※この記事は、2025年12月6日に開催された第13回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションに基づいて作成されています。
海を守るために山を守る
合同会社もものわは、宮城県石巻市を拠点として、人命と海洋環境を守る循環型森林整備システムの構築に取り組んでいます。この取り組みの大きなきっかけは、3頭のザトウクジラとの出会いにあります。 これは東日本大震災当日の2011年3月11日に小笠原の海で目にした光景です。

私は国内外さまざまな海でダイビングをしており、素晴らしい海洋環境の隣には素晴らしい陸地の生態系があることを感じていました。
震災後に宮城県石巻に移住し、今の活動フィールドである桃浦(もものうら)という場所で、「山が枯れたら海が枯れる」という言葉を耳にしました。
その言葉を聞いた瞬間、私が大切にしている海を健康に保つためには、山の健康を意識する必要があることに気づきました。そこで、山に対する具体的なアプローチを実現するために法人を設立し、現在の活動が始まりました。

荒廃人工林の整備を中心に事業を広げる
メインの事業目的は放置されて荒れてしまった人工林を間伐して整備することです。しかし、活動を進めるとさまざまな課題に直面しました。

土地の所有者が細切れになっていて調整が難しい地権者の問題や、せっかく間伐した木材がなかなか価値として評価されない問題があります。
さらに、間伐をして林床が明るくなると下草が生えてきますが、それを鹿に食べられてしまう食害の問題もあります。
やればやるほどいろいろな課題が出てきましたが、それらに対応する形で一つ一つ事業を構築してきました。

広く学びの場を提供する
まず、そもそも海と山の現状を知っている方はまだまだ少ない状況です。そのため、企業の研修や高校生の探求学習などを通じて、さまざまな方に日本の森の現状や課題を森の素晴らしさと共にお伝えしています。
自然に親しむために、樹木の香りを抽出してルームスプレーや化粧品を作るなどの森林資源を活用したワークショップも展開しています。

災害救助に特化したチェーンソートレーニングプログラムも開発し、主に消防のレスキュー隊に提供しています。このプログラムの内容は、山の中で間伐が必要な木を私が先に伐り倒し、災害現場に近い状況を林内に再現します。それをレスキュー隊が実際に伐るトレーニングを行うことで技術を高めていくというものです。
彼らがトレーニングをすればするほど、間伐が進んでいくという仕組みになっています。レスキュー隊だけでなく、一般の方からチェーンソーの指導の要望があれば、同様のプログラムを提供しています。

あますことなく間伐材を活用する
せっかく伐った間伐材や林地残材も価値を高めていきたいと考え、間伐した杉の球果を使用した杉のハーブティーを商品化しました。
現在は飲食店を中心に展開しています。海外からも少しずつ引き合いがあり、台湾のカフェやシンガポールのシェフからもお問い合わせをいただいています。来年早々には、シンガポールに伺う予定です。
また、木材の部分も無駄にしたくありません。そこで、オフィスデザイナーさんと協働し、都内のオフィスを中心に、地域の職人と共に木材を加工して施工させていただいています。

森林浴と森林整備を掛け合わせられないかというチャレンジもしており、森林整備をしながら森林浴の効果も狙っていくプログラムを開発し、今、実験的に進めています。
さらに、シェフと共同して「食べられる森運動」という取り組みもスタートしました。具体的には、食べられる樹種として山椒などを植え、シェフにその木のオーナーになってもらいます。その木から採れた素材を使って、お客様に料理を提供していただきます。
ただ食べるだけでは意味がありませんので、食を通じて森林の現状などを私からお伝えするイベントも行っています。

循環型ハブの知見を国内外に広げる
事業スキームは、一覧表のような形で整理しています。
私たちを中心に、森林と海と社会がぐるぐる回るようなハブの機能を展開するイメージで活動しています。その循環が回っていく先に、さまざまな価値が生まれることを狙って、日々、一生懸命走っている状況です。

こうした取り組みを続けていると、徐々に間伐が進んでいきます。今、明るい山が、少しずつ広がってきました。

現在の活動フィールドは東北が中心ですが、来年から北海道にも展開予定です。さらに日本の広いエリアに広げていきたいと考えています。
また、杉ハーブティーを通じて台湾やシンガポールなどのご縁もできていますし、森林火災があったハワイやロサンゼルスとの交流もありますので、今後は海外にも活動を広げていきたいと思います。
日本の森林の素晴らしさ伝える活動を海外にまで展開し、森と海の循環を具体的に実現していきたいと考えています。

ただ、まだまだ私たちの力だけでは不十分です。お力添えいただける方がいらっしゃいましたら、お声がけいただけると嬉しく思います。
環境事務次官を務める上田康治氏から表彰される合同会社もものわの森優真氏と森佳代子氏

登壇者:森優真氏(合同会社もものわ 代表)