2008年10月01日

新宿御苑における絶滅危惧植物の種子保存モデル事業の実施

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 環境省新宿御苑管理事務所では、10月から、絶滅危惧植物の種子保存モデル事業を開始します。これは、植物保全に取り組む全国の植物園等に協力を呼びかけて、我が国に生育する絶滅のおそれのある植物の種子を収集し、新宿御苑において長期保存するものです。絶滅危惧植物の種子を対象とした種子保存の取り組みとしては、我が国初めてのものとなります。


1.背景
 現在、我が国に生育する種子植物・シダ植物の約1/4にあたる種が、環境省レッドリスト(2007)に掲載される状況にあり、生息域内での保全だけでは存続が困難な種も生じていることから、生息域内保全を補完する手段として、植物園などの栽培下で植物を保全する生息域外保全の必要性が増加しています。
 特に、小さく、取り扱いやすい種子を保存することは、小スペースで多くの個体を確保することができること、また、長期間にわたり安定して保管できる利点があることから、植物種の絶滅の危険を回避するために効果的であるといわれています。
 しかし、現在の我が国においては、個々の研究機関や植物園で行われている例があるものの、絶滅危惧植物全体の長期保存を目的としたシステム的な種子保存は行われていません。このような状況を受け、環境省で唯一、植物園の機能を有する新宿御苑において、「絶滅危惧植物の種子保存モデル事業」を実施しようとするものです。


2.事業概要
 本事業では、絶滅危惧植物を対象に、自生地から採集した種子を生かしたまま乾燥し、新宿御苑内の施設にある-20℃程度の冷凍庫で長期保存するものです。種子の中には乾燥や冷凍で死んでしまうものもありますが、多くの種は乾燥・冷凍後も発芽する力を持ち続け、条件が良ければ数十年以上の保存が可能なものであると言われています。
 絶滅危惧植物の種子の収集は、新宿御苑のほか、(社)日本植物園協会の植物多様性保全拠点園(※)に参画している植物園や研究機関等に協力を呼びかけ、実施します。
 新宿御苑では、本モデル事業終了後(平成22年3月目途)も引き続き種子保存を行い、我が国における絶滅危惧植物の種子保存の拠点となることを目指します。


※注釈
(社)日本植物園協会の植物多様性保全拠点園について
 (社)日本植物園協会は、植物多様性保全を効果的に行うため、全国の植物園が分担して事業を行うネットワークを設けている。現在、26植物園が参画し、2010年までに日本産絶滅危惧植物種の約55%の保全を図ることを短期目標としている。
 新宿御苑もこのネットワークに参画し、全国の植物多様性保全拠点園と協力して絶滅危惧植物の保全に取り組んでいる。


2.種子の収集・保全の実施方法について
 本事業を実施するのに先立ち、平成19年度に「絶滅危惧植物の種子収集・保存マニュアル」及び「絶滅危惧植物の系統保存管理マニュアル」を作成し、全国の植物多様性保全拠点園等に配布した。
 両マニュアルの作成にあたっては、有識者によるワーキンググループ(*)で検討するとともに、植物多様性保全拠点園の意見も聴取している。

(1)「絶滅危惧植物の種子収集・保存マニュアル」
  絶滅危惧植物の種子保存を進めるための技術的情報を示すとともに、作業の基準化・規格化を図ろうとするもの。

(2)「絶滅危惧植物の系統保存管理マニュアル」
  絶滅危惧植物の系統保存を進める上で必要な技術的情報を示すとともに、作業の基準化・規格化を図ろうとするもの。

 (*)ワーキンググループ構成員(五十音順、敬称略)
   榎本 敬 (岡山大学資源生物科学研究所 准教授)
   倉重 祐二(新潟県立植物園副園長)
   高林 成年(元京都府立植物園長)
   月江 成人(淡路夢舞台温室技術部長、(株)プラタナス代表
   遊川 知久(国立科学博物館筑波実験植物園 研究主幹)