環境に配慮した経営
経済のグリーン化を実現するために、事業者による環境に配慮した経営(環境配慮経営)は、重要な役割を果たします。
事業者の自発的な環境配慮の取組により、自らの環境負荷を削減するばかりでなく、例えば、製品の利用段階での環境負荷を低減したり、原料採掘における環境配慮を促すことに貢献します。また、新たなエコビジネスや環境技術の開発も、事業者の日々の研究成果によるものです。さらに、研究機関や教育機関が、環境に関する研究や環境教育を実施することも大切な取組です。
このように環境配慮経営は、事業活動に伴う資源・エネルギー消費と環境負荷の発生をライフサイクル全体で抑制し、事業エリア内での環境負荷低減だけでなく、グリーン調達や環境配慮製品・サービスの提供等を通じて、持続可能な消費と生産を促進します。
その結果、持続可能な社会の構築が進み、さらに環境配慮型製品・サービスの市場が拡大していきます。こうした環境と経済の好循環を志向する戦略的対応に成功すれば、企業は持続可能な社会の構築に貢献するだけでなく、競争優位なポジションの獲得によって、自らの市場競争力を強化することが可能になります。
環境経営の方向性
環境経営の方向性
事業環境の変化に付帯して発生するリスクや機会に大して適切に対処できる能力が、企業の長期的な持続可能性にとって重要です。
今後10年間における環境経営を展望すれば、次のような事項が重要となっていきます。
- 経営者の主導的関与
- 経営者は環境経営の実行を社会に対してコミット(約束)することが必要。
- 環境への戦略的対応
- 重要な事業機会やリスクに対して、戦略的に対応することが必要。
- 組織体制とガバナンス
- 環境経営の適切な遂行のための組織体制と、組織体制が健全かつ効率的に機能する上での基礎となるガバナンスを構築することが必要。
- ステークホルダー(利害関係者)への対応
- 企業を取り巻くステークホルダーをよく理解し、期待や要望を把握し、それらに経営活動の中に還元してくことが必要。(顧客相談。従業員満足調査、対話等)
- バリューチェーン志向
- 原料の調達から廃棄まで製品ライフサイクル全体における環境負荷を俯瞰して、重要な課題を特定し、対話していくことが必要。
- 持続可能な資源・エネルギーの利用
- 資源効率性の向上などによる資源の持続可能に配慮した利用が必要。
出典:「環境報告ガイドライン等検討委員会」検討資料
戦略的な環境経営プロセス
- 環境負荷の状況(インプット、循環利用、アウトプット)を、製品等のライフサイクルで把握
- ステークホルダーへの対応
- 経営への影響から重要な課題を特定
- 重要な課題に対するための方針、事業戦略の策定
- 中長期・短期における計画の策定
- 組織体制(EMS含む)の適切な運用と全従業員への周知
- 実績の把握と経営者による評価・改善策
重要な課題を決定する際の考慮事項
- 財務的影響(収益獲得機会とリスク)及びその想定期間
- 同業種における共有課題や同業他社の対応状況
- 法規制等における共有課題や同業他社の対応状況
- ステークホルダーからの要請や社会的な関心
- 自然災害・事故などによる物理的影響
出典:「環境情報の利用促進に関する検討委員会」検討資料
国内外の動向
環境マネジメントシステム(EMS)の認証取得の現状
環境マネジメントシステムの国際規格であるISO(国際標準化機構)14001等については、「認証を取得した(一部事業所での認証も含む)」と回答した企業の割合(企業数)は、上場企業で、80.3%、非上場企業で52.2%となっています。
※ISO14001以外の環境マネジメントシステムも含めている。
売上高別にみると、総じて売上高が高くなるほど、「全社(全事業所)で認証取得済」、「一部の事業所で認証取得済」は高くなっています。特に5千億円以上の企業では、「全社(全事業所)で認証取得済」が半数以上を占めています。一方で、「構築していない」は売上高が低いほど大きな割合を占めており、「50億円未満」では60.6%と約6割を占めています。
エコアクション21の普及促進と認証・登録制度
環境省では、エコアクション21の取組を推進するため、その要求事項等の解説や取組のチェックリスト等を加えたガイドラインを策定しています。
・事業者の環境への取組を適切に評価して必要な指導・助言を行うと共に、適切な取組を行う事業者に対し、第三者がガイドラインに適合していることを認めることにより、社会的な評価や信用を得られるようにする仕組みとして、「認証・登録制度」を平成16年より実施しています。
・認証・登録制度は、現在、「エコアクション21中央事務局」が自主事業として運営しています。
・環境省では、平成20年より、認証・取得(見込み)事業者を対象に、日本政策金融公庫による低利融資制度を設け、普及を推進しています。
バリューチェーンによる環境経営の広がり
環境経営の取組対象領域は、企業単体から連結子会社、さらには仕入先にまで拡大しています。製造業を中心に多くの大企業による環境経営はバリューチェーン全体にまで広がりをみせており、それがまた中小企業の環境保全の取り組みを促進するという結果も生みだしています。