00/09/12
参考2
21 世紀に向けた展望:
アジア・太平洋の環境と開発に関する2000年閣僚宣言

(仮訳)

序文
 我々、アジア太平洋経済社会理事会の加盟国及び準加盟国の閣僚は、2000年9月4-5日、日本の北九州における2000年アジア太平洋環境と開発に関する閣僚会議にて会し、
 環境と開発に関するリオ宣言、アジェンダ21に盛り込まれた事項、1997年6月の第19回国連特別総会にて採択されたアジェンダ21の更なる実施のためのプログラム、マルメ閣僚宣言、及び1995年のアジア太平洋地域の環境と開発に関する閣僚宣言への我々のコミットメントに再度専心し、これを新たにするとともに、
 経済開発、社会開発及び環境保全が、持続可能な開発の相互依存的かつ相互に補強する要素であり、持続可能な開発がアジア太平洋地域全体にわたり、特に女性や子供に焦点をあてた人々の生活の質の向上の達成に向けた我々の努力のための枠組みであることを考慮し、
 特に、気候変動枠組条約、生物多様性条約、砂漠化対処条約、世界遺産条約、バーゼル条約等の多国間環境協定の重要性、また、締約国会議を通じた一層の明確化と実施における発展途上国の役割の強化を認め、
 アジア太平洋地域の国々のそれぞれの経済の多様性、及び天然資源の賦存の多様性−それは世界の熱帯林地域の57パーセント、世界のマングローブの3分の1、莫大な海洋資源を含む広範囲の海洋、世界の珊瑚礁の3分の2、そして数々の砂漠、山岳地、湖沼、湿地、河川、河口部を含み、それらの全てが変化に富むユニークな生態系を支えている−を認識し、
 更に、アジア太平洋地域における人口増加圧力は世界でもっとも高く、世界の陸地総面積の23パーセントに世界人口の58パーセントが生活していること、貧困ライン以下で生活している人口のうち3分の1は極貧にあること、本地域の生態系の多様性が非常に脆弱であること、低開発及び持続不可能な開発が環境劣化を招いていること、目下のところ2020年にはアジア太平洋地域の都市人口は総人口の55パーセントに増加することが見込まれ、それが都市部のインフラに過剰な負担をかけ、公害、住居、栄養、健康並びに衛生問題を悪化させるであろうことを認識し、
 1995年のアジア太平洋環境と開発に関する閣僚会議に引き続いてESCAPの加盟国、準加盟国、国連機関、アジア開発銀行を含む国際金融機関、及び他の政府間組織による環境上健全で持続可能な開発の追求におけるポジティブな取組の進展、すなわち、環境法及び政策の改定、環境面の遵守と執行の分野での機構強化、より大きな説明責任と透明性を有するための意思決定プロセスの改善、環境管理を統括する組織の能力向上に向けた活動、域内の各国による国別保全戦略と国別アジェンダ21の策定、公衆の意識啓発、教育、研究及び訓練、災害管理、再植林への取組の強化、新たな保護地域の設定や河川や湿地の再生計画の公布による生物多様性の保護活動の強化、オゾン層の保護における持続可能な政策の促進、有害廃棄物管理、自然遺産保護及び大気汚染及び水質汚濁の削減のための政策イニシアティブ、様々な利害関係者の参加、とりわけビジネス分野、NGO、科学者や学術界、女性、青年の参加の促進、及び環境劣化を防止、管理及び緩和する活動の追求を認め、
 グローバリゼーションのプロセスの加速、貧困の存続、先進国とほとんどの途上国の対立の増大と環境劣化の継続を踏まえ、持続可能な開発の世界的な達成のための行動計画としてのアジェンダ21の包括的実施は依然として非常に重要であり、今やこれまでになく喫緊のものとなっていることを強調し、
 更に、グローバリゼーションと貿易自由化が持続可能な開発に向けた新たな好機をもたらしている一方で、それらが環境劣化を悪化させうることを強調し、
 本地域の開発途上国の多くが十分な財源、環境保護・環境管理プログラムを実施するために必要な技術及び人的資源を欠いていること、最貧国、内陸国や小島嶼開発途上国を含む本地域の途上国によりお互いに同意できるような好意的かる特恵的及び緩和された条件での環境上健全な技術の移転を行う切迫した必要性があること、さらに、環境上健全な技術を評価、採用、管理及び適用するための国内の能力構築を強化する必要があることを認め、
 アジア太平洋地域の国民及び政府の、個別にあるいは集合的に地域の全ての資源を正しく活用し、環境上健全で持続可能な開発へ向けた協調した努力にできるだけ早期に乗り出す意思と決意、及びアジェンダ21第33章に従った政府開発援助の拡充に向けた先進国の約束を念押しして、
 以下を宣言する。

21世紀のアジア太平洋地域の環境と開発に関する課題
1.国連環境開発会議以降の8年のうち、アジア太平洋地域の環境の状況は悪化してきた。環境の悪化と貧困の根本的原因に対処するため、我々は、国家レベルでの環境上健全かつ持続可能な開発のための本質的な必要条件としての人口管理、人の健康保護、貧困の軽減、環境管理と資源の合理的利用に関する国家政策の策定、適用、実施及び統合にコミットする。更に、本地域の国々は、環境上健全かつ持続可能な開発を達成する手段として、環境の保護及び管理を開発プロセスに統合する措置及び環境と開発の全ての分野における地域及び準地域協力の強化及び推進のための措置を講ずる必要がある。この実施に当たっては、我々は市民、特に女性、青年及び子供、非政府組織、地方自治体及び民間セクターの、本地域の環境の保護及び管理への最も適切な参加を得るよう努力する。
2.国連環境開発会議以来、多国間環境条約の発展における成果は著しいものがある。これに関連して、我々は、環境と持続可能な開発に関連する国際条約及び協定に関する進行中及び計画された交渉において迅速な結論を得ること、並びに関連する既存の国際環境条約への全ての国々の参加を確保することにコミットする。我々は全てのESCAP加盟国及び準加盟国・地域に対し、全ての関連条約に、とりわけ、バーゼル条約とその改正に批准することを促す。さらに、環境関連条約及び国際条約に由来する活動の間の相乗効果をより強め、促進すべきである。
3.経済発展、人口増加、天然資源の使用及び環境保護における至当なバランスの維持は、持続可能な開発にとって大変重要である。我々は、経済的措置、規制的措置、啓発や教育を含む適切なポリシーミックスの実施を通じてより持続可能な生産消費パターンに移行する必要がある。我々はまた、市場メカニズムを効果的に用い、地球環境問題に関するビジネスと雇用の機会を増やす方策を見出すべきである。
4.貿易と環境に関する政策は相互支持的であり持続可能な開発を促すものであるべきである。環境目的の貿易措置は恣意的あるいは正当化されない差別、または国際貿易における偽装された障壁の手段として用いられるものであってはならない。さらに、最貧国の持続可能な開発のための能力の強化を促すよう対策が講じられるべきである。
5.持続可能な開発の政策を展開するにあたって必要不可欠な手段は、環境の現状と傾向の正確な評価である。このため、我々は科学的データ及び掘り下げた評価が必要な分野を特定し、これらの問題に対処するための情報技術といった近年の技術的進歩の最大限の活用を確保し、これらの分野における問題解決において用いられる革新的技術を開発することの重要性を確認する。我々は、環境関連分野における現象の解明を助ける科学的研究及び評価を進めるとともに、地域の持続可能な開発のためにその成果を最大限活用して政策オプションを策定する科学的研究及び評価を進めることをESCAPの全ての加盟国及び準加盟国・地域並びに関連国際機関に要請する。

持続可能な開発に向けた資金供給
6.現行の能力開発への取組を有限な資源の効果的かつ効率的な利用ならびに地域的及び準地域の協力に焦点を当てて見直す必要がある。
7.我々はESCAPの加盟国及び準加盟国、援助国、関連国連機関、国際金融機関及び他の政府間機関に対して、十分な資金の供給、ならびに地域、準地域の行動計画及び国別行動計画の実施のための最新技術を含む環境上健全な技術の移転を促進するよう要請する。民間部門の投資が持続可能な開発への主要な貢献の一つとなり続けるであろう。
8.我々はさらに、先進国に対し政府開発援助に関する国連環境開発会議での約束を尊重するよう求め、技術移転が果たされ、追加的な資金及び他の資源が開発途上国及び経済移行国に利用可能となるよう求める。我々は国際金融機関における譲許的な資金の早期増資を支持する。我々はまた、援助コミュニティーの十分な参加のもと、持続可能な開発に向けた国レベルの取組を資金的に支援するような革新的かつ新たに出てきたコンセプトを通じ、国レベルの環境基金の設立を奨励する。その他の資金源について、我々は、国連開発計画、国連環境計画、世界銀行といった実施機関やアジア開発銀行のような地域機関の関与を通じ、またESCAPの支援により、地球環境ファシリティのプロジェクトの実施に際する地域の参加を強化することを決意する。

アジェンダ21と2001-2005年環境上健全で持続可能な開発のための地域行動計画
9.我々は、2001-2005年環境上健全で持続可能な開発のための地域行動計画を、アジア太平洋地域の持続可能な開発という共通の目標を達成するための合理的かつ実行可能な手段として採択し、地域内の各国の各々の事情に応じて、同計画を実施するための措置を講ずること、またこの目的のため、地域、準地域及び国レベルにおいて制度的な枠組を強化し、能力開発を促進することを決意する。
10.1997年6月に開催された第19回国連特別総会は、2002年までにアジェンダ21の実施のため、全ての関係者の貢献と責任を反映した持続可能な開発国家戦略を策定し、充実を図ることを呼びかけた。我々は、地域内の多くの国がそのような取組を実施していることに留意する。我々は、それらの取組をさらに合理化し、実施を促進する手段として戦略的環境管理を適用することを奨励する。我々はまた、紛争により影響を受けた地域の環境破壊を調査する必要性を記す。
11.都市の環境問題は将来、地域内においてますます重要な役割を演ずる。我々はクリーンな環境のための北九州イニシアティブを、地域行動計画の実施のための実際的かつ焦点を絞った取組として承認する。同イニシアティブは、北九州市及び他の都市の過去の経験から可能な範囲において学びうるよう、大都市及び中規模都市における大気及び水質汚染、廃棄物処理、都市緑地の形成、持続可能なエネルギーならびにその他の環境管理及び持続可能な開発に関する問題にねらいを置いている。
12.我々はまた再生可能なエネルギーの導入促進の必要性を認め、先進国からの資金と技術の移転を図るための早急な援助とパートナーシップを呼びかける。
13.効果的な実施を確保するため、我々は、その優先度の分析を含め、この宣言と地域行動計画の実施状況を定期的にレビューすることを決意し、このため、ESCAPの事務局長にESCAP総会による検討のため年次進捗報告書を同総会に提出することを求める。我々は、この評価作業において国連環境計画、アジア開発銀行、世界銀行及び他の関連機関の参加を促す。また我々は、国連環境計画に対し、そのアジア太平洋地域事務所を通じ、同管理理事会にこの進捗を適宜報告することも求める。
14.地域の持続可能な開発の追求にあたって、全ての利害関係者の参加を最大のものとするため、我々は、環境上健全で持続可能な開発に関する意識向上のため世界環境デーなどの機会を最大限活用し、NGO、民間セクター及びそれ以外の青年などの関心を有する団体に地域行動計画の下のプロジェクトの形成と実施に積極的に関与するよう要請する。

国連環境開発会議の成果の10年レビュー
15.国連環境開発会議の成果の2002年におけるレビューは1992年以降の進展を測るための重要な機会となろう。地域内の各国政府はこのレビューの準備に際して主要な役割を担うべきである。このため、2000年アジア・太平洋環境と開発に関する閣僚会議の成果、とりわけ、地域における進展と環境上健全で持続可能な開発を求めるにあたっての優先分野を要約した10年レビューへのメッセージを提出することに同意する。我々は、地球規模の問題の認識向上の重要性に鑑み、リオ+10のアジア・太平洋地域での開催は同地域及び世界での持続可能な開発の実現への原動力をもたらすという我々の信念を強調し、またリオ+10をホストするというインドネシア共和国の寛大な申し出を全面的に支持する。

結論
16.アジア太平洋地域は、ダイナミックかつ活気に満ちた経済に下支えされ、また持続可能な開発に向けた国家レベルの一体性、地域レベルの連携、世界レベルでのパートナーシップの基礎を創り出すように勇気づけられた人々に支えられるような、止まることなく環境の改善が図られる将来像を展望する。この点において、地域の政府と人々は自らが持続可能な将来の設計者となるようコミットする。このビジョンを行動に移す際、地域内の各国は、各セクター、国、世代にまたがる長期的な取組の枠組の下でなすべきことを実施するにあたりリーダーシップを十分発揮することとなろう。
17.我々は、2005年までに、もしくは必要に応じて他の時期において第5回アジア・太平洋環境と開発に関する閣僚会議を開催することに同意する。