※この記事は、2025年12月6日に開催された第13回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションに基づいて作成されています。
公共調達が動かした17年
佐賀市役所の山口和海です。私は市の職員ですが、環境や森林の部署にいるわけではありません。総務部で公共調達を行う部署に在籍しながら「木になる紙」の全庁調達を一斉に始め、今年で17年目になります。

私たちの取り組みを一言で表現するならば、紙の地産地消です。山で放置されていた未利用間伐材を活用し、紙製品として商品化を行い、購入して使用します。
その特徴は、購入売上の一部に還元金が含まれている仕組みであるということです。間伐材の出荷販売代金に加えて還元金が支払われることで、森林から意欲的に間伐材が出されるよう後押ししています。
間伐材を活かす仕組み
間伐に着目した理由は、間伐が行き届かず荒れた森林が多いという現状にあります。健全な森林を取り戻すには、間伐によって森に適度な光を差し込み、樹木を健全に育てる必要があります。その結果、CO2の吸収量も高まります。

「木になる紙」は九州の未利用間伐材を原料とした各種事務用品のブランドで、コピー用紙に始まり、封筒や印刷用紙などの商品展開をしてきました。開発・供給者は「国民が支える森づくり運動」推進協議会で、官民協働プロジェクトという位置づけです。
合併が示した山と海の責任
佐賀市は「木になる紙」の誕生時から、この活動に取り組んできました。その背景には平成の市町村合併があります。合併により北部2町1村と南部4町が一つとなり、市域の大きな割合を森林が占めるようになりました。
一方で南部には有明海という貴重な水産資源があります。旧町村に配慮した佐賀市の一体感を醸成するとともに、森林の間伐対策と有明海の環境維持を両立する必要があります。山から海まで一体的な政策運営が求められている状況です。

公共調達の目的は、全庁で率先して調達し、社会的な普及と利用拡大を促すことです。佐賀市は、そのモデル都市として取り組んでいます。
利用が拡大すれば還元金が森林へ戻り、中山間地域の活性化にもつながります。森林整備が進めば水源涵養機能の向上が期待でき、CO2吸収量の増加にも結びつきます。
数値が証明する地域循環
取組開始から5年が経ち、市の農林水産部門の協力を得て地元産間伐材の供給体制が整いました。その結果、「佐賀の森の木になる紙」という新たなブランドが誕生し、紙の地産地消が強化されました。
佐賀市単独ではなく、県内自治体との連携により横展開を進め、現在は県外にも広がっています。

住みよい社会づくりを目指す中で、「木になる紙」は地域振興のためのツールの一つとして機能しています。
政策効果は数値にも表れており、森林整備によるCO2吸収量は約4,487トン、還元金の実績額は約2,560万円です。これらは、いずれも継続的な公共調達の積み重ねによって生まれた成果です。
価値が連鎖する社会へ
4年前から炭素取引にも取り組み、製品に付加されたカーボン・クレジットの調達実績分を無償で取得して市のCO2総排出量と相殺しています。
九州で始まった取組は東日本へと展開し、滋賀の琵琶湖周辺や愛媛、大阪などへも広がるとともに、企業との連携も進んでいます。

グリーン購入は単なる環境配慮物品の購入ではなく、環境という価値が付加価値を結びつける仲介役となります。森林と経済、教育、福祉が連動する総合的な価値の創造が生まれています。
森林環境譲与税も活用しながら、物価高の影響を踏まえ制度を適切に活かしていく必要があります。

昨年は「SDGs 自治体白書 2023-2024」を出版し、本取組についても紹介しました。
そこに込めた思いは、「より良い山々を未来の子どもたちへきちんと引き継いでいくこと」です。

「木になる紙」は紙一枚から始まる思いやりのグリーン購入であり、消費者の目線で誰もが参加できます。共感が共鳴へと広がり、やがて協働へとつながります。

このような積み重ねが共創社会の構想を支え、地域循環の実現へと結びついていきます。みなさん、私たちと一緒に「木になる紙」に取り組んでみませんか。
環境事務次官を務める上田康治氏から表彰される佐賀市の山口和海氏

登壇者:山口和海氏(佐賀市)