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足摺宇和海国立公園の写真

公園の特長

黒潮が育む大自然~豪快優美な海岸線 いのちきらめく森と海~
指定:昭和47年11月10日
面積(陸域のみ):11,345ha
愛媛県、高知県
足摺宇和海国立公園は、昭和30(1955)年に足摺国定公園として誕生し、宇和海地域や海中公園地区の追加指定を経て、昭和47(1972)年に足摺宇和海国立公園となりました。
本公園の大きな特長は、四国南西部の島嶼を含む海岸部と、内陸部の標高1,000m級の山々からなる変化に富んだ景観です。
足摺地域は、海岸段丘が発達した断崖絶壁が続き、黒潮の恩恵を受けた亜熱帯性の海洋生物やサンゴの群集が見られます。一方、宇和海地域は沈降海岸の繊細な入江と島嶼景観が魅力となっており、ソフトコーラルを中心とした美しい海中景観を楽しむことができます。
内陸部では、コウヤマキやスギ、ヒノキなどの巨木をはじめとした自然林が残されており、暖温帯から冷温帯まで植生の垂直分布を見ることができます。また、四万十川上流の滑床渓谷では、花崗岩の滑らかな河床や雪輪の滝に代表される連続する滝、ウラジロガシやタブノキなどの渓畔林が美しく、観光客を魅了しています。

地形・景観

大堂海岸の写真

大堂海岸

変化に富んだ海岸景観は、足摺宇和海国立公園の大きな魅力の1つです。
高知県の足摺地域は、隆起海岸(※2)である足摺岬や竜串などの東部では、断崖が連続する豪壮な景観が続き、リアス式沈降海岸(※1)である叶崎や大堂海岸などの西部では、多くの岬や点在する岩礁群が複雑で繊細な景観を展開しています。
宇和海の多島海景観の写真

宇和海の多島海景観

一方、愛媛県の宇和海地域は、典型的なリアス式沈降海岸で、西方へ長く突き出た三浦半島や由良半島などの入り組んだ海岸線と、それらを取り巻くように浮かぶ島々が変化に富んだ多島海景観を形成しており、海食による断崖や洞窟などが見られます。
竜串・見残しの奇岩の写真

竜串・見残しの奇岩

滑床渓谷の写真

滑床渓谷

足摺岬などの一部は花崗岩であるものの、全体的に中生代や第三紀に属する砂岩や頁岩から構成され、風食や海食を受けて特色ある海岸景観が形成されました。中でも柔らかい砂岩が多い竜串では、奇岩とよばれる多様な造形の岩を見ることができます。また、地層の中に残された古生物の足跡や排泄物などは、地質学的にも貴重なものとされています。

※1
隆起海岸:陸地が隆起、又は水面が低下して生じた海岸
※2
沈降海岸:陸地が沈降、又は水面が上昇して生じた海岸。このうち、リアス式海岸は、入江や湾が多く、出入りの複雑で鋸歯(きょし)状の海岸線を示す。
色鮮やかな海中景観の写真

色鮮やかな海中景観

海中景観
世界でも最大級の暖流である黒潮の影響を受けて、高緯度でありながらイシサンゴ類などの造礁サンゴが発達し、これらサンゴの間にソラスズメダイやチョウチョウウオなど亜熱帯性の魚類が生息し、色鮮やかな海中景観が広がっています。
撮影:(公財)黒潮生物研究所 中地シュウ氏の写真

撮影:(公財)黒潮生物研究所 中地シュウ氏

シュノーケリングの写真

シュノーケリング

ソフトコーラルの写真

ソフトコーラル

中でもサンゴ類は、種類が多いばかりでなく世界的な分布のほぼ北限に位置し、琉球列島などで見られるようなサンゴ礁は形成されないものの、温帯域としては規模、種類ともに非常に発達したサンゴ群集が見られる貴重な海域です。
この素晴らしい海中景観を保全するため、日本で最初の海中公園(現・海域公園)地区である竜串、宇和海に加え、現在は沖の島・樫西・勤崎・尻貝の6つの海域公園地区が指定されています。
また、宇和海沿岸においては、海岸動物類(腔腸動物、棘皮動物など)、貝類、海藻類が宇和海特殊海中資源群として愛媛県の天然記念物に指定されている海域もあります。
こうした海中の様子は、シュノーケリングやグラスボート、海中展望塔から簡単に見て楽しむことができます。

植物

黒潮の影響を受けた高温多雨の気候のもと、暖温帯から冷温帯までの植生が見られます。海岸一帯では暖帯性の照葉樹林が広く分布し、 各所にウバメガシの純林が見られます。樹林内では、シュスランやツルリンドウなどのほか、奴の姿が名前の由来で主にスダジイの根に寄生するヤッコソウを観察することができます。
足摺岬周辺ではビロウ、クワズイモ、リュウビンタイ、アコウなどの亜熱帯植物が生育し、足摺岬のシンボルであるヤブツバキも多く、赤い花を咲かせています。
ヤッコソウの写真

ヤッコソウ

海岸沿いでは、ハマアザミやツワブキ、ノジギクが生育し、断崖に多肉植物のツメレンゲの群生も見られます。内陸部では、滑床渓谷にウラジロガシやタブノキなどの渓畔林やブナやモミ、カエデ類などの混合林が分布するほか、篠山山頂部にコウヤマキ、ハリモミの巨木やアケボノツツジ群落を見ることができます。
ヤブツバキの写真

ヤブツバキ

動物

ニホンザル、ニホンジカなど多くの野生生物が生息し、柏島のすぐ沖合の蒲葵島にオオミズナギドリの繁殖地が形成されているほか、海岸部ではカンムリウミスズメ、ウミウ、サシバなどの鳥類を観察することができます。また、竜串・見残し湾内のシコロサンゴの大群集は見事で、高知県の天然記念物として指定されています。
ニホンザルの写真

ニホンザル

ニホンジカの写真

ニホンジカ

文化

四国のみちとお遍路
四国のみちは、お遍路など地域の歴史や身近な自然に親しむことができるように長距離自然歩道として整備されています。本公園には、弘法大師が開創したと伝えられる、四国八十八ヶ所霊場の1つである金剛福寺があり、また番外札所として知られる月山神社、篠山神社も巡礼することができ、遍路道中には、お接待などの文化が残っています。
昭和30年代ころの尾瀬ヶ原:尾瀬保護財団提供の写真
黒潮の恵みと漁業文化
この地域は、黒潮の恵みにより古くから遠泳漁業で栄えた漁港や漁村が多く、足摺岬の「鹿島神社大祭」をはじめ、漁の安全と大漁を祈願する祭の文化が各地で根づいています。また、内陸に面した湾内にはマダイやヒオウギ貝の養殖いかだや網などが多く見られ、昔から自然の恵みを受けた暮らしが息づいています。