受賞取組紹介

INITIATIVES

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞 地域コミュニティ部門

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞 地域コミュニティ部門

日本の「明るい農村」を、
MOTTAINAIで再生した15年の軌跡

静岡県浜松市 三ヶ日町観光協会

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞登壇者:中村健二氏(三ヶ日観光協会 会長)

※この記事は、2025年12月6日に開催された第13回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションに基づいて作成されています。

捨てられていたみかんは「ごみ」なのか?

私たち三ヶ日町観光協会は、海と浜に囲まれた町、静岡県浜松市三ヶ日で活動しています。

最初にご覧いただきたいのは、少しセンセーショナルな写真です。

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞

みかんの選別では、虫にやられたり、形が悪かったり、枝傷があったり、台風で枝の傷がついたみかんが捨てられます。こうした光景は、私たちの町にとっては、ごく普通の風景です。

では、初めてこの景色を見た人は何を思うでしょうか。ゴミだと思うのか、それとも、もったいないと思うのか。

私たちにとって、それは良い商品を買ってもらうための選別の結果として出てくるものであり、何の悪い意味もない「ゴミ」でした。だからこそ、そこに特別な罪悪感を持つこともありませんでした。

「もったいない」から始まった挑戦

ところが、あるとき、ニューヨークから来た私たちの仲間は、これを見て「もったいない」と言い、夜になると捨てられたみかんを拾いに行くようになりました。

私は「やめてくれ、恥ずかしいから」と言ったのですが、その出来事をきっかけに、この「もったいない」をどう生かせばよいのかを考えるようになり、行き着いたのが事業化という発想でした。

とはいえ、最初から大きなことができたわけではなく、まずはジュースづくりから始めました。しかし、その際に搾りかすが残ることに気づき、これはまずいと感じました。このままでは別の形で廃棄物を増やすだけだと。そこで、活用方法をさらに探るようになったのです。

その結果、みかんをまるごと100%使い切るところまでたどり着きました。それが、完全液体化みかんです。

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞

受賞と商品化の広がり

第4回グッドライフアワードでは、実行委員会賞を受賞し、それから10年が経ちました。当時は「変なことをやっている親父だ」と言われたものです。

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞

「ゴミを集めて商品化しているらしい」という噂が町に広がり、変わり者として見られていました。誰も拾わないものを高い金額で買い上げて商品化していたので、そう思われても無理はなかったのかもしれません。

しかし、現実には、捨てられていたみかんは次々と商品になり、取り組みは少しずつ地域に広がっていきました。

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞

若者を動かした地域の変化

こうした動きが広がるにつれて、町の空気も変わっていきました。

変わり者扱いされていた親父が、いつの間にかヒーローのように見られるようになり、それを見た若い人たちが「あの親父についていくと面白そうだ」と言って動き始めたのです。

しかも、私が何か指示を出したから彼らが動いたのではありません。若い人たちは自分たちで課題を見つけ、「会長、浜名湖を汚してはいけませんよね。消毒を使うのはやめましょう」などと、次々と活動を形にしていきました。

みかん畑は斜面にあるため、雨が降ると肥料が土に流れ込み、最終的には浜名湖へと流出してしまいます。それを防ぐために始まったのが、草を生やして土壌を守る草生栽培でした。

そして、この取り組みを事業として広げていくために、三ヶ日町観光協会では移住者のための「みかんの学校」を開設しました。

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞

外から来た人たちは現場を見たことがないので、「こうやってみかんを作るのですね」と言いながら、その方法を学び、実際に取り組んでくれています。

地域課題を資源に変える発想

新幹線の車窓から見える浜名湖は、穏やかで広々とした湖ですが、実は大切なアサリの産地でもあります。

漁協さんたちはアサリを育てるために稚貝をたくさん撒きます。今、温暖化の影響で浜名湖の水温も上がっていますので、そこへ黒鯛が温泉気分でやって来ます。黒鯛にとって浜名湖は、稚貝食べ放題のリゾートです。漁師さんたちは「黒鯛を獲ってください」と言うので捕獲します。実際、それで数は減るのですが、問題はそのあとです。

捕った黒鯛をどうしたらよいのかが分からない。畑に捨てるわけにもいかず、観光協会に「何とかしてくれ」と相談が来ました。

私たちはホテルやレストランとも関わりがあるので、何か方法はないかと相談を重ねた結果、「黒鯛の醤油を作りましょう」という案が出てきました。つまり、黒鯛を魚醤として商品化し、地域の新たな資源として活かす道が開けたのです。

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞

自発的に広がる活動と未来への継承

私たちの町には、以上のような事例が山ほどあります。

これらの事例は、観光協会長が命令して行なっているわけではありません。面白い親父の背中を見て、みんなが自発的に動き始めて、オールスター戦になってしまった結果なのです。

すると、今度は、活動に関わったお父さんやお母さんの子どもたちが、学校でも活動を始めるようになりました。

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞

10年前に第4回の賞をいただいてから、この小さな町の観光協会を中心に、町全体がこのような状態になりました。これが、我々のDNAなのだと思います。

10年後、20年後の未来をどう作っていくのかということを子どもたちに託す。それが、環境問題の解決にもつながっていくのです。

こんな変態親父の言うことを面白がる若者がいっぱいいる。その親父たちの背中を見ている子供たちもたくさんいる。これが、農村のあるべき姿だと思います。

ぜひ、三ヶ日に遊びに来てください。

第13回グッドライフアワード 環境大臣賞環境事務次官を務める上田康治氏から表彰される三ヶ日観光協会の中村健二氏

【受賞取組の現場訪問】

グッドライフアワードでは、2026年2月11日(水)に静岡県浜松市の三ヶ日町観光協会の活動現場に訪問させていただきました。

「三ヶ日みかん」で有名な三ヶ日町の観光協会会長である中村健二さんは、廃棄されていた間引きみかんを酵素技術を用いて皮ごと丸ごと液状化し、食品や化粧品の原料として活用する取り組みによって、10年前、第4回グッドライフアワード実行委員会特別賞を受賞しました。その後中村さんは、みかんの他にも、食のもととなる自然資源のうち、通常捨てられてしまう部分についても、同じように酵素技術によって資源として捉え直し、「川上ロス」の削減に努めているといいます。

そのうちの1つが、浜名湖のクロダイです。クロダイは、アサリの稚貝を食い荒らすだけでなく、漁師が捕獲しても、食べられない・売れないため、ほとんどが捨てられていました。中村さんは、これを丸ごと液状化して魚醤を開発しました。浜名湖を全面に臨む「ホテルリステル浜名湖」の一室では、浜名湖の未利用魚を使った自家製の魚醤を製作しており、ホテルのレストランでのオリジナル料理に使われています。

中村さんは、浜名湖の水質保全の大切さについても、「みかんの学校」の活動等を通して伝えています。「みかんの学校」では、農薬の使用を最小限に抑えた草生栽培を行っており、みかんの木の周りに生えるフカフカのナギナタガヤが、土壌の流出を防ぎ、浜名湖の環境保全につながっているそうです。三ケ日町に一面に広がるみかん畑には、ところどころに草が生え、その取り組みの様子がうかがえます。中村さんが第4回グッドライフアワードを受賞したことをきっかけに、地域のために行動を起こす若者も増えたそうです。中村さんに案内いただいた取り組みの現場では、行く先々で、「健二さん、健二さん」と親しみを込めて声をかけられる姿が印象的でした。

丁寧かつ熱く取り組みを語ってくださった中村さまや三ヶ日町の皆様に感謝申し上げます。

環境省 地域政策課

第13回 グッドライフアワード

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