里海ネット

聞き書き事例

「聞き書き」とは、話し手の言葉を録音し、一字一句すべてを書き起こして、ひとつの文章にまとめる手法です。
仕上がった文章からは、話し手の語り口や人柄が浮かび上がり、「聞き書き」を通して、地域に住んでいる人たちの持つ知恵や技、その生き様やものの考え方を学び、受けとめることができます。
名人の長い経験から生まれた、ひとつひとつの言葉が糧となり、自然と人の暮らしとのつながりを考える大きなきっかけとなり、里海づくり活動の方向性を探る上での、有効な手段となります。
ここでは、実際に聞き書きを行ったいくつかの事例を紹介します。

兵庫県相生湾沿岸の例(1)事例を閉じる
(語り:T氏(79歳)地元漁師、聞き書き:兵庫県、実施日:平成23年3月15日)
兵庫県相生湾沿岸の例(2)事例を閉じる
(語り:H氏(69歳)郷土歴史研究家、聞き書き:兵庫県、実施日:平成23年3月15日)
三重県志摩市の例事例を表示する
(語り:地元養殖業者、聞き書き:志摩市、実施日:平成23年2月7日)
佐賀県有明海の例事例を表示する
(語り:漁業者、農業者、写真家、主婦の方、聞き書き:佐賀県)
三重県英虞湾の例事例を表示する
(語り:地元真珠養殖業者、聞き書き:社団法人瀬戸内海環境保全協会、実施日:平成22年2月2日)
兵庫県淡路島の例事例を閉じる

(語り:地元底曳網漁業者、聞き書き:社団法人瀬戸内海環境保全協会、実施日:平成22年2月3日)
※ここに示す聞き書きの結果は、お話を伺ったままの内容を社団法人瀬戸内海環境保全協会で整理したものです。

昔の英虞湾について
  • 昔の淡路島の砂浜は、小中学校の運動会の練習ができるほど広かった。

  • 昭和27年頃は、この付近全てが砂浜であった。砂浜を歩くと、稚カニが足の裏にいっぱいひっついたほどである。

  • 昭和39~41年頃まではアサリ、バカ貝が山ほど捕れた。

  • 砂場にはアオノリがはえ、それをこすり取って食材にしていた。

  • 昭和40年頃から、ノリ養殖を始めた。この頃は、船からの油投棄や流出事故のため、ノリ網に油が付着することもよくあった。

  • 産業廃棄物を、関西方面から底開式バージ(船)に積んできて淡路沖で投棄したこともあり、海底ごみが底引き網にかかることが多かった。

今の淡路島について
  • イカナゴ、ガシラ、メバルなどの漁獲量は、近年激減した。

  • 波による海岸浸食で、砂浜が無くなってきた。そのため、海に面した道路が崩壊する事故が発生している。砂浜が少なくなったことによって、キス、カレイ、イカナゴ等が取れなくなっている。

  • 海で遊ぶ子供たちも少なくなった。

  • 佐野漁港沖には、工業用地を確保するため埋め立てられ、新島ができた。(現在は、スポーツ公園として利用されている。)新島沖合にはヘドロが80cm堆積していることがわかった。

  • 赤潮は、周年発生している。昨年は、2月に佐野漁港が真っ赤になるような赤潮が発生した。

  • 漁協としては、市民が海浜で生物を取ることに対しては、制限していない。

改善の方法について
  • 砂浜が無くなったことで、海の浄化力が減っているのではないか。

  • 関西新国際空港の埋め立てのために、土砂の採取が始まってから、土が海底の砂を覆ったためか、貝やイカナゴが育たなくなった。

  • ノリ養殖では、珪藻、アオノリなどの付着を防ぐために、除草剤を使用するようになった。かつては、ノリ養殖期が終わると、ノリ網下に隠れていたカレイやイカナゴがたくさん捕れたが、除草剤を使用するようになってからは、捕れなくなった。除草剤が、海底に沈降し、生物に悪影響を与えているのではないかと心配している。

  • 昭和30年頃は、海に腐ったタマネギが投棄されたり、川にごみが投棄されたりした。陸からごみの影響で、漁業に支障が出てきた。川にごみを捨てると、いずれは海に流れ込み、布類やビニール類がプロペラに巻き付いたり、底曳き網に引っかかったりする。

  • 漁業者により回収した海洋ごみの処分費は、漁業者の負担となるため積極的には回収されない

漁業者自らの問題点について
  • 漁業者自ら、タバコの吸い殻を海にすてる。漁業者にとっての海は農業に例えれば田地田畑であり、海を育てる漁業を行っていく必要がある。

  • 漁船のアクセルの使い方一つで、排気ガスの量も違ってくるが、意識せずに、一気にアクセルを全開にする。

海を守るために行ったこと
  • 採る漁業から育てる漁業を目指し、底曳き網の編み目、操業時間、休漁日などの規制を自主的に定めた。

  • バックフィッシングという言葉のもと、小さい魚は海に戻し、小さい魚は市場で買い取らないように協力を求めた。

  • ごみの不法投棄防止の啓発活動を行ってきた。

行政に期待すること
  • 漁業者自らが考え活動できるような指導を行って欲しい。

  • 底曳き網等でかかった海洋ごみについて、その処理を行って欲しい。

  • 波の影響を抑えるために、岸より50m程度沖合に天然の石を利用した防波堤を作ることを提案しているが、まだ実現していない。

今後の海の環境を改善するために必要なことについて
  • 生物を増やすには、砂浜の再生が必要と考えている。

  • 漁業者自らが、海へのポイ捨て、除草剤の使用を控えるなど、海を守り育てる意識を高める