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省エネ改修とは

省エネ改修の費用対効果

中小規模のビルでは、大型の業務ビルに比べて、省エネルギー対策や温暖化対策が遅れていると言われています。このため環境省では、平成25年度から27年度にかけて、中小ビルの改修による省エネや温暖化対策のポテンシャルや、その費用対効果について、診断機関を実際のビルに派遣して診断を行う「中小ビル改修効果モデル事業を実施しました。
以下ではその事業の結果を元に、省エネルギー対策のポテンシャルの存在や、費用対効果について簡単に紹介します。中小ビル改修効果モデル事業に関して詳細にまとめた報告書も併せて御覧ください。

省エネルギー対策のポテンシャルとその効果

1. 既存中小ビルにおける省エネルギー改修の実施余地

中小ビル改修効果モデル事業では、既存の中小ビルにおいてどのような省エネルギー改修の実施が可能であるのかを把握する診断が行われました。
以下の図1は、この診断の中で、各省エネルギー改修の分野について、どの程度の割合のビルに対策が実施可能であると診断されたかを示しています。例えば、ランプ・照明器具の更新等に関する分野では80%のビルが、熱源機の更新等による対策では40%以上のビルにおいて、各分野の省エネルギー対策が可能であると診断されています。
このページをご覧の皆様の所有するビルにも、省エネルギー改修のポテンシャルが眠っているかも知れません。省エネルギー改修の診断は、国や自治体の制度の活用も可能ですので、省エネ改修への補助制度及び支援ツールを参照に、ぜひ一度診断を実施しましょう。

この図は中小ビル改修効果モデル事業で診断された省エネルギーの改修実施余地の結果を示しています。

図1 中小ビル改修効果モデル事業で診断された省エネルギー改修の実施余地

2. 省エネルギー改修にかかる費用

ここでは、省エネルギー対策に要する費用(イニシャルコスト)についてご紹介します。図2では、中小ビル改修効果モデル事業において診断された省エネルギー改修メニューについて、分野別の延床面積当たりの改修費用の平均値を示しています。

この図は省エネルギー改修における延床面積当たりのイニシャルコストを示しています。

図2 省エネルギー改修における延床面積当たりのイニシャルコスト
(中小ビル改修効果モデル事業における診断結果の平均値)

図2に見られるとおり、省エネルギー改修は、例えば2,000m2から3,000m2の規模のビルを想定すると、数百万円から大きなものでは数千万円の改修費用がかかります。このため、こうした対策を実施するためには、ビルの経営に照らして、入念な改修の計画を立てることが重要となります。

省エネルギー対策は、イニシャルコストはかかりますが、それによるランニングコストの削減や、温暖化対策の効果は大きなものとなり、省エネ改修の実践事例に見られるとおり、ビルのバリューアップにもつながります。是非とも長期的な視野で、ビル経営にも貢献する省エネルギー対策の計画を検討して下さい。
(なお、こうした対策には、省エネルギー目的の補助金や税制優遇制度を活用することも可能です。)

3. 運用対策による省エネ

省エネルギー対策の中には、改修工事を伴わない運用改善による対策も多数存在します。大きな費用(イニシャルコスト)を要さない運用改善による対策から省エネルギーに取り組むことも重要です。
表1は、中小ビル改修効果モデル事業の中で、診断対象ビルにおいて対策のポテンシャルを要すると見られた運用対策です。省エネルギー対策の診断を通じて、こうした対策への取り組みも検討してみてください。

熱源・搬送 ボイラの燃料空気比改善
蒸気ボイラの運転圧力の調整
ボイラ等の停止時間の電源遮断
温水出口温度の調整
冷温水出口温度の調整
冷温水出口温度の変更
冷却水設定温度の調整
熱源台数制御装置の運転発停順位の調整
冷温水ポンプの冷温水流量の調整
インバータ設定値の見直し
空調・換気 空調・換気運転時間の短縮
空調が不要な部屋の空調停止
駐車場換気設備のスケジュール運転
外気取り入れ量の縮小
温度センサーによる換気制御システム
冷暖房設定温度・湿度の緩和
ウォーミングアップ時の外気取入れ停止
外気冷房(中間期等の送風のみ運転)
コイル・フィルター、熱交換器の清掃
給排水 給湯設備のスケール除去
給排水ポンプの流量・圧力調整
給湯温度・循環水量の調整
給湯期間の短縮(冬期以外の給湯停止)
給湯期間の短縮(冬季以外の給湯停止)
照明・コンセント 不要照明・不要時間帯の消灯
パソコン等OA機器の待機電力削減
パソコン等のOA機器の待機電力削減
受変配電、発電 不要変圧器の遮断
昇降機 閑散期のエレベーターの一部停止
閉散期のエレベーターの一部停止
建物 総合的な省エネルギー制御機能

表1 中小ビル改修効果モデル事業においてポテンシャルが診断された運用対策の例

4. 省エネルギー改修による効果

省エネルギー改修による効果は、CO2削減による温暖化対策や、光熱費の削減によるランニングコストの削減につながります。図3と図4では、中小ビル改修効果モデル事業で診断された、延床面積当たりの光熱費削減額の平均値(円/m2・年)と、延床面積当たりCO2削減量の平均値(CO2-kg/m2・年)を示しています。

この図は延床面積当たりの光熱費削減額の平均値を示しています。

図3 延床面積当たりの光熱費削減額の平均値
(中小ビル改修効果モデル事業における診断結果)

この図は延床面積当たりのCO2削減量の平均値を示しています。

図4 延床面積当たりのCO2削減量の平均値
(中小ビル改修効果モデル事業における診断結果)

中小ビルにおける省エネルギー改修は、例えば2,000m2から3,000m2の規模のビルを想定すると、熱源や空調関係で年間に数百万円、照明関係で百万円程度、その他の対策でも数十万円の光熱費の削減につながることが見込まれます。

またCO2削減量で見ると、同様な規模のビルで換算して、年間十トン~数十トン-CO2の削減につながることが見込まれます。こうした対策が、我が国において多くの数を占める中小規模のビルで実現することができれば、温暖化対策への効果も非常に大きいものとなります。

この他、省エネルギー対策は、ビルのバリューアップにもつながります。省エネ改修に対するオーナーやテナントの意識にもあるとおり、省エネルギーは、必ずしもテナントの入居選定要件の上位には入りませんが、省エネ改修の実践事例に見られるとおり、室内空間の快適性能をはじめとするテナントへのサービス向上も兼ねることができることを意識することが大切です。

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