Gavia stellata (Pontoppiadan)
アビ目アビ科
1.生態
アビは、カラスより大きく、瀬戸内海に毎年冬になるとやってきて、春になるとシベリアなどの繁殖地に帰って行く冬鳥です。昭和39年に広島県の県鳥に指定されています。
アビは動物性の生きものをいろいろ食べますが、日本では小魚を主食とし、特に瀬戸内海ではイカナゴを主食としています。

越冬のため渡来してきたアビは、3月ころに 換羽(かんう) をします。
換羽(かんう):羽が抜け換わることを言う。1年に1回、アビは3月ころに換羽をする。
換羽で一時的に飛べなくなる時期にはアビは外敵から逃げられませんので、安全な場所、そして飛んで行かなくても餌が豊富にある場所が普段より一層必要になります。言い換えれば、アビが換羽する海域では水面下に餌となるイカナゴが多くいるということです。
このイカナゴを狙っているのはアビだけではありません。海の底の方にはタイやスズキがひそんでいます。アビの習性を利用してタイやスズキを漁獲する伝統漁法に「アビ漁」があります。
2.アビ漁
越冬のため瀬戸内海に渡来してきたアビは、餌であるイカナゴを捕まえようとし、イカナゴは逃げ回って群れをなしながら海底にもぐる。このとき海底にひそんでいるタイやスズキもイカナゴを追いかけて水面に移動して来る。漁師たちは、このタイやスズキをイカナゴを餌にして釣り上げる。
この漁法はアビ漁と呼ばれ、少なくとも300年以上前から続いている古い漁法で、現在では広島県豊田郡豊島周辺にわずかに残っている漁法です。
漁師たちはアビ漁の季節になると、アビに恐れられないように手漕ぎ船で近づき、人に慣れさせ、アビが慣れてきたころを待ってやっと本格的な漁を初めます。
アビ漁は、漁師とアビとの信頼関係があって初めて存続してきた漁法です。昭和6年にアビ漁が行われる海域が「アビ渡来群遊海面」として国の天然記念物に指定されています。しかし、近年アビの渡来数が急速に減少しており、アビ漁も行われなくなっています。
3.アビの渡来数と保護
広島県の調査では、アビの渡来数は昭和57年には900羽が確認されていますが、近年急速に減少しており、平成元年以降100~160羽前後となっています。減少の理由として次のことが考えられています。
- 1) 主要な餌であるイカナゴ資源量の減少
- 2) 船の航行による安全性の減少
広島県では、イカナゴ資源を確保していくための方策の検討のほか、安全確保のため斎島(いつきじま)周辺のアビ渡来海面を毎年12月1日から4月30日までの期間、鳥獣保護区特別保護指定区域に指定しアビの保護を図っています。
鳥獣保護区特別保護指定区域内では、広島県知事の許可を受けなければプレジャーボート等の航行は出来ません。許可の手続きについては、次のところまでお問い合わせください。
広島県森林保全課 TEL082-228-2111(代表)
呉農林事務所林務第一課 TEL0823-22-5400(代表)
(広島県提供資料を参考にとりまとめました。)