報道発表資料

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2011年05月31日
  • 水・土壌

「日本モデル環境対策技術等の国際展開」に係る戦略の取りまとめ及び環境対策技術関連企業の国際展開に資する情報のウェブサイトへの掲載について(お知らせ)

 平成21年度から開始した「日本モデル環境対策技術等の国際展開」事業では、学識経験者、地方自治体、環境産業界及び国際協力関係機関等からなる検討会(座長:北脇秀敏東洋大学国際地域学部教授)において、我が国の技術の国際展開に向けた課題とそれらへの具体的方策を、並行して実施している中国、ベトナム及びインドネシアを対象とした協力事業の状況も踏まえ、検討してきました。今般、その結果を「我が国の環境対策技術等の国際展開に係る戦略」として取りまとめました。また、これまでに収集した各国の環境汚染の状況や法制度、環境対策技術のニーズ等に関する情報を整理し、環境省ウェブサイトに掲載しました。
 (https://www.env.go.jp/air/tech/ine/index.html

1.背景:

 アジア諸国においては、著しい経済成長を遂げる中、大気汚染、水質汚濁や温室効果ガスの排出等の環境問題が深刻化しており、我が国としても、アジア諸国がこれらの環境問題に対処し、持続可能な経済発展を実現するため、国際協力のさらなる展開が求められています。
 このため、平成20年6月に環境省では、「クリーンアジア・イニシアティブ」を提唱し、我が国の公害克服の経験をもとに、環境対策・測定技術、規制体系、人材育成などをパッケージにして普及・展開し、低炭素型・低公害型社会へ誘導するための施策等を進めることとしています。
 また、平成22年6月に閣議決定した「新成長戦略」において、「日本の『安全・安心』等の制度のアジア展開」、「日本の『安全・安心』等の技術のアジアそして世界への普及」が掲げられています。
 今般の東日本大震災の発生を受けて、「新成長戦略」については、現在その再設計・再強化に向けた検討が進められているところですが、一方で、我が国の環境対策・測定技術のアジア諸国への展開が環境産業のみならず、我が国全体の復興と成長にとってますます重要となっていることに変わりはありません。

2.「我が国の環境対策技術等の国際展開に係る戦略」の要点:

戦略の目指すところ

 アジア諸国で深刻化している環境問題への対処や持続可能な経済発展への寄与とともに、我が国の環境産業の海外進出に資する環境整備により、アジアの環境対策技術等の市場における優位性確保、ひいては国内環境ビジネスの活性化を目指す。

我が国の環境対策技術等の国際展開に係る問題点

アジア諸国においては環境管理に係る法制度自体は既に相当高いレベルにあるが、これらの法制度の執行能力が伴わず、実効性が確保されていないため、現地企業に環境対策技術等を導入しようという意欲が高まりにくい。
アジア諸国の現地企業が環境対策技術等を導入したいと考えても、適正な技術についての情報や判断能力がない。
我が国は、これまでのODAプロジェクト等により政策面、技術面の協力をしてきたが、空間的、時間的広がりに欠け、その後の我が国の環境対策技術等の継続的導入につながらなかった。我が国の技術の国際展開という視点が不十分であった。
我が国の環境産業は、設計からアフターケアに至るまで、また性能や信頼性・耐久性の保証を含めた高度な技術のトータルサービスを強みとして展開を図ってきたが、そのため高価格であり、アジア諸国ではODAプロジェクトや日本企業の現地進出に伴う展開以外のモデルを構築できなかった。結果的に装置の売り切り型のビジネスとなり、生産・運転・維持管理の現地化ができず、競争力を失った。

 等

我が国の環境対策技術等の国際展開に係る戦略において中核となる取組

[1]技術・制度・人材のパッケージでの展開
我が国の経験に基づき、技術の開発・普及、法制度の整備、人材育成や組織整備をパッケージでアジア諸国に展開することにより、上記のような問題点の解決を図り、我が国の技術の強みが適切に評価されるレベルにまで各国の市場を誘導していく。
パッケージ施策の具体化にあたっては、環境汚染対策を実施する主体となる汚染物質排出源の企業に焦点を当て、特に、これまでの対応が不十分であり、アジア諸国からのニーズも高い、企業の環境汚染対策実施への支援の充実に重点を置き、各国政府との対話を通じて、それぞれのニーズも踏まえつつ、施策の具体化を図る。
そのアプローチ手法としては、まず、ある程度の対策基盤が整備されているものの十分な成果が得られていない中規模の現地企業をターゲットに選び、その環境管理能力が強化され、適正な環境対策技術等が導入されるようにするための具体的なパッケージ施策を考案するとともに、それを全国展開させていくためのメカニズム作りに向けた提案をしていく。
その際、関係機関による既存の取組と、成果の共有や普及等を通じて、連携を図る。

図1 日本の環境対策技術等の国際展開に係るパッケージ施策のイメージ
[2]我が国の環境産業の海外進出を支援する取組とパッケージ施策の連動
アジア市場における価格競争力の不利を補うために、上記のパッケージ施策と連動し、各国の状況やニーズに応じた適正な技術に関する情報の提供等を強化するとともに、従来のような装置の売り切り型のビジネスモデルではなく、我が国が強みとする技術のトータルサービスがアジア諸国で評価され、展開できる体制を整備していく。
特に、各国の環境管理に係る法制度の動向や技術ニーズ等に関する情報を、今後アジア諸国に進出しようとする我が国の環境産業の企業に提供するとともに、我が国の環境産業が有する環境対策技術や法制度等に関する情報を発信する取組を強化していく。
また、各国の状況に応じたパッケージ施策の中で、我が国の環境対策技術等の強みが適切に評価され、その情報が普及され、技術の導入につながるようにする仕組みとして、各国でもニーズがある技術実証・認証制度の構築について支援していく。
[3]我が国の環境対策技術等の普及に係るアジア諸国との協力関係の構築
[1]の取組として現在進めている中国、ベトナム、インドネシアを対象とした二国間協力事業を通じてパッケージ施策を展開することにより、適正な技術の導入・普及の成果を蓄積するとともに、ASEAN等の多国間で開催される国際会議等でその成果をこれら対象国とも協力して積極的に発信し、各国とノウハウを共有していく。
さらに、パッケージ施策のうち、技術実証・認証制度については、既に国際的な連携や標準化の動きが出始めており、環境産業にとってコスト削減にもつながると考えられることから、「アジア共通の実証・認証制度」の構築に向け、国際的な議論における日本のプレゼンスを向上させていく。また、その方法の一つとして我が国主導のフォーラムの設立も検討する。
[4]戦略の有効性評価に係る調査研究の継続的な実施

 戦略の下で実施される各施策の有効性を継続的にレビュー・評価し、戦略を適宜修正できるようにしていく。特に、海外進出を検討している我が国の環境産業の企業が持つ具体的な課題やニーズ、既に海外展開している我が国の企業や競合他国の企業によるビジネスの状況、技術の生産・運転・維持管理の現地化を行うための技術基盤を提供できる現地の企業・組織の状況等に関する情報収集・分析を行う。

3.環境対策技術関連企業の国際展開に資する情報の環境省ウェブサイトへの掲載:

 「日本モデル環境対策技術等の国際展開」事業の実施状況に関する情報を提供するとともに、我が国の環境産業の企業やそれを支援する地方自治体等にとってアジア諸国に環境対策技術等を展開していくに当たって有益と考えられる以下のような情報を発信することを目的として、環境省ウェブサイトに専用ページを作成しました。

中国・ベトナム・インドネシアにおける環境汚染の現状と対策、環境対策技術のニーズ
アジア地域や国際機関等における環境対策技術の普及に係る動向
我が国の関係機関による環境協力スキーム
リンク集 等

 詳細は、以下の環境省「日本モデル環境対策技術等の国際展開」ウェブサイトを御覧ください。  https://www.env.go.jp/air/tech/ine/index.html

参考


図2 我が国の環境対策技術等の国際展開戦略の全体像と本事業における戦略の展開
連絡先
環境省水・大気環境局総務課環境管理技術室
直通:03-5521-8297
代表:03-3581-3351
室長:岩田 剛和(内線6550)
補佐:高野 厚(内線6551)
担当:重松 賢行(内線6557)