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省エネ型自然冷媒機器導入企業担当者インタビュー集
(物流・倉庫)

株式会社マルハニチロ物流株式会社マルハニチロ物流

  • 事業の根幹が揺るぎかねない2020年問題に早めに対応した結果が、中核拠点からの脱フロン化計画。
  • エネルギー使用量の約6割を占める冷凍機の省エネ化による効果は高い。
  • 長期にわたり冷凍冷蔵設備を使用する業界であり、早めに脱フロン化・省エネ化をすすめることが必要。
株式会社マルハニチロ物流

マルハニチロ物流は、世界中から集まってくるチルドやフローズン食品の鮮度を保ち、お客様に安心、安全と一緒に食品を届ける取組を実現する企業である。現在、全国の主要都市を中心に37の拠点を展開、そのネットワークをつなぐと“太平洋コールドベルト”が形成される。近年、輸配送網の核となる低温冷凍物流拠点に相次いで省エネ型自然冷媒機器を導入する。

-省エネ型自然冷媒機器の稼働状況について教えてください-

現在、省エネ型自然冷媒機器を導入した低温冷凍物流拠点が全国4ヶ所で稼働しています。現在、さらにもう1ヶ所で省エネ型自然冷媒機器の導入工事を進めていますので、年度内に全国5ヶ所の“自然冷媒物流拠点”が整備される予定です。なお、九州のいくつかの拠点では以前よりアンモニアを扱っております。これらの拠点も“自然冷媒物流拠点”と呼べないこともないのですが、より安全性が高く、省エネ性能の高い省エネ型自然冷媒機器へと随時切り替えていく予定です。

これまでの省エネ型自然冷媒機器の更新経歴を振り返ってみますと、平成23年に豊海物流センターA棟(収容能力:25,000トン)、平成24年に船橋物流センター(同14,000トン)、平成25年に名古屋・築港物流センター(同10,000トン弱)、六甲物流センター(同14,000トン弱)に省エネ型自然冷媒機器を導入してきました。なお、豊海物流センターA棟および船橋物流センターについては環境省の補助金を活用しています。名古屋・築港物流センター、六甲物流センターについては補助金を活用しておらず、全額自社投資となっています。

-省エネ型自然冷媒機器を導入した経緯についてお聞かせください-

省エネ型自然冷媒機器を導入した狙いとしては、まず、平成32年からHCFCの生産が禁止されるという規制の存在が挙げられます。社内では“2020年問題”として扱われていますが、規制の導入によって“冷凍”という事業の根幹がゆるぎかねないのであれば、事業継続リスクに対して早めに対応することが必要になります。マルハニチログループ全体としても「フロン類をできるだけ使わないように。脱フロンを進めるように」という方針が出されています。こういった方針がありますが、全ての設備を脱フロンとすることは現実的には難しいので、マルハニチロ物流の中核となる14の拠点から順次対応しており、平成32年に向けた対応を進めています。これは自社のホームページでも「脱フロン計画」として掲載されておりますが、2020年問題への対応を“やむを得ず”行うのではなく“事業体質改善の契機”と捉えて進めています。

脱フロンの次に、狙いとして電気使用量の削減が挙げられます。冷凍冷蔵倉庫の電力使用量のおよそ6割を冷凍機が占めていますので、冷凍機を省エネ型にすることの効果は大きいと考えています。

-省エネ型自然冷媒機器を導入する上での課題はありましたか-

イメージ:株式会社マルハニチロ物流機器全社方針として「脱フロン化計画」が掲げられていますので、導入することに対して特段課題となることはありませんでした。

ただし、補助金を活用する場合、年度内の執行が求められますので、設備導入までのスケジュールが極めてタイトになります。また、倉庫は常時稼働している状態で、新しい設備に更新しなければなりません。このように実際の導入における課題はありますが、全体の計画立案をしっかり練ることで十分対応可能だと思います。

-省エネ型自然冷媒機器を導入することで安全性に関する問題は生じますか-

省エネ型自然冷媒機器の場合、アンモニアが冷媒として使用されていますが、アンモニアの封入量は1台あたり25kg程度です。以前の設備がトン単位で封入されていたことを考えると、アンモニア使用量は格段に削減できており、安全性はかなり高くなっています。仮にアンモニアが漏れたとしても、設備の傍に除外設備も設置されており、外に漏れ出ないように設計されていますので、問題なく対応できます。また、周辺に住宅もありませんし、さらに冷凍機を屋上に配置するなどの工夫も行っていますので、以前ほどアンモニアの漏洩に関するリスクはありません。万が一、地震が起こっても、安全に停止するような設計も施されています。

-省エネ型自然冷媒機器を導入したことによってどのような効果がありましたか-

省エネ効果としては、拠点にもよりますが、平均して15-20%の電気使用量の削減を達成しました。会社の目標としては20%削減を掲げていますが、中には28%削減した拠点もあります。拠点によっては、冷凍機に年間5,000万円近くの電気代を支払っていますが、電気使用量が20%削減されたことで、年間1,000万円の電気代を削減できています。仮に省エネ型冷凍機が1.5億円とした場合、補助金も活用できますので、投資回収年は10年もかからない試算となります。

現在、補助金が活用できますので、毎年入れ替える計画を立てていますが、「補助金がとれなかったらどうするのか?」という声が上がる可能性は否定できません。ただし、「脱フロン化計画」が最優先事項ですので、補助金が無くても金融機関からの融資を含め、追加投資を行うことが基本的な考えです。

また、繰り返しになりますが、全社方針として「省エネ」よりも「脱フロン化」の方が優先順位は高いです。従来、豊海物流センターの冷凍機には、生産規制対象となる冷媒HCFC-22が3,100kg、船橋物流センターでは1,600kg封入されていました。省エネ型自然冷媒機器へと切り替えたことで、5トン-CO2近くのHCFC-22を削減できたことになります。
適切な冷媒の充塡ができなくなる可能性がある、機器が使えなくなるかもしれない、そのために自然冷媒を選択する、そして省エネも達成する、こういった発想で省エネ型自然冷媒機器の導入を進めています。

-脱フロン化の推進によってフロン使用量の削減以外にどのような効果がありましたか-

最近では、「フロン類を使っているような企業とは取引をしない」という企業があることは事実です。特に、グリーン調達を積極的に推進している企業の場合、「この拠点では、冷媒として何を使用していますか」と事前に質問されることもあります。環境に関心の高い企業と継続的な取引を進めていくには、自然冷媒機器を導入していることはポイントのひとつになります。

また、自然冷媒であっても、旧式の「アンモニア直膨式」の冷凍冷蔵倉庫を敬遠する企業もあります。これは安全性の観点から「アンモニア直膨式」は選択しないと判断されているのだと思います。 なお、このような取組は自社のホームページで紹介している程度であり、様々な媒体を活用して積極的に打ち出しているというわけではありません。そのため、取引のある企業以外からの反応はさほど多くはありません。

-最後に省エネ型自然冷媒機器の導入を目指す企業の方にアドバイスをお願いします-

イメージ:株式会社マルハニチロ物流機器冷凍冷蔵倉庫業界はさほど大きな業界ではありませんが、各社によってフロン類に対する問題の受け止め方は大きく異なると認識しています。また、冷凍冷蔵倉庫における償却期間は、建物が21年、冷凍冷蔵設備が12年であり、実際は20年以上使用する設備もあるなど、中長期的に設備を使用する業界です。また、他の業界に比べ、冷凍冷蔵という主要な技術において、技術革新が頻繁に起こるわけでもないと思います。さらに、最近では、保管する商品群にも変化があり、多頻度・小ロット単位での保管依頼が増加しており、設備や古いレイアウトでは市場ニーズに対応できない場合もあります。このような今後のマーケットや規制などの変遷といった外部環境の変化も的確に捉えつつ、早めに脱フロン化、省エネ化へと対応していくことが必要であると考えています。

また、実際に省エネ型自然冷媒機器を導入するには、全社の方針として脱フロンを進めることを明文化することが大切です。それがなければ、責任をもって推進することにはつながりません。併せて、その方針を向こう数年間、例えば具体的な3年計画として落としこみ、適宜その進捗を追っていくことも重要ではないでしょうか。

株式会社マルハニチロ物流:施設部 比浦 一徳

株式会社マルハニチロ物流
施設部 比浦 一徳

平成10年関東支社川崎地区施設担当。平成24年本社施設部部長となり全国の設備関連統括となる。平成23年度より開始した脱フロン化(自然冷媒の導入計画)計画を引き継ぎ。平成24年度〜平成25年度に3センターの脱フロン化計画に携わる。

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