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山陰海岸国立公園の写真

公園の特長

海岸地形の博物館
指定:昭和38年7月15日
面積(陸域のみ):8,783ha
京都府、兵庫県、鳥取県
山陰海岸国立公園は、東は京都府京丹後市から西は鳥取県鳥取市に至る約75kmの海岸部が指定されています。山地が直接海に接するリアス海岸(沈水海岸)で、海食崖、海食洞、岩礁などが著しく発達し、海域と一体となった変化に富む海岸景観が特色となっています。その一方で、海食や河口から運ばれた砂により形成された鳥取砂丘に代表される開放的な砂丘の景観も特色となっています。このようにこの国立公園では特質な地形が随所で見られ、また、これらの地形はさまざまな岩石から成っていることから「地質の公園」、「岩石美の公園」とも呼ばれています。

平成22年には山陰海岸国立公園を中心とする「山陰海岸ジオパーク」の世界ジオパークネットワークへの加盟が認定され、山陰海岸の重要性が世界的にも認められています。

地形・景観

山陰海岸国立公園の特色ある景観を形成する海岸は主として岩石海岸です。日本海の荒波と季節風による侵食・風化により、海食崖、海食洞、岩礁などが著しく発達し、海岸線は複雑に入り組んだリアス海岸(沈水海岸)となっています。また、その岩石は種類が豊富で多様な地質構造を持つため、特異な地形を随所で形成します。岩石海岸と対照的な景観となっている砂浜海岸は、海食で生じた砂や河口から運ばれた砂により形成され、代表的な鳥取砂丘では砂の移動に起因する特異な景観を作り出しています。
地質は、玄武岩・安山岩・流紋岩などの火山岩(節理の発達したものが各所に見られる)や火山砕屑岩と礫岩・砂岩・泥岩などの堆積岩を主とし、一部では花崗岩も見られます。このような岩石が作り出す地層の重なり、不整合、岩脈節理などの多様な産状や地質構造も山陰海岸国立公園で見ることができます。
鳥取砂丘の写真
鳥取砂丘
鳥取砂丘は、東西16km、南北2.4kmに広がる日本最大級の砂丘です。
中国山地から流れ出た砂が、川と海に運ばれ、風に吹き上げられてできました。砂と風が作り出す美しい模様(風紋)や、凹地形のスリバチなどが見られ、変化や起伏に富んだ独特の地形が鳥取砂丘の魅力です。
多鯰ヶ池の写真
多鯰ヶ池
鳥取砂丘の南側に位置し、周囲約3.4km、湖水面積約0.23k㎡の天然の池です。湖面は海面より約16m高く、最大深度は約17m。この池には、多鯰ヶ池の主の白蛇に関する「お種伝説」が伝わっています。
浦富海岸の写真
浦富海岸
全長15kmの岩石海岸で、断崖絶壁と松を抱いた大小の島々や岬に囲まれた "白砂青松"の景勝地『浦富八景』と称賛されています。
干貫松島の写真
干貫松島
網代港のすぐ北方海上に浮かぶ花崗岩の小さな島です。寛文年間(今から約300年前)には頂上にはみごとな松が生えていて、鳥取藩2代目藩主の、池田綱清公が「我が庭にこの岩つきの松を移した者に、銀千貫を与えよう」と言われたことが、名前の由来と言われています。
鎧の袖の写真
鎧の袖
香住海岸の西部に位置する高さ65m・長さ200m、傾斜角70度で切リ立った大海食崖で、国の天然記念物にも指定されています。柱状節理と板状節理が交わリ、鎧の袖にみえることから名付けられました。
はさかリ岩の写真
はさかリ岩
竹野海岸の波食岩礁地帯の海岸線に位置し、礫岩の地層にそってできた洞門です。海食洞の天井の岩が落ちて洞側壁の岩に挟まってできたと考えられ、兵庫県の名勝に指定されています。
猫崎半島の写真
猫崎半島
兵庫県最北端にあり、沖から見ると猫がうずくまっているように見えます。本来は島だったものが、川から運ばれた砂礫によって陸続きになったもので、東側には砂浜(竹野浜)が広がっています。西側は日本海の荒波で削られた波食棚が見られ、そこでは波と礫により削られてできたポットホールを見ることができます。
玄武洞の写真
玄武洞
国の天然記念物にも指定されており、約160万年前に起こった火山活動によりできた玄武岩の美しい柱状節理や板状節理を見ることができます。玄武岩の名はこの玄武洞に由来しています。
久美浜湾の写真
久美浜湾
約2万年前の最終氷期が終わり海面が上昇した際に形成された砂州によって日本海と隔てられ、久美浜湾ができました。現在は湖岸延長約28km、湊地区大向水道(幅約50m)で日本海とつながっています。
兜山の写真
兜山
久美浜湾の南東にそびえる標高191mの円錐形をした山。流紋岩の溶岩からできており、周囲ではそろばん玉石とよばれる鉱物が採取されています。山頂には熊野神社がまつられ、御神体として崇められています。

植物

落葉広葉樹の二次林が多く、わずかに島や岬、社寺境内のごく一部分に照葉樹林からなる原生的な森が残されています。鳥取砂丘・丹後砂丘をはじめとする砂丘地帯ではコウボウムギ、ハマニガナ、ハマゴウ、ハマボウフウなどの海浜植物を見ることができます。
また、丹後砂丘で見られるトウテイランは大変珍しい植物です。
ハマヒルガオの写真

ハマヒルガオ

トウテイランの写真

トウテイラン

動物

ニホンジカ、イノシシなどの大型哺乳類を始め、キツネ、タヌキ、トウホクノウサギなどの中型哺乳類などの多くの動物が生息しています。また、猫崎半島は渡り鳥の重要な中継地となっており、渡りの季節には数多くの鳥を見ることができます。さらに、円山川流域は、一度は絶滅したコウノトリの野生復帰の場となっています。
コウノトリの写真

コウノトリ

沿岸部では、対馬暖流の影響を受け、南方系の魚類や小動物を比較的多く見ることができます。また、ウミウシやアメフラシといった軟体動物も数多く生息しています。 海の透明度が高い山陰海岸国立公園では、藻場の美しさも魅力のひとつであリ、すばらしい海中景観を楽しむことができます。
アオウミウシの写真

アオウミウシ

文化

漁村集落の写真

漁村集落

城崎温泉の写真

城崎温泉

陸域では、瓦屋根の漁村集落とその背後の急崖地がつくり出す日本海沿岸独特の景観を各地の湾奥部で見ることができます。
また、志賀直哉をはじめとした数々の文豪が訪れたことで知られる城崎温泉では、柳の揺れる情緒豊かな風景を楽しむことができます。
らっきょう畑の写真

らっきょう畑

鳥取砂丘周辺で見られるラッキョウ畑もこの国立公園の特徴的な景観です