課題名

B-1 地球温暖化に係る二酸化炭素・炭素循環に関する研究

課題代表者名

袴田 共之 (農林水産省農業環境技術研究所地球環境研究チーム)

研究期間

平成5−7年度

合計予算額

267,636千円 (うち7年度 95,168千円)

研究体制

(1) 海洋沈降粒子による炭素の沈降フラックスと環境因子に関する研究

(環境庁国立環境研究所、委託:東京大学、名古屋大学)

(2) 海洋堆積粒子形成過程とそれに伴う炭素循環及び環境因子に関する研究

(通商産業省地質調査所)

(3) 農業生態系における炭素循環・収支の定量的解析

   畑地における炭素循環・収支の定量的解析(農林水産省農業環境技術研究所)

  水田における炭素循環・収支の定量的解析(農林水産省農業環境技術研究所)

   農用林における炭素循環・収支の定量的解析(農林水産省農業環境技術研究所)

  草地における炭素循環・収支の定量的解析(農林水産省草地試験場)

(4) 温帯地域生態系における炭素収支の定量的解析(農林水産省農業環境技術研究所)

(5) 冷温帯林生態系におけるササ型林床植生の炭素循環の定量的解析

(農林水産省農業環境技術研究所、委託:岐阜大学)

(6) 亜寒帯林生態系における炭素循環・収支の定量的解析

(農林水産省農業環境技術研究所、委託:広島大学)

(7) 土壌生態系における微生物群集をめぐる炭素循環の定量的解析

   温帯域における土壌圏微生物群集をめぐる炭素循環の定量的解析(環境庁国立環境研究所)

  亜寒帯林における土壌圏微生物群集をめぐる炭素循環の定量的解析

(農林水産省農業環境技術研究所、委託:広島大学)

(8) 温帯林における炭素循環過程の直接測定とそのモデル化に関する研究

(通商産業省資源環境技術総合研究所)

(9) 局地二酸化炭素循環のモデル開発に関する研究(運輸省気象研究所、委託:筑波大学)

(10)同位体比による二酸化炭素の大気・海洋・生物圏間の交換に関する研究

(環境庁国立環境研究所)

研究概要

 大気、海洋、温帯から亜寒帯にかけての陸域の各領域またはそれらの複合領域について、二酸化炭素・炭素の循環過程を明らかにするため、代表的な生態系または地域を選定し、二酸化炭素・炭素の循環過程を調査しモデリンクを考慮しつつ定量的解析を行った。

研究成果

 以下の文頭の番号は、研究体制に示した各課題の番号と対応する。

(1)相模舟状海盆を中心にセジメント・トラップ実験を行った結果、8431m深に負荷される粒子は、陸源ケイ素を主とする陸起源粒子と、有機物の負荷に関わる沈降粒子とに分けられ、後者は沿岸域に堆積した植物プランクトン有機物が海溝斜面に沿って負荷されると判断された。

(2)西太平洋中緯度域におけるセジメント・トラップ観測の結果、有光層・堆積物表層で炭素が分解する様相が明らかとなり、基礎生物生産力の高い地域の方が生物固定された粒子状炭素の堆積物への固定化率が高い(西カロン海盆:0.1%、オントンジャワ海台:0.08%等)ことが判明した。

(3)農業生態系における炭素循環・収支に関し:

 .汽張泪ぅ癲Ε灰泪張米麑唳酥の炭素収支は放出が多い結果を示したが、年次間変動は気温、降水量より、すきこみ量に左右された。放棄畑では長期間放棄するほど炭素放出が減少した。

 群落チャンバー法による水田の年炭素収支は、ha当り12tonの光合成及び0.1tonの雨水等に対し、CO2CH45及び0.1tonの放出、5tonの収穫、0.3tonの浸出で、都合1.7tonの蓄積。

 G斥冦咾砲ける炭素蓄積速度は、管理区(20年生;落葉下草持ち出し)、放置区(20年生)、自然区(50年生)で、植物体が3.73.52.2tC/ha/yr、土壌が-0.81.31.5tC/ha/yr

 け価蟯慄,砲茲蠡腟ぁ殃牧草地間の1日当りCO2収支を測定した結果、牧草群落への吸収が大気への放出を毎季上回る年(冷夏年)と夏季に放出が上回る年(猛暑年)等があった。

(4)温帯地域生態系として茨城県恋瀬川流域を対象にランドサットTMデータと簡易モデルにより炭素収支を推定した結果、各土地利用区分内の変動が大きかったが、平均値としては畑、広葉樹林は炭素を放出し、水田・針葉樹林は吸収し、全体では炭素のシンクとなっていた。

(5)乗鞍岳西斜面上の冷温帯林において、林床を占めるクマイザサ群落を中心に炭素収支の特徴を調査した。ササ群落の現存量、純同化量は各5.36(地上/地下比1.14)、1.09tC/ha。土壌からの放出量は6.23tC/ha/yrで、厳冬積雪下でも1.13gCO2/m2/dayが認められた。

(6)カナダのクロトウヒ林における夏季の調査の結果、冷温帯林に比べ循環速度が遅く、しかも炭素が土壌表層に集中している特徴が明らかとなった。土壌の炭素吸収量は0.10.2tC/ha/yrであり、これはfertilization効果を仮定したモデル計算結果とよく一致した。

(7)土壌生態系における微生物群集をめぐる炭素循環の定量的解析:

 (‥膰伝上山麓での調査によると、土壌呼吸量は土壌微生物バイオマス量に比例し、そのバイオマス量は窒素含量と相関が高く、土壌呼吸の大部分がリターと表層10cm以内で行われていた。

 ▲ナダのクロトウヒ林の土壌CO2放出量は、堆積腐植層が全体(283gC/m2/yr)の50%余を占めたがより下層の寄与も無視できなかった。根の呼吸は全土壌呼吸の54%と推定された。

(8)乗鞍岳西斜面の温帯落葉広葉樹林観測タワーにおける通年測定の結果、傾度法によるCO2フラックスは、59月に植物群落への吸収、10月〜4月に群落からの放出を示し、年間収支として460'93.10-'94.9)及び210'94.10-'95.9gCO2/m2/yrの群落への吸収という結果を得た。

(9)3次元気候モデルに組込む簡略化陸面植生モデルを開発した。熱、水、CO2の計算流量は観測値とよく一致し、重要なパラメータに対するモデルの応答も概ね良好であった。C4C3混合草原の多層キャノピーモデルによる光合成、蒸発散に関するシミュレーションを行い良好な結果を得た。

(10)日豪及び日加の定期航路の船舶上で大気を採取し、炭素、酸素の同位体比を測定するラインを確立した。炭素同位体比はCO2濃度増加とともに低くなり化石燃料起源を示したが、酸素同位体比は濃度の下がる中緯度で同時に下がる傾向を示した。