このページの最初
本文へ
Logo mark
ここからグローバルナビゲーションです
事業者のみなさまへ
ここからページの本文

省エネ型自然冷媒機器導入企業担当者インタビュー集
(食品業界)

信越明星株式会社信越明星株式会社

  • 工場の省エネ化を進める上で、エネルギー使用量のおよそ8割を占めるフリーザーと冷凍庫での対策が重要となっている。
  • 当初はフロン類使用機器の導入を考えていたが、環境に配慮した技術がふんだんに盛り込まれている省エネ型自然冷媒機器を導入することとした。
  • 環境に対する取組を強化することで、従業員の誇りにつながっていると感じている。
  • 会社は信用が大切。お客様に「あの工場に任せておけば、品質もコンプライアンスも環境も全て大丈夫」と言ってもらえるよう、取組を強化していきたい。
信越明星株式会社

信越明星は、そばやうどん、ラーメンなどの冷凍麺、チルド麺を製造する企業である。「常にお客様からの信用、信頼をいただける企業でありたい」という想いの下、原料調達から生産・加工のプロセス全般に至るまで、安心・安全に配慮された設計が施されている。また、環境への配慮にも積極的に取り組んでおり、未来や次世代のために、企業として「この地球(ほし)を守る」ことをコンセプトに、自然エネルギーの導入や省エネ型自然冷媒製品の導入を進めている。

-信越明星の環境に対する取組について教えて下さい-

信越明星は、企業の姿勢として、環境に対する取組を推進してきた経緯があります。現在、工場は、本社工場と下塩尻工場がありますが、本社工場は、太陽光発電全量買取制度が導入される前から、200kWの発電設備を設置した実績があります。また、下塩尻工場は、「地球環境対応型の新工場」として、平成26年から稼働を始めました。目標は「工場のエネルギー使用量を30%削減すること」。工場全体として、いかに環境対策を実現できるか、目標実現のために様々な取組を進めています。

例えば、冷凍麺、チルド麺を製造しますので、大量の冷水を使用しますが、安全・品質に配慮した上で、地下水を有効活用しています。また、冷却水も、茹で上げた麺取の粗熱りに再利用するなど、水・熱の再利用を徹底しています。麺の製造機も、一般的にはチェーンやギアを使用するのですが、モーターでダイレクトにローラーを回す「ダイレクトドライブ」を採用しているため、一般的な製造機よりも電気抵抗が少なく、電力使用量の削減が達成できています。また、工場横にはメガソーラーがありますし、屋根の上にも180kWの太陽光発電を設置しています。

そして、製造工程の根幹にあるのが冷凍技術です。実は、工場のエネルギー使用量が多い装置は、フリーザーと冷凍庫です。そのため、この2つの設備における取組が一番のポイントになります。現在、工場の瞬間最大電力が230kWh/時であり、フリーザーが110kWh/月、冷凍庫が90kWh/時であることを考えますと、工場のエネルギー使用量のおよそ8割がフリーザーと冷凍庫で占められているという試算になります。今回、省エネ型自然冷媒機器を導入していますが、仮に通常の設備を入れていたとしたら、300-350kWh/月に達していたのではないでしょうか。

-フリーザーは製造工程においてどのように使用されるのでしょうか-

イメージ:信越明星株式会社まず、生産している製品は、チルド麺、冷凍麺などです。この工場では、1食200gの信州そばが1時間で5,000食生産されています。スーパーマーケットなどで販売されている信州そばをご家庭で食べられたことのある方も多いと思いますので、イメージしやすいのではないでしょうか。また、フードコートなどでも使用されていますので、知らないうちに私たちの商品を召し上がって頂いているかもしれませんね。

さて、フリーザーですが、麺を瞬間冷凍するために使用されます。茹でた麺は、まずはチラー水で冷やし、およそ8度の状態にします。その後、フリーザーを使って、わずか8分でマイナス20度まで冷却します。冷凍麺を長い間、安心して美味しく食べてもらうためには、殺菌が必要です。マイナス18度まで冷やすことで微生物の抑制ができますので、この工場では安全を見てマイナス20度まで冷却しています。

余談ですが、凍結時間はこれまで11分でした。冷凍技術の革新によって凍結までの時間が8分に削減されたことで省エネ効果は増しました。さらに嬉しいことに、麺の食感が明らかに改善されました。凍結までの時間が短いことで、麺と麺の間にある氷の粒子は小さくなり、麺を解凍した瞬間、これまでよりほぐれやすくなり、茹でる時間も短く、食感が良くなりました。

フリーザーは製造プロセスでの使用となりますが、一方、冷凍庫は24時間365日使用するものです。冷凍庫の省エネもやはり重要でして、装置そのものを省エネタイプにするということも大切ですが、さらに厚さ10cmの断熱材を使用し、冷凍効率を高める工夫も行っています。

-省エネ型自然冷媒製品を導入した経緯を教えてください-

現在、省エネ型自然冷媒機器を導入している工場は、信越明星下塩尻工場です。当初はフリーザーや冷凍庫については、フロン類(R404)を使用した設備の導入を考えていました。設備を調べていくと、省エネ型自然冷媒機器の存在に気づきました。世の中にたくさん出ている設備ではないこと、また環境に配慮した技術がふんだんに盛り込まれていることもあって、当初想定して価格よりもずいぶん高いことが分かりました。ただ、タイミングが良く、環境省の補助金を活用できましたので、“通常よりやや高いかな”と感じる程度の価格で導入することができました。

-価格以外に導入する際の課題はありましたか-

課題はさほどなかったように思います。

経営では、イニシャルコストとランニングコストのバランスを重視しています。いかにランニングコストを抑えるかがポイントという考えが根底にあります。信越明星は、年商23億円の企業ですが、下塩尻工場の建設に16億円の投資を行いました。来年は2期工事で、さらに4億円の追加投資を行います。中途半端な工場は作りたくないという思いがありましたし、期間はかかりますが、ランニングコストの抑制でイニシャルコストを吸収することができます。なお、環境省の補助金は総額約4,000万円でした。やはり、環境省の補助金を活用できなければ実現できなかったと思います。

なお、自然冷媒でも、昔のように冷媒としてアンモニアだけを何トンも使用している冷凍設備は、リスクもあり、導入時の課題になるように感じます。ただ、技術の進歩によって、CO2とアンモニアを使用する冷媒となり、アンモニアに起因する安全上のリスクも低減され、いまや課題にはならないと感じます。

-電力使用量以外の効果としてはどのようなものがありましたか-

省エネ型自然冷媒機器をはじめ、環境に対する取組を強化したことが従業員の誇りのひとつになっているように思います。これまで太陽光発電設備を導入したり、省エネ型自然冷媒機器を導入したりしても、特段、対外的に発表することはありませんでした。“自己PRの武器にしたいとも思っていなかった”というのが正直なところです。時代の動きが刻々と変化する中、環境への対応が求められるようになり、少しでも先手を打つことを重視するようになりました。対外的に発表しなくても、従業員は自社の姿勢を知るわけですから、環境にもやさしい企業ということで、誇りとなることも十分理解できます。

-今後の対応について教えて下さい-

イメージ:信越明星株式会社地球に優しい取組を行うという世の流れはこれからも変わらないと考えています。環境に優しい取組であれば、積極的に導入していきたいと考えています。いまの懸案事項としては、本社工場でフロン類(R404A)を使用していることです。当然ながらフロン類を漏洩させない取組は行っています。ただ、ひとつの企業の同じ工程で、フロン型設備(本社工場)と省エネ型自然冷媒機器(下塩尻工場)を保有しているケースは極めて珍しいと思っておいます。省エネ性能や環境影響度について設備間で比較ができますので、今後、データを取得、整理していきたいと思います。データを取得しつつ、設備は順次更新していきたいと思っています。

信越明星は、もともとインスタントラーメンの下請け工場でしたが、下請けをやめ、冷凍冷蔵温度帯での世界一のそば工場を目指すとしました。会社は信用が大切です。最近では大手スーパーマーケットが取引先のコンプライアンスの監査を行うようになってきました。環境への取組がひとつの審査項目になっています。これからこの動きはさらに拡がると考えています。プライベートブランド全盛時代、お客様に「あの工場に任せておけば、品質もコンプライアンスも環境も全て大丈夫」といって頂くためにも手綱を緩めること無く、取組を強化していきたいですね。

-導入を検討されていらっしゃる事業者へのアドバイスをお願いします-

これからデータを取得し、省エネ型自然冷媒機器の効果をきちんと説明していきたいと思っていますが、個人的には、「電気代が上がることはあっても下がることは無い」と考えていますし、お客様、取引先にとっても環境への配慮という視点はますます重視されています。早めに対応することを僭越ながらおすすめしたいと思います。

信越明星株式会社
代表取締役 大谷昌史

経歴
昭和61年 信越明星株式会社入社
昭和63年 外食事業部担当
平成5年 取締役 製造部門担当
平成9年 代表取締役就任
現在に至る。

ページの先頭へ