境要件も含まれています。例えば、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)*3はもちろん、東京都のまちづくり条例への対応も必要です。こういった背景もあり、渋谷ヒカリエは環境配慮型ビルとなっています。入居するテナント企業としての責務もありますので、東急百貨店もしっかりとした環境対策を実施することにしました。具体的には平成24年4月、自然冷媒冷凍冷蔵機システムの導入のほか、オールLEDの導入、発電床の試行、電気を使用しない自動ドアの導入など、あらゆる取り組みを実施しました。

-導入時の課題としてはどのようなものがありますか-

百貨店の商売特性かもしれませんが、設備は商業事業者が所有するパターンと、テナントが所有するパターン、さらに費用負担を案分するパターンがあります。今回導入した省エネ型自然冷媒機器は補助事業であったため、東急百貨店が費用の全額を負担しました。従来の冷凍冷蔵機システムを導入する場合と比較すると、高価であり、補助金を活用できなければ、実現できなかったと考えています。

また、技術的な課題もあります。一般的に高層ビルで使用される設備は、「水冷式」が主ですが、自然冷媒機器の場合、空冷式が主となります。空冷式は室外機を設置する必要がありますが、渋谷ヒカリエの場合、高層ビルであること、かつ設置スペースも限られていることから室外機を置く場所がありません。水冷式の自然冷媒機器は上市されていませんでしたので、メーカーと協力して製品化を進めました。

また水冷式ですので、水温によってCOP(Coefficient Of Performance;成績係数)は変化します。設備メーカーの機器統合監視システムが付いており、データを取得することができますので、どのように運用すればCOPがどう変化するかについても同時に細かく検証を行っていきました。そのため、今では安定したパフォーマンスが出せるようになっています。設備単位で運用するのではなく、現存する設備全てを一体的に運用することで効率性は高まります。

また、安全性の担保は課題のひとつとして懸念されました。当時、安全性の基準がありませんでしたので、メーカーと協議しながら設備の導入を進めました。バックヤードにはCO2漏洩検知器を導入するなど、不測の事態に備えて、セキュリティ対策も十分に施しました。

-導入したことによる効果としてはどのようなものがありますか-

イメージ:株式会社東急百貨店機器当初から、渋谷ヒカリエに出店する意義が重視されていました。渋谷ヒカリエに出店するからには、「日本初」、「世界初」という取り組みを実践しなければ価値はないとも考えており、サービスも、商品も、施設も、環境も、いまだどこの店舗でも実施したことがないことをやろうという方針がありました。水冷式省エネ型自然冷媒機器の導入は初の取り組みです。経営陣は渋谷ヒカリエに出店する意義に合致した環境への取り組みとしてきちんと理解してくれました。

また、環境省主催の「省エネ・照明デザインアワード2012」の商業・宿泊施設部門でグランプリを受賞しました。環境を意識しているお客様が多いのは事実だと思いますし、企業の視察も多く受け入れています。表立ったPR活動は積極的には行っていませんし、“知っている人は知っている”ことでいいと考えていますが、今後機会があれば情報発信をしていきたいと思います。

-普及のためには何が必要でしょうか-

やはりコストが下がらなければ普及は難しいと考えています。特に百貨店の場合、水冷式がメインになります。駅前などの立地産業ですので、外に室外機を設置するスペースを確保することはコスト的には難しいという状況です。この点は地方のGMS(総合スーパー)やコンビニエンスストアなど広い敷地を確保している業態とは大きく異なります。また、「デパ地下」という名前の通り、冷凍冷蔵ショーケースは地下にあります。空冷式の設備の場合、冷凍機を通じて熱放射を行いますが、地下で熱放射はできません。「デパ地下」という業態には、水冷式がもっとも合致します。ただし、まだまだコストが高いので、普及のためにも導入コストが抑えられることを期待します。

-導入を検討されている事業者へのアドバイスをお願いします-

イメージ:株式会社東急百貨店機器室外機を設置する制約がある建物では、水冷式も選択肢となります。また、寒冷地では外気が低いのでより効果があると考えます。なお、渋谷ヒカリエでは、HFC水冷式冷凍機と混在しておりますが、全て自然冷媒機器を導入した場合、冷却水温度を下限まで下げることにより更なるCOP改善=省エネ化が図れます。

また、今回のプロジェクトに参加頂いた技術者の方々との交流により、熱交換した冷却水の熱利用などの可能性など、色々なアイデアが出ております。技術者との意見交換などはユーザー側にも非常に新鮮な体験になると思います。一方、水冷式のデメリットを挙げておくと、空冷式に比べて手間がかかる点があります。各設備(冷却塔・循環ポンプ)の導入とメンテナンスにかかる手間は、空冷式に比べると大きいです。この点につきましては、施設管理者との協力関係が重要になると考えます。

さらに自然冷媒機器は、フロン排出抑制法の対象外ということで、事業者としてのフロン管理が非常に楽になると考えます。 今後は自然冷媒機器のニーズが高まり、導入数が増えることによって、対応するメーカーも増えれば、各社の競争によりコスト削減につながり自然冷媒機器の更なる拡大が図れるといえるのではないでしょうか。

*1 高温高圧状態となった冷媒を液化するための冷却方法のひとつ。
冷媒を水で冷却する水冷式の自然冷媒機器は、「これまで冷凍機の屋外の設置場所の確保が難しかった都市部のショッピングセンターや商業施設・ビル内にある店舗に適しており、都市部の環境配慮店舗の実現に貢献することが可能(パナソニックホームページより)」となる。

*2 渋谷ヒカリエの地下3Fから地上5Fの8フロアで構成され、新しいショッピングを提案する商業施設「ShinQs」

*3 建築物の省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステムである
(一般財団法人建築環境・省エネルギー機構HPより抜粋)。

株式会社東急百貨店:中野 和夫

株式会社東急百貨店
中野 和夫

平成17年経営管理室渋谷開発業務を担当。平成23年から渋谷ヒカリエ出店準備室でShinQsの開業に携わる。その後東横店リモデル推進室を経て、平成25年から営業政策室店舗運営部長となり、現在に至る。

株式会社東急百貨店:田村 達也

田村 達也

平成17年総務部人事統括室 施設を担当。平成23年より渋谷ヒカリエ出店プロジェクトに参画。各店の熱源改修計画・省エネ計画に携わる。平成26年より総務部人事統括室施設担当課長となり、現在に至る。

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