環境大臣賞 地域コミュニティ部門

受賞者紹介

第6回グッドライフアワード 環境大臣賞 地域コミュニティ部門

誰でも参加できる自然エネルギー
「相乗りくん」

NPO法人 上田市民エネルギー

第6回グッドライフアワード 環境大臣賞 地域コミュニティ部門 NPO法人 上田市民エネルギー メイン写真

受賞者紹介

第6回グッドライフアワード 環境大臣賞 地域コミュニティ部門

誰でも参加できる自然エネルギー
「相乗りくん」

NPO法人 上田市民エネルギー

空いている屋根を提供する「屋根オーナー」と、その屋根に設置する太陽光発電パネルに出資する「パネルオーナー」として市民が参加。2011年から始まった取組で、これまでに46カ所の屋根に約650kWの太陽光発電パネルを設置して、市民の出資額は1億2,000万円を超えています。

どんな活動?

たくさんの市民が参加して太陽光発電を増やす仕組み

相乗りくん1号機のT氏邸にて!

自然エネルギーの普及促進には賛同するものの、さまざまな条件で自宅の屋根には太陽光パネルが設置できないという方は少なくありません。長野県上田市のNPO法人『上田市民エネルギー』の「相乗りくん」は、太陽光発電に適した屋根などをもつ「屋根(土地)オーナー」と、そこに設置する太陽光発電パネルに出資する「パネルオーナー」の参加を募り、売電収入をシェアする仕組みです。

長野県(信州)は雪が多いというイメージがありますが、2000m級の山々に囲まれた盆地に位置する上田市周辺は晴天率が高く、太陽光発電に適した気候風土に恵まれています。

屋根オーナーの募集は、拠点がある上田市を中心とした東信(一部北信・中信)エリア限定です。取組の実施主体である上田市民エネルギーが設置したパネルの発電量などをモニターし、トラブルがあればメンテナンスに駆けつけられるよう、上田市から1時間半程度で行ける地域に限っているのです。また、日当たりが良く、一定の広さがあること、屋根の場合は強度などの条件が設定されています。

太陽光発電パネル設置に相乗りするパネルオーナーは、全国どこからでも参加が可能。出資する金額は10万円以上(以降5万円単位で自由に設定)で、契約期間は設置したパネルの規模によって、10年間または13年間に設定されています。パネルオーナーには出資した金額に応じた売電収入として還元。契約期間内に出資額以上の収入が得られる実績を積み重ねてきています。

※屋根の規模や条件によって仕組みはいくつかあります。

上田市民エネルギーが屋根オーナーとパネルオーナーのつなぎ役として、検討時から設置工事までのコーディネイト、発電開始後の売電収入の管理を行います。設置した相乗り分のパネルは、屋根オーナーと上田市民エネルギーとの契約終了後、屋根オーナーに引き渡されることになっています。参加する屋根オーナーやパネルオーナーが適切な利益を得つつ、相乗りくんという取組がビジネスとして成立するように工夫されているのです。

晴天率が高い上田市は太陽光発電に適しています。

環境大臣賞受賞を上田市長に報告。

活動のきっかけは?

東日本大震災を契機として市民の思いが集結

NPO法人 上田市民エネルギーが発足したのは2011年9月のこと。東日本大震災と原発事故をきっかけにして、市民の力で自然エネルギー活用(太陽光発電)を広げたいという思いから、屋根オーナーの協力を得て、パネルオーナーから集まったお金で太陽光発電パネルを設置していく「相乗りくん」というユニークなアイデアが結実しました。

上田市民エネルギー理事長の藤川まゆみさん

NPOの理事長であり、各発電所の発電量チェックや、新しい発電所を探したり、パネルオーナーを募集するなどの実務を行っている藤川まゆみさんは、もともと太陽光発電やファンド事業に詳しいわけではなく、電気の単位のkWとkWhの区別もつかなかったそうです。でも、東日本大震災以前から自分たちが使うエネルギーについて関心があり、2007年頃から原発や自然エネルギーをテーマとした映画の上映会や勉強会などを企画し活動していました。

なんとか市民が力を合わせて自然エネルギーを増やす方法はないものか。藤川さんたちは思いを巡らせながら「考えているだけでは1Wも生まれない」という無力感を抱えていました。そんな中、長野県が開催したエネルギー協議会に3人の仲間と参加した帰り道。「上田は晴天率が高いし、かつて養蚕業をしていた家に南向きの大きな屋根が多い。この屋根に、みんなでお金を出し合って相乗りすればいいじゃないか!」というアイデアが生まれたのです。

2011年11月、「みんなで相乗りして市民発電所を作ろう!と呼びかけたに第1回参加説明会には、それまでの活動でつながった方々を中心にその場で何人もの参加申込みがあり、2012年3月には約10kWの出力をもつ相乗りくん1号機が発電を開始することができました。

2019年6月までに、46カ所に約650kW分の太陽光発電パネルを設置。約230人のパネルオーナーが集まり、出資額の合計は1億2000万円を超えています。「まずは私たち自身が動かなければと思って始めてみると、同じように自分にできることを探している人たちがたくさんいて、仲間の輪が広がっていきました」と藤川さん。自分にできることを考え、行動を起こすことの大切さを実感しているそうです。

成功のポイントは?

誰でも参加しやすい仕組みへの共感が広がっています

太陽光発電パネルを、個人が自分だけで設置するには大きな初期投資が必要です。また、集合住宅に住んでいるなど、設置したくてもできない人もいます。「相乗りくん」は、太陽光発電を始めるためのハードルを、みんなの力を合わせて乗り越える仕組みであることが、共感の輪が広がっていった大きな理由になっています。

屋根オーナーは、相乗り分のパネルを一緒に設置することで初期投資の単価が割安になったり、または初期投資なしでパネルを設置できる参加もあります。、契約期間終了後には全てのパネルが自分のものになるというメリットがあります。パネルオーナーは全国どこからでも参加が可能。10万円からという現実的な金額の投資で太陽光発電に参加することができ、10年間で投資費用プラスアルファの売電収入を得ることが期待できます。また、NPOの会員となり、ソーラーシェアリング(営農型発電設備)の田んぼなどで開催されるイベントに参加する「楽しみ」も得られます。

ソーラーシェアリングも行っています。

パネルオーナーのおよそ3分の1は地元、上田市民の方ですが、長野県内の他地域や首都圏からの参加者も多く、青森や広島、海外から参加している方もいるそうです。

FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の買い取り価格は次第に下がってきましたが、上田市民エネルギーではソーラーシェアリングで発電した電気を近隣の施設で使えないか模索したり、電力会社の電気代単価より買い取り価格のほうが安い施設(従量電灯契約の中規模施設など)を対象に「安い電気を使える相乗りくん」の具体化を進めるなど、適切なベネフィットを得ながら続けていける活動とするアイデアの実現に、積極的に取り組んでいます。

レポート!

参加者のみなさんの誇らしい笑顔が印象的でした!

参加者のみなさんに「手応え」を伺いました。

2019年1月、屋根オーナーやパネルオーナーのみなさんが集まる新年イベントを取材に伺いました。ご家族での参加者も多く、30名ほどが集まってソーラーシェアリング施設である「とっこSUN発電所」や、かつて養蚕業をやっていたお宅の大きな屋根に設置された相乗りくん1号機を見学。夕方からは上田市内の飲食店で親睦のための新年会が開催されました。

「たまごの駅発電所(養鶏組合のアンテナショップの屋根に設置)など、2カ所のパネルに出資しています。銀行預金よりいい率が期待できるし、運用のスタイルに意義と安心感があるので、子供のために将来の資金をプールしています」(家族5人でご参加の森下さん)

「自宅には15年以上前から太陽熱温水器を設置して太陽エネルギーの利用は実践しています。藤川さんたちと一緒にNPOを立ち上げて、エネルギー問題を勉強しつつ、自分たちにできることを考えました。自分自身もパネルオーナーとして参加して、地域でお金を回せることの大切さを実感しています」(NPO設立メンバーの一人である前田さん)

「相乗りくんでは、4カ所のパネルに出資しています。とくにソーラーシェアリングに興味があって、千葉県匝瑳市でソーラーシェアリングのパネルオーナーにも出資してます。上田市でのイベントに参加する費用は、売電収入から出せますよ」(千葉県から参加の石塚さん)

「屋根の形が悪く太陽光発電ができなかったのですが、地元の新聞で相乗りくんを知り、パネルオーナーとして参加しています。毎月、きちんと発電量などのレポートが届くので、自然エネルギーの普及に貢献できている実感があります」(上田市内から参加の藤松さん)

「上田市のお隣にある東御市に移住してカフェを経営しています。屋根オーナーとして、4.4kWのパネルを設置しました。子供が3人いるのですが、発電量などを見ながら自然エネルギーの大切さを学ぶ機会にもなっています」(東御市から参加の小林さん)

「自宅は山間にあって日照時間が短いので、パネルオーナーとして参加しています。首都圏からUターンしてきた息子が、小さなソーラーパネルとバッテリーで電気を活用していて、電気の便利さや太陽光のありがたさを実感します。繫がることでより大きな太陽光発電所を実現できる相乗りくんは、とても有意義な取組だと思います」(上田市の古川さん)

発電所を見学しながら、また新年会の席などで参加者の方々からお話しを伺いました。環境のため、自然エネルギー普及のために自分にできることをきちんと考え、実際に活動に参加しているのですから当然といえば当然ですが、みなさんそれぞれにレベルの高い市民意識をお持ちであることが伺えました。

「相乗りくんをスタートさせてこの8年間に、なにか行動したいが、自分には何ができるだろうと、探している人が多いと実感し、市民が共同で取り組める仕組みを提案することに意義があると感じています。私たちが太陽光発電パネルを設置できる地域は長野県に限定していますが、全国のさまざまな地域で、その地域の特性に合った『相乗りくん』のような仕組みが広がっていくといいですね」と藤川さん。今後の展開としては、行政や地元企業と連携して地域電力会社を設立し、地域で使う電力や電力料金をきちんと地域で循環させる仕組みを始めることを目指しているそうです。

市民の力を繋げてエネルギーを生み出す相乗りくん。NPOの理事長である藤川さんはもちろん、参加者のみなさんの賢明な「エネルギー」の力を実感できる取材となりました。

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