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省エネ型自然冷媒機器導入企業担当者インタビュー集
(食品業界)

カルピス株式会社カルピス株式会社 岡山工場

  • 設備更新にあたり電気使用量削減を念頭に検討した結果、自然冷媒機器でも十分効果があると判断し、省エネ型自然冷媒機器を導入。
  • 原油換算で年間50kL、年間500万円程度のコスト削減を実現。変動費用抑制に貢献。
  • 省エネ型自然冷媒機器導入が新聞で取り上げられるなど、企業のイメージアップに貢献。
  • 工場見学の際、実際に省エネ型自然冷媒機器を紹介できることに意義を感じている。工場従業員の意識向上も。
カルピス株式会社

カルピス岡山工場では、カルピスをはじめ、数多くの乳飲料を生産している。乳酸菌を扱う商品が中心であるため、冷凍冷蔵設備の確かな運用は工場の生命線といえる。平成22年1月に省エネ型自然冷媒機器を導入、毎年数百万円のコスト削減効果をもたらし、投資回収は7年を見込む。

-省エネ型自然冷媒機器を導入した経緯についてお聞かせください-

まず、全社として、夜間蓄熱に切り替えることで、契約電力料金および従量料金(単価)の減額を推進するという動きがありました。そのため、冷水を安定した温度で供給でき、昼間の追いかけ運転も段階的に立ち上げることも可能で、さらに無人運転、保安検査が不要である冷凍冷蔵設備に入れ替えることを考えました。平成20年頃から本格的に検討を開始し、様々な冷凍冷蔵設備のメリット、デメリットを詳細に把握しました。使用する冷媒もフロン類(HFC)、フロンを使用しない自然冷媒(CO2やアンモニアなど)問わず、あらゆる設備を検討の対象としました。

その中で、ISO14001を導入し、全社として環境対策に積極的に取り組んでいたこと、自然冷媒でも十分にコスト削減効果が見込まれること、さらに環境省の補助金も活用できることなどを理由に、自然冷媒であるアンモニアを採用しました。なお、岡山工場とほぼ同時期に群馬工場でも省エネ型自然冷媒機器が導入されています。

-検討はどのような体制で行われたのでしょうか-

イメージ:カルピス岡山工場まずは岡山工場の技術グループが中心となって候補となる設備の検討を行いました。ただし、設備更新にかかる費用は高く、親会社*1の決裁が必要であったため、すぐに経営会議での議題となりました。経営層にも「環境に対して優しい製品を導入する」という意識があり、設備導入によるコスト削減効果も明らかでしたので、導入すること自体についてはスムーズに検討が進んだようです。

ただし、実際の導入までの調整は難しかった面もあります。当初計画していた設備更新時期が補助金申請時期と合わなかったため、補助金申請時期に合わせるべく社内稟議決裁は申請書の提出後に行いました。

当初の検討から導入まであしかけ2年を要しましたが、社内関連部門を巻き込みしっかり検討ができたこともあり、エネルギー性能は当初見込みどおりの効果を発揮しています。

-導入による効果とはどの程度でしょうか-

冷凍冷蔵設備の更新によって、電気代が大幅に削減されました。原油換算で年間50kLの削減、年間500万円程度の支出が抑制されています。冷媒としてのアンモニアはとても優秀だと感じています。工場単位で採算を上げるには、変動費の削減は必要ですので、電気代の削減は非常に大きな効果をもたらしています。

あわせて、企業のイメージアップにもつながっています。省エネ型自然冷媒機器を導入したことは新聞でも取り上げられました。環境に配慮した取り組みを実践する企業として、広報ならびに環境関連部署も対外的にPRしています。特にダイレクトに伝わるのは工場見学のタイミングです。お客様、それに小学生、親子などの一般生活者が工場見学にいらっしゃいますが、実際の設備を前にフロンを使用していない自然冷媒であることを紹介できることに意味があると感じています。また、工場従業員の環境に対する意識も向上したと思います。

-反対に、導入において危惧された点はありますか-

岡山工場の周辺には住宅が数多くあります。安全な生産を実現することは企業の責務であり、万が一アンモニア漏洩などの問題が発生した場合の対応を明確にし訓練しておくことが大変重要だと考えています。これまでもアンモニアを使用した冷凍冷蔵設備を導入しており、非常時の散水システムを完備していましたが、様々なリスクへの対応を改めて検討しました。

ただ、これまでトン単位で使用していたアンモニアですが、新しい設備ではアンモニア使用量が200kg程度まで削減されています。アンモニアの使用量が減ったことで、万が一、漏洩した場合に生じるリスクもずいぶん低減されたと認識しています。同じ冷凍能力でも技術革新によって使用するアンモニアの量が大幅に削減されたことは安全性確保において安心材料となっています。また、アンモニアが漏洩しないよう、運用上の設計も細かく配慮されており、最近の設備は安全性が高いという特長があります。

一方で、いつ天災などが起こるかは誰にもわかりません。非常事態時には、従業員がきちんと対応できるよう、常日頃から漏洩時の対応訓練にも努めています。

-今後の取組について-

ペットボトル用のお茶を作る時、温かいお茶を冷却するための工程として「調合冷却工程」があります。現在、調合工程では、冷凍冷蔵設備の一部にフロン類が使用されています。保有しているフロン類の量は少なく、追加充填することも無いのですが、設備自体の老朽が進んでいることもあって、今後省エネ型自然冷媒機器への切り替えを進めていく予定です。

-省エネ型自然冷媒機器の導入を目指す企業へのアドバイス-

イメージ:カルピス岡山工場環境にやさしい設備を選ぶかどうかは会社の方針によるところかと思います。事業所単位で検討しても会社の方針と整合性が取れず、最終的に導入を断念せざるを得ないこともありえます。なるべく早い段階から経営層を巻き込み、現場から適宜情報を提供し、経営層が意思決定できる準備を行うことが有効ではないでしょうか。

また、まだまだ導入数の少ない省エネ型自然冷媒機器は、市場原理からいえば、どうしても価格は高くなっています。岡山工場で導入した際に活用した当時の補助金では、フロン設備ではなく省エネ型自然冷媒機器を選択した場合に生じる追加支出分のいくらかを環境省の補助金で相殺することができるという仕組みでした。それでも、追加支出分を完全に相殺することはできませんので、経営層に導入する理由を説明する必要がありました。補助金で相殺できない分があっても、それ以上に対外PR、従業員の環境教育などにおいて効果を発揮することをきちんと伝えることも重要だと思います。

*1 カルピスは当時味の素グループであった。

カルピス株式会社

カルピス株式会社
和田聡太

平成11年にカルピス社に入社して以来、群馬、相模(平成20年閉鎖)、岡山の国内工場、タイの海外工場と工場を渡り歩いています。技術・品質管理担当として生産設備管理、ユーティリティ管理の業務に就いています。

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