報道発表資料
11月25日(木)・26日(金)に、平成22年度「日本モデル環境対策技術等の国際展開」事業に係る「ベトナムにおける環境管理能力向上に関する共同ワークショップ」(非公開)が下記のとおり開催されました。
1.経緯
アジア諸国においては、著しい経済成長を遂げる中、大気汚染、水質汚濁や温室効果ガスの排出等の環境問題が深刻化しています。アジア諸国と密接な関係を有する我が国は、アジア諸国がこれらの環境問題に対処し、持続可能な経済発展を実現するため、国際協力のさらなる展開が求められています。
このため、平成20年6月に環境省では、「クリーンアジア・イニシアティブ」を提唱し、我が国の公害克服の経験をもとに、環境対策、測定技術、規制体系、人材育成などをパッケージにして普及・展開し、低炭素型・低公害型社会へ誘導するための施策等を進めることとしています。
また、本年6月に閣議決定した「新成長戦略」において、「日本の『安全・安心』等の制度のアジア展開」、「日本の『安全・安心』等の技術のアジアそして世界への普及」が掲げられているところです。
当室では、昨年度から「日本モデル環境対策技術等の国際展開」事業を開始しており、制度や人材とパッケージで我が国の環境汚染対策や環境測定の技術を戦略的・体系的に普及・展開させていくための方策についての検討を実施しております。
対象国のひとつであるベトナム国とは、昨年度から協力事業を実施しており、昨年度に引き続き、標記の共同ワークショップをベトナム国ハノイ市にて開催いたしました。
2.概要
(1)開催日時
- 平成22年
- 11月25日(木)8:30~17:00
11月26日(金)8:30~12:00
(2)開催場所
Fortuna Hotel Hanoi
ベトナム社会主義共和国ハノイ市
6B Lang Ha Street,Ba Dinh District, Hanoi, Vietnam
(3)参加者
日越合計のべ約150名
ベトナム側
- Nguyen The Dong
- 天然資源環境省 環境総局 副総局長
- Hoang Minh Dao
- 天然資源環境省 環境総局 公害防止部 部長
- Pham Van Loi
- 天然資源環境省 環境総局 環境管理科学院 院長
- ほか 天然資源環境省、地方政府天然資源環境部、その他関係省庁、研究機関、企業・NGO等
日本側
- 岩田 剛和
- 環境省 水・大気環境局 総務課 環境管理技術室 室長
- 佐藤 健二
- 大阪府 環境農林水産総合研究所 企画調整部 部長
- ほか 環境省、(独)国際協力機構、(社)海外環境協力センター、
(社)日本産業機械工業会、(社)日本環境技術協会及び日本企業現地法人の専門家
(4)このワークショップは非公開で行われました。
3.会合結果
- 今回のワークショップでは、以下のプレゼンテーションが行われました
- (1)
- ベトナム側から、2002年以降、環境管理に係る法制度や中央・地方の行政組織の整備が進み、官民の意識も徐々に向上してきているが、法令や行政の権限の矛盾、重複や空白、行政組織の人材不足などの大きな課題が残っており、環境管理の公平性や実効性の向上には、これらの課題の解決が必要であることが述べられた。また、JICA等の協力による、タイグエン省におけるモニタリングや立入検査の能力向上、これらに基づく水環境管理計画の策定など、地方政府における環境管理の強化に向けた先進的な取組の状況と今後の課題が、また、最近、地方政府の指導により対策技術を導入した企業による取組の状況と企業側の問題認識が紹介された。
- (2)
- 日本側から、過去の環境汚染対策の経験を踏まえ、地方政府が企業にきめ細かな指導を行うことにより企業による自主的な環境管理を促し、行政との信頼関係を醸成することで、地方政府によるモニタリングや立入検査と相まって、対策の公平性、実効性や効率性の確保を図ってきたことが紹介された。また、ベトナムでの日本の排水処理技術の導入事例、水やエネルギーの回収、汚泥の減容等今後日本の技術の適用が可能と考えられる分野が紹介されるとともに、ベトナムでの適用拡大を図るためには、ベトナム側とのコミュニケーションの強化、ベトナムの実情にあった排水処理プロセスやシステムの適正化が必要であることが述べられた。また、有効な技術について企業に情報提供し、導入普及につなげる方策のひとつとして、技術の第三者実証制度(環境省の「環境技術実証事業」(ETV)等)が紹介された。
- (3)
- 日本側から、環境汚染対策を、企業による対策技術の導入と自主的な環境管理の実施を核として、これを公平で実効ある規制と、技術の開発・提供や企業に対する指導・導入支援とのパッケージにより進めていくことの重要性、そのためのベトナムにおける具体的方策のあり方が提案された。また、ベトナム側から、タイグエン省等をモデル地域にJICAが実施した協力事業の成果をもとにした、環境改善目標の設定、モニタリングと排出源インベントリの作成、これらに基づくパッケージ策の設定という水環境管理計画策定の手法が紹介された。
- (4)
- ポスター展示と、昨年度作成した日本の「産業排水対策に関する技術リスト」により、ベトナムに適用可能な日本の排水処理技術・モニタリング技術が紹介された。
- また、「ベトナムの中央政府・地方政府及び関係機関・産業界において環境管理に係るパッケージ施策を実現するためのメカニズム」に関してパネルディスカッションが行われ、以下のような討議がなされました。
- -
- ベトナムでは、環境管理に関する法制度の歴史が浅いため、法令や行政の権限の矛盾、重複や空白などの課題が残っている。また、企業による対策導入を促進するため、排水課徴金制度や環境保護基金、税制優遇・低利融資といった経済的措置があるが、まだ十分に機能していない。運用も複雑であり、見直しが必要である。
- -
- 短期的には、規制の実効性を、人材の育成と、公平で確実なモニタリングや立入検査によって確保していくしかないが、長期的には、行政が企業にきめ細かな指導を行うことにより企業による自主的な環境管理を促すとともに、市民の環境意識を向上させていくことが重要である。
- -
- 企業に対しては、環境管理は単なる負のコストではなく、例えばモニタリングを行うことで、生産工程の状況が把握でき、その改善によって品質や生産性の向上といった正の効果が期待できることを啓発していく必要がある。
- さらに、ラウンドテーブルディスカッションでは、より幅広い出席者の参加により、以下のような討議がなされました。
- (1)
- 環境管理の実効性を高めていくためには、環境影響評価や施設等の設置申請の際における事前のチェックとモニタリングや立入検査に基づく処分や罰則など事後のチェックを適切に組み合わせていく必要があるが、ベトナムでは、まだこれが発展途上であり、人材も不足している。しかし、行政側、企業側の努力により、環境管理のレベルは、以前に比べれば格段に進歩しており、その手法や技術の成功例や問題点を蓄積して、横展開を図り、その中から法制度等の見直しにつなげていくことが重要であり、天然資源環境省環境総局がその役割を果たしていくべきである。
- (2)
- 適切な環境対策技術・モニタリング技術の導入を進めていくためには、ベトナムにおける気候や企業の種別・規模等に応じ、汚染物質の処理性能や初期コストだけでなく、長期的な維持管理コストや、拡張性、耐久性、アフターサービスなど数値に現れない要素まで含めて、技術が総合的に、わかりやすく実証されるような仕組みが必要である。また、このような技術の導入に対して税制優遇・低利融資等の経済的措置を適切に組み合わせることが重要である。さらに、企業の生産工程や水利用・排出の状況、長期的な生産・設備投資計画なども踏まえ、環境規制に適合しつつ、品質や生産性向上にもつながるような、最も効率が高い技術(真のクリーナープロダクション技術)が導入されるよう、企業とコンサルタント、環境エンジニアリングサービスプロバイダの間のネットワークを構築する必要がある。中央政府では天然資源環境省環境総局が、地方政府では天然資源環境部がその中核を担うべきであり、また、民間のサプライチェーンの活用も有効である。
- 連絡先
- 環境省水・大気環境局総務課環境管理技術室
直通:03-5521-8297
代表:03-3581-3351
室長:岩田 剛和(内線6550)
補佐:高野 厚(内線6551)
担当:重松 賢行(内線6557)
関連情報
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過去の報道発表資料
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