報道発表資料

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2000年09月05日

アジア・太平洋環境と開発に関する閣僚会議(ESCAP環境大臣会議)の結果について

国際連合アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)主催の「第4回アジア・太平洋環境と開発に関する閣僚会議(ESCAP環境大臣会議)」が、環境庁、外務省、福岡県及び北九州市の協力の下、平成12年8月31日(木)から9月5日(火)にかけて、福岡県北九州市において開催され、[1]閣僚宣言、[2]リオ+10への地域メッセージ、[3]5ヶ年地域行動計画、[4]クリーンな環境のための北九州イニシアティブ、が採択された。

1.会議の正式名称
アジア・太平洋環境と開発に関する閣僚会議
(Ministerial Conference on Environment and Development in Asia and the Pacific, 2000)

2.会議の主催者等
(1)主  催 国際連合アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)
(2)共  催 アジア開発銀行(ADB)、国連環境計画(UNEP)及び世界銀行
(3)受入機関 環境庁、外務省、福岡県及び北九州市

3.日  程
高級事務レベル会合 8月31日(木)~9月2日(土)
大臣会合 9月4日(月)~9月5日(火)

5.参 加 者
 本会議へは、ESCAP加盟国等42の国又は地域から157名(うち大臣・副大臣クラス31名)、33の国際機関等(国連機関・専門機関・政府間機関・その他の国際機関・NGO)から67名の計224名が本会議に出席した。
 なお、我が国の代表は、川口順子環境庁長官が務めた。
(参考)参加国・地域(40ヶ国・2地域)
(アルファベット順)
オーストラリア、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ブータン、ブルネイ、カンボディア中国フィジー、フランス、インドインドネシアイラン日本カザフスタンキリバスキルギスラオスマレイシア、モルディヴ、モンゴル、ミャンマー、ネパールオランダ、パキスタン、パプア・ニューギニア、フィリピン、韓国ロシアサモアシンガポール、スリ・ランカ、タジキスタン(2)、タイ、トンガトルコトルクメニスタントゥヴァルウズベキスタンヴァヌアツヴィエトナムクック諸島、マカオ
(下線は大臣・副大臣クラスが出席した30ヶ国・地域。タジキスタンは2名)

6.本会議の議長等
(1)大臣会合
議 長 川口順子 国務大臣・環境庁長官
副議長 28ヶ国の大臣・副大臣クラスの出席者
ラポラトゥール イラン
(2)高級事務レベル会合
議 長 日本(浜中裕徳 環境庁地球環境部長)
副議長 ヴィエトナム、トンガ、インド、中国及びキルギスタン
ラポラトゥール マレイシア

7.議事の概要
 大臣会合に先立って開催された高級事務レベル会合では、事務局が準備した会合文書に基づき、出席者による活発な意見交換が行われた。
 大臣会合では、各国代表によるステートメントが行われ、環境保全・持続可能な開発に係る政策の進展、また直面している問題が紹介された。
 川口大臣からは、9月3日に開催されたエコ・アジア2000で提案した有識者会議に賛同を得たことを紹介するとともに、「リオ+10」開催地のインドネシアの立候補の支持及び北九州イニシアティブへの協力を呼びかける演説を行った。

8.主な成果
 議論の成果は、報告書として取りまとめられ、[1]閣僚宣言、[2]「リオ+10」への地域メッセージ、[3]5ヶ年地域行動計画、[4]クリーンな環境のための北九州イニシアティブ、の4つの文書が採択された。その概要は以下の通り。

(1)アジア・太平洋の環境と開発に関する2000年閣僚宣言:21世紀のビジョン
 本会議では、前回の会議と同様に、持続可能な開発に関する政策を中心に、アジェンダ21の効果的な実施のための達成可能な目標と時間の枠組が検討された。本閣僚宣言は、これらの課題についての閣僚の決意を示すものである。
 本宣言は、以下の6つの章から構成されている。
[1] 序文
[2] 21世紀のアジア・太平洋地域の環境と開発の挑戦
   環境保護・環境管理の開発政策への統合、環境条約等への取り組みの強化、ポリシーミックスによる持続可能な生産・消費パターンへの移行、貿易と環境政策の相互支持化、環境の状況の正確な把握のための科学調査や分析の強化等につき言及。
[3] 持続可能な開発のための資金調達
   十分な資金提供と環境上適切な技術移転の促進の呼びかけ、多国間金融機関における譲許性の高い基金の早期補充への支持、国家レベルでの環境基金の設立の奨励、地球環境ファシリティー(GEF)プロジェクト実施への参加の決意等につき言及。
[4] アジェンダ21と環境上適切で持続可能な開発のための2001-2005年の地域行動計画
   2001-2005年の地域行動計画の採択及びその実施の決定、北九州イニシアティブの採択、本閣僚宣言と地域行動計画の定期的な評価、NGO・民間セクター等の利害関係者の地域行動計画への参加の呼びかけ等につき言及。
[5] 国連環境開発会議(地球サミット)の結果の10年後の評価
   「リオ+10」に向け、本地域における持続可能な開発に向けたアジェンダ21の実施状況の概要等を、本閣僚会議の結果とともに提出することに同意。インドネシアの「リオ+10」のホスト国への立候補を全面的に支持。
[6] 結論
   アジア・太平洋地域における持続可能な開発の実現に向けた行動のため、本地域の国々は、長期的な枠組で実施すべきとされた事項の実行に十分なリーダーシップを発揮する。2005年までに第5回閣僚会議を開催する。

(2)「リオ+10」への地域メッセージ(国連環境開発会議の成果の実施状況の10年レビューに向けて)
 2002年のアジェンダ21の包括的レビュー(「リオ+10」)の開催に向けて、アジア・太平洋の視点から、このレビューへの貢献を行うことを目的に地域メッセージを出すもの。
 ポイントは以下の通り。
 1992年の国連環境開発会議以降、アジア・太平洋地域においては、様々な取組の進展が見られたが、依然として環境破壊の問題は深刻である。
 アジア・太平洋地域の環境に関する優先分野は8分野である。
(a) 環境の質と人間の健康、(b) 生物多様性、(c) 海洋及び沿岸の環境、(d) 淡水資源、(e) 砂漠化と土地劣化、(f) 環境と経済、(g) 気候変動、(h) 持続可能なエネルギー開発
 これらの優先分野のほか、持続可能な開発のために重要な事項としては、貧困の削減、経済成長と環境汚染との分離、リオ会議で合意されたODAのGNP0.7%目標を達成するとの約束の尊重、市民社会、民間セクターの参加の増大、地域的及び準地域的な協力の強化があげられる。
 経済発展、社会発展、環境保護は持続可能な開発の構成要素であり、アジア金融危機からの回復を支援すべき。
 ESCAP地域の国々は、環境を保護し、環境上適切で持続可能な開発を促進し、アジェンダ21の実施を進めるため以下を含む地球的なイニシアティブを支持している。
(a) アジア・太平洋地域における環境の状況に関する包括的な評価
(b) 5カ年地域行動計画
(c) 2000年ESCAP環境大臣会議の開催と閣僚宣言の採択
(d) 利害関係者間の対話
 ESCAP地域の国々は環境及び持続可能な開発に関する国際協定の交渉の迅速な決着のために努力する。
 持続可能な将来のために、[1]全ての人々に十分な環境の恵みがもたらされること、[2]環境保全型の経済システムへの移行、[3]市民、民間セクター、地方政府の強化、の3つの分野が重要。
 「リオ+10」のホスト国へのインドネシアの立候補を全面的に支持。

(3)5ヶ年地域行動計画(RAP)(2001-2005年環境上健全で持続可能な開発のための地域行動計画)
 本地域行動計画は1985年の第1回ESCAP環境大臣会議当初より、閣僚宣言とならぶ主要な成果として採択されたものであり、環境大臣会議の開催の度に改訂されてきた。アジア・太平洋地域として環境上健全で持続可能な開発を実現するために、重要な取組を取りまとめたものである。
 今回は2001年から2005年までを対象期間として、以下の内容が盛り込まれている。
ア. 今回の地域行動計画は特に貧困の軽減と環境保全の関係が強調されている。また、行動計画の効率的な実施のため、以下の8つの優先分野を定めている。
  (a) 環境の質と人間の健康、(b) 生物多様性、(c) 海洋及び沿岸の環境、(d) 淡水資源、(e) 砂漠化と土地劣化、(f) グローバリゼーションと政策統合、(g) 気候変動、(h) 持続可能なエネルギー開発
イ. 地域行動計画をより行動指向のものとするため、各々の優先分野において明確なゴールと目標を設定することとし、以下の項目立てにより内容を記述している。
 
状況とトレンド:当該分野の状況、既存の取組と成果、課題等
使命(Mission statement):当該分野の取組が目指すべきゴール
行動のための取組の分野:当該分野の取組が行われるいくつかの分野
国レベルでの行動と目標
(短期)5年間程度で実現すべき行動と目標
(長期)行動計画の期間を超えるがより高い目標
実施メカニズム:経済的手法、規制、クリーンな技術の導入、機構の充実と能力育成、普及啓発といった政策手法分野別に、当該分野で用いられるべき施策を列挙
準地域及び地域レベルの行動:国レベルで行われるこれらの活動を支援するために準地域及び地域レベルで行うべき行動
ウ. 優先分野における政策の実施を支える手段として以下の8つが強調された。
  (a) 貧困減少戦略、(b) 戦略的環境管理、(c) ガバナンス、機構及び能力開発、(d) プロジェクトに基礎を置いたアプローチ、(e) 技術ネットワークと技術移転、(f) 資金メカニズムと資金源、(g) 環境教育、啓発と訓練、(h) 環境情報とコミュニケーション

(4)クリーンな環境のための北九州イニシアティブ
 クリーンな環境のための北九州イニシアティブは、5ヶ年地域行動計画の優先分野である「環境の質と人間の健康」の分野において優先的に実施されるべき方策を提供するために開発されたものである。
 アジア・太平洋地域の主要な都市における都市環境の改善の着実な前進を達成することを目的としており、各主体間の連携と技術・規制・組織面の取組により公害克服・環境再生を成し遂げた北九州地域の経験を広く共有し、アジア・太平洋地域の都市環境の改善を図るためのイニシアティブである。
 本イニシアティブには、以下の内容が含まれている。
ア. 北九州市の経験から得た政策ガイダンス
 北九州市の経験を他の自治体で応用するため、地域内の他の自治体にとっても有効な活動を以下に分類して取りまとめている。
(a) ローカル・イニシアティブの強化
(b) パートナーシップの拡充
(c) 地方レベルでの環境管理能力の強化
(d) 環境技術ベースの改善
(e) 公的機関、民間企業の環境への投資の促進
(f) 環境情報と教育
(g) ローカル・イニシアティブに基づいた国際環境協力の拡充
イ. 施策の提案
 上述の活動の促進のための支援策として以下が示されている。
(a) 北九州イニシアティブ・ネットワークの創設
(b) 国からの支援
(c) 学術団体との連携強化
(d) 既存の国際イニシアティブとの協調
ウ. 行動分野、対象及び指標
 総合的な都市計画戦略、大気質の改善、水質改善、衛生的な廃棄物処理及びごみ排出量の減少、職員の能力形成を行動範囲として、それぞれ定量的な目標を提案している。
エ. 考慮すべき課題
 出席大臣が推奨する項目として、本イニシアティブの施策及び行動の実行、北九州イニシアティブネットワークの設立の確認並びに参加の奨励及び資金協力等が掲げられている。

参考1 日本政府代表演説(仮訳) [HTMLファイル] [PDFファイル]
参考2 アジア・太平洋の環境と開発に関する2000年閣僚宣言:21世紀のビジョン(仮訳) [HTMLファイル] [PDFファイル]
参考3 「リオ+10」への地域メッセージ(国連環境開発会議の成果の実施状況の10年レビューに向けて)(仮訳) [HTMLファイル] [PDFファイル]
参考4 クリーンな環境のための北九州イニシアティブ(仮訳) [HTMLファイル] [PDFファイル]

添付資料

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部企画課
課  長 :一方井誠治(6731)
 調査官 :星野 一昭 (6748)
 補  佐 :上條 哲也 (6721)
 専門官 :永山  透 (6736)
 9月5日までは 093-551-8835

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