研究成果報告書 J95B0110.HTM

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[B−1 地球温暖化に係る二酸化炭素・炭素循環に関する研究]

(1)海洋沈降粒子による炭素の沈降フラックスと環境因子に関する研究


[研究代表者]

名古屋大学大気水圏科学研究所  ●大田啓一

[環境庁 国立環境研究所]

(委託先)

名古屋大学大気水圏科学研究所

●大田啓一

 

東京大学海洋研究所

●野崎義行


[平成5〜7年度合計予算額]

24,554千円

(平成7年度予算額 8,312千円)


[要旨]

 海洋の中・深層水は、人間活動によって発生する二酸化炭素の受け皿として大変重要であり、海洋表層から中・深層水への二酸化炭素の輸送過程とそのフラックスの評価が注目されている。本研究では、西部北太平洋域に拡がる沿岸域から外洋の中・深層水への有機物および炭酸塩物質の輸送系を明らかにすることを目的としている。このため、相模湾・東京湾から海溝域につながる相模舟状海盆に焦点をあて、海底表層堆積物および海溝域(JT−08)および東京湾口(TR−2)で実施したセヂメントトラップ実験によって採取した沈降粒子の有機炭素、生物源および陸域源ケイ素ならびに炭酸カルシウムを測定し、沿岸−大陸棚域から外洋中・深層水への有機物の輸送系の解析を試みた。そして、以下に結果をえた。
1)JT−08の921m、3423mおよび4529m深における質量フラックスは、深度とともに指数関数的に減少した。しかし、沈降粒子の化学組成は、この粒子が海洋表層の植物プランクトンに由来することを示した。
2)JT−08の8431m深においては、全質量フラックスが急激に増加することを認めた。したがって、海溝斜面に沿った粒子の負荷過程の存在が示唆された。
3)921m,3423m,4529mおよび8431m深における沈降粒子の有機炭素、生物源および陸源ケイ素および炭酸カルシウム組成の鉛直分布を明らかにし、8431m深に負荷される沈降粒子の有機炭素/有機窒素(C/N)、有機炭素/生物源ケイ素(Org−C/Bio−Si)が、相模舟状海盆の表層堆積物および東京湾口での沈降粒子試料のそれに比べいずれも低い値であることを認めた。8431m深からの沈降粒子の有機炭素/陸源ケイ素(Org−C/Litho−Si)は、921m,3423mおよび4529m深のそれに比べて低く、むしろ表層堆積物のそれに近い値であった。
4)これらの結果は、8431m深に負荷する粒子は、2元性を有し、陸源・ケイ素を主成分とする陸起源粒子と、有機物の負荷に関わる沈降粒子とに分けられる。特に、後者は沿岸域の堆積物表面に沈積した植物プランクトン有機物が、堆積後比較的短時間のうちに海溝斜面と通して海溝域に負荷されるものと判断される。


[キーワード]

海洋、有機物、炭素フラックス、生物源ケイ素、陸源ケイ素、セヂメントトラップ