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省エネ改修の実践事例

ビルオーナーによる取組み事例/黒龍堂芝公園ビル

事例3黒龍堂芝公園ビル

設備等改修工事を通じたビル資産価値向上

省エネ改修 成功のポイント

  • 市場競争力の確保を目的とした「資産価値向上計画」に基づく設備等改修工事
  • 改修工事の効果を最大化するための性能検証(コミッショニング)の徹底
  • 設計者・施工者・管理者との連携による「ソフト力」の強化
この写真は株式会社黒龍堂ビル外観です。
この写真は同ビルホールです。
この写真は同ビル内廊下です。
事業主体 株式会社黒龍堂
ビル概要 東京都港区、1970年竣工、1978年増築。延床面積9,497m2。地上9F、地下1F
省エネ改修内容 照明FHF化、節電対策、デシカント空調、窓の断熱化、BEMS導入等

1. 改修工事の概要

株式会社黒龍堂は創業102年目を迎えた化粧品メーカーであり、化粧品事業以外にも、ホテル事業や不動産賃貸事業を展開している。黒龍堂芝公園ビルは、1970年に竣工した延床面積10,000m2程度の中規模ビルである。築20~25年が経過した頃から設備の更新需要が高まり、また、個別空調等へのテナントニーズが高まったことから、平成6年からリニューアル計画の立案に着手した。特に、当時は都内で大規模再開発が目白押しで(品川インターシティ、六本木ヒルズ等)、ビルの大量供給とそれに伴う競争激化が2003年問題として話題になっており、競争に負けないための戦略的な改修、すなわち「ビルの資産価値を高め、有効に資産運用ができる」を目指した。

2. 省エネ改修成功のポイント

市場競争力の確保を目的とした「資産価値向上計画」に基づく設備等改修工事

  • リニューアル計画の立案に際しては、建物管理データ、工事履歴といった日常の記録の検討に加え、空調・衛生設備系の配管診断、テナントへの聞き取り調査等を実施し、その結果を基に、空調の改善に重点を置いたリニューアル計画を策定した。
  • 空調設備の改修は全3期の対応とし、熱源、空調機の更新をⅠ、Ⅱ期におこない、Ⅲ期にはVAV導入による個別制御化や、バックヤード系の設備だけでなく、水回り(トイレ、給湯室)の全面更新工事を加える予定であった。しかし、Ⅲ期の計画策定にあたっては、2003年問題を見越して、市場競争力の確保を目的とした「資産価値向上計画」として再企画し、市場におけるポジションの確認と、目指すべき方向の再定義をおこなった。
  • 具体的には、当時の最高グレードのビルのスペックを4点満点に設定し、当ビルのグレードを相対的に評価したものである。リニューアル計画においては、立地、建物規模、想定賃料等の事業性を総合的に勘案して、各項目3点を目標値とした。
  • その結果、下記の資産価値向上計画に示す通り、劣化更新を基礎として、さらなる価値向上として「イメージの向上」「安全性の向上」「機能性の向上」およびこれら総合的な取り組みの結果として「省エネ」を図る計画を策定した。
この図は資産価値向上計画の概要を表しています。

図.資産価値向上計画の概要

この図は、改修前後による改修項目の評価を表してします。

図.改修前後による評価(左:改修前、右:改修後)

改修工事の効果を最大化するための性能検証(コミッショニング)の徹底

  • 改修工事の効果を最大化するためには、改修後の継続的な運用改善が必要であり、そのためには性能検証(コミッショニング)が重要である。平成18年4月に竣工検査を終えて、以後、約1年間にわたる性能検証を実施した。
  • エネルギー消費量、熱源運転状況、室内環境、テナントヒアリング、空調課金といった検証をおこない、検証結果を実務へのフィードバックというPDCAサイクルを繰り返し、改修前は570kWの契約電力が、一年後には約480kW、さらにその翌年には約430kW(改修前の約25%減)まで削減した。
  • また、設備の設計意図や運転方法について、設計者が管理会社に伝達することも重要である。このために、従来の竣工図に、運転方法等を添え書きすることを設計者に依頼した。これが設備運転において支援ツールとなり、運転の微妙なさじ加減、暗黙知を管理者に確実に伝達し、より効率的な運用を実現できた。

設計者・施工者・管理者との連携による「ソフト力」の強化

  • 設備を入れ替えただけでは省エネ効果は限定的で、PDCAを回して継続的に運用改善(空調時間、設定温度等)する人材・組織等の「ソフト力」が必要である。
  • 黒龍堂ビルでは、当事業部と、改修を担当した清水建設、外部アドバイザーによりチームを組成し、改修計画から運用改善まで徹底することができた。その際には、設備図面に運転方法を記載してもらうなど、設計者と管理者のコミュニケーションや意図伝達が確実におこなわれるよう工夫した。
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