
環境に配慮した金融
私たちの社会では、あらゆる経済活動はお金を媒介として行われており、お金の流れが社会の仕組みに与える影響は大きいといえます。したがって、社会の仕組みを持続可能なものに変えていくには、お金の流れを持続可能な社会に適合したものに変えていくことが重要です。
環境に配慮した金融(環境金融)は、金融市場を通じて環境への配慮に適切な誘因を与えることで、企業や個人の行動を環境配慮型に変えていくメカニズムです。
環境金融の動きは、我が国でも近年、環境への意識の高まりとともに広がりつつあります。1400兆円を超える我が国の個人金融資産の運用において、そのような動きを拡大し、持続可能な社会を作るためのお金の流れをさらに確実なものにしていくことが必要となっています。
環境金融の役割
環境金融の具体的な役割は、主に以下の2つがあります。
(a)環境負荷を低減させる事業に資金が直接使われる投融資
(b)企業行動に環境への配慮を組み込もうとする経済主体を評価・支援することで、そのような取組を促す投融資
前者(a)の具体的な取組としては、各種の環境プロジェクトに対する投融資、環境設備投資への融資、環境ベンチャー企業への投融資、環境ビジネスに関連するリスクへの保険サービスの提供などが挙げられます。
後者(b)の具体的な取組としては、投融資先の企業の活動を環境面から評価し、その結果を投融資活動に反映することで、環境配慮行動へのインセンティブを付与する、環境格付融資や責任投資(RI:Responsible Investment)などが挙げられます。
国内の動向
1. 日本の環境金融の現状
■金融機関の事例
金融庁では、各金融機関のCSRを重視した具体的な取組状況についての調査を実施しており、取組事例をまとめた「金融機関のCSR事例集」を公表しています。「金融機関のCSR事例集(外部リンク)」等の公表について(金融庁)
■SRIファンド
環境に配慮した投資の代表的な手法として環境・社会・ガバナンスの視点から企業を評価し、投資先を選定する社会的責任投資(SRI)があります。金融危機時における株価急落の影響はあるものの、SRIファンドの本数は増加傾向にあります。しかしながら、年金基金などの機関投資家による取組が進んでいる欧米に比べ、日本のSRIの規模は非常に小さくなっています。
(日・米・欧の社会的責任投資(SRI)の規模比較)
日本(2007年) | アメリカ(2007年) | イギリス(2007年) |
---|---|---|
約0.85兆円 | 約2.7兆ドル (約311兆円) |
約0.76兆ポンド (約175兆円) |
出典:【日本】SIF-Japan「日本SRI年報2009」
【アメリカ】SIF「Report on Socially Responsible Investing Trends in the United States 2007」
【イギリス】Eurosif 「Euroean SRI Study 2008」
※1ドル=115円、1ポンド=230円換算(2007年12月時点)
2. 環境配慮融資の一例
■日本政策投資銀行の事例
日本政策投資銀行では、平成16年から「環境格付」(環境に配慮した経営の評価)と格付に応じた「優遇金利融資」 を実施しています。UNEP FI(国連環境計画金融イニシアティブ)、環境省との情報交換を踏まえ120の質問からなるスクリーニングシートを開発し、企業とのインタビューを通じた格付評価を行い、優遇金利の水準を設定しています。
環境格付融資のケース(外部リンク)
海外リンク
国連環境計画金融イニシアティブ(United Nations Environment Programme Finance Initiative:UNEPFI(外部リンク))
環境および持続可能性に配慮した金融機関の事業のあり方を追求、普及促進することを目的とした、世界各地の金融機関のパートナーシップです。
世界の200を超える金融機関(うち日本からは16機関)が署名(平成26年1月時点)しています。
責任投資原則(Principles for Responsible Investment Initiative:PRI(外部リンク))
国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の主導により2006年に策定されました。
主に機関投資家を対象に、資産運用において、環境・社会・コーポレートガバナンスの問題に配慮することを求めています。
世界1241機関(うち日本からは29機関)が署名(平成26年1月時点)しています。
赤道原則(EQUATOR PRINCIPLES(外部リンク))
世界銀行グループの国際金融公社の協力のもと、主要な欧米銀行10行により2003年に策定されました。
同原則は一定の基準に従って事業者が環境や社会に及ぼす影響を把握し、適切な対策の実施を促すと同時に、融資後も計画通りに進められているかをモニタリングすることを定めています。
赤道原則は従来プロジェクトファイナンスのみを対象としていましたが、2013年6月に赤道原則が改訂され、プロジェクト紐付きコーポレートローン等へ対象を拡大し、環境・社会に対する配慮を一層強化することになりました。
現在、世界79機関(うち日本からは大手都市銀行3行)が採択しています。