研究成果報告書 J95B0160.HTM

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[B−1 地球温暖化に係る二酸化炭素・炭素循環に関する研究]

(6)亜寒帯林生態系における炭素循環・収支の定量的解析


[研究代表者]

広島大学総合科学部自然環境研究講座

●中根周歩

[農林水産省 農業環境技術研究所]

環境管理部 資源・環境動態研究室

●袴田共之

(委託先)

広島大学 総合科学部 自然環境研究講座  ●中根周歩・河野貴宏・木原丈晴


[平成5〜7年度合計予算額]

10,585千円

(平成7年度予算額 3、954千円)


[要旨]

 カナダのサスカチュワン州キャンドルレイク地域の亜寒帯林(黒トウヒ林:Picea mariana)において、2ヶ所(調査区A、B)でその炭素の循環動態(特に土壌炭素循環)を1993年8月から1995年8月にかけて調査した。その結果、地下水位が高いB区よりも水位が低いA区の方が、循環量が大きく、循環速度は速かった。具体的に、A0層と土壌腐植の分解率は、それぞれA区で0.0616、0.0039y-1、B区で0.0275、0.0017y-1となった。これは、高い地下水位の為、土壌温度が低く抑えられることと、過湿が影響していると思われた。また、この亜寒帯トウヒ林と日本の冷温帯ブナ林の土壌炭素の循環を比較すると、土壌炭素のフローはプナ林よりも小さく、リザーバーであるA0層量は多いが、土壌中炭素量は逆に小さかった。すなわち、土壌温度と対応して、亜寒帯林は一段と循環速度が遅く、しかも、土壌炭素が土壌表層に集中し、土壌表層で炭素循環の大半が行われている実態が解明された。さらに、今回の調査結果から、この亜寒帯林の土壌が年間、0.1〜0.2tCha-1の大気中二酸化炭素を吸収していることが判った。これは、大気中の二酸化炭素濃度の増大が森林の一次生産力を増加させているとの仮定で得られたモデル計算結果と良く一致した。


[キーワード]

亜寒帯林、炭素循環・収支、土壌呼吸、コンパートメントモデル、Black Spruce