※この記事は、2025年12月6日に開催された第13回グッドライフアワード表彰式における環境大臣賞受賞プレゼンテーションに基づいて作成されています。
子どもの成長とともに生まれる制服課題
NPO法人Mama's Cafeは、日本一暑い町でも知られる岐阜県多治見市にある団体です。今年で24年目になります。

子供の貧困や虐待予防をメインに、親子カフェの飲食事業、親子がゆっくり遊べる広場事業など、幅広く事業を展開しています。

Mama's子育てセーフティネット圏を作ることで、24年間、ママたちの「あったらいいな」を形にしてきました。

このように子育て支援を展開する中で、制服バンク事業の立ち上げに至りました。
まずは、ここで質問です。中学校の入学式で152cmの男の子は、3年後の卒業式では何cmになっているでしょうか?

答えは167cmです。平均15cm以上伸びています。私より身長が低かった子供たちは、私を見下ろすぐらいの大きさになっています。その時に必ず購入するのが、制服です。

2つ目の問題です。中学校の制服の価格は、いくらでしょうか?

制服代は、約8万円にもなります。冬服が5万5000円、夏服が2万5000円です。今年のセーブ・ザ・チルドレンの調査結果では、新入学の中学1年生、高校1年生の保護者の約8割が、この制服代を非常に負担だと感じていると言われています。

制服を循環させる新しい選択肢
今の児童は、学校内ではジャージで過ごします。つまり、通学にしか着ないものを買わせています。学校によっては、始業式と卒業式にしか着ないものを買わせています。もったいないです。この制服を循環させたくて、3年前の2022年、リユース事業を立ち上げました。

この制服リユース事業を始めて、見えてきたことがあります。私たちは、8万円の制服を3,000円で販売したのですが、それさえも買えなくて500円のボロボロの制服を買う子たち、制服そのものを買えない子たち、3年間ずっと同じ制服を着るためにブカブカの大きすぎる制服を購入する方たちがいます。そして、制服業者さんの反発です。

そこで閃いたのが、Mama's制服バンク事業です。リユース販売は民間でも結構ありますが、新たな発想で「サブスク」と「制服オーナー制度」を取り入れた制服バンクのビジネスモデルを考えました。

サブスク制度は、月額1,078円で、3年間、制服を何回でも交換できます。サイズもぴったりな制服に調整することが可能です。家計にとっても助かるという仕組みを作りました。男の子は身長が20cm以上伸びることも当たり前ですので、保護者さんからは「すぐ大きくなるから何回も交換できてありがたい」という声を頂いております。

そして、2つ目の制服オーナー制度です。地域では、経済的困難を抱えた家庭がますます増えていると肌で感じています。しかし、ありがたいことに、地域では「子供たちに対して何か貢献したい」という企業や個人の方がいらっしゃいます。このような方々に制服オーナーになっていただき、ひとり親など経済的困難を抱えた家庭に対して新品の制服一式にかかる費用を負担していただきます。

これによって、本当に制服を必要としている子供たちに制服を届けることができています。そして、制服業者さんの売上にも貢献させていただいております。
私たちの活動が口コミで広がって、リユース販売の利用者数は3年で5.7倍になり、市内の中学1年生の1割が私たちのリユース制服を着てくれるようになりました。それまでの制服購入では、新品購入の一択のみでしたが、リユース制服という新たな選択肢ができました。

そのリユース制服は、市内の小中学校のPTAの力を借りて回収しています。回収した制服は、丁寧にクリーニングを行なっています。このクリーニングは、市内の障害者施設の皆様にお願いしています。昨年は約600着もの制服をクリーニングしました。雇用創出にもつなげて、地域で循環させています。

制服バンクで環境と社会に良い暮らしへ
環境への貢献としては、令和6年度、588枚の制服をリユースいたしました。CO2排出量約15トン、水資源1,352キロリットルの削減という結果が出ています。

今後の展望としては、制服の新品購入一択の社会から、多様な選択肢のある社会を創りたいと思っています。制服のリユースやサブスク、オーナー制度が当たり前の社会へと転換を図っていきたいです。

Mama's制服バンクの仕組みを全国に広げることで、制服の「もったいない」と、制服を買えなくて「困っている人」を少しでも減らし、環境と社会に良い暮らしを提案していきます。
子育て支援のNPOは、日本全国に2万4,000団体あると言われています。私たちは、この団体の皆様に、私たちのノウハウを届けたいと思います。ICT技術の活用による在庫管理システムの体系化・マニュアル化を推進するとともに、今回の受賞を契機として発信力を強化し、子育て支援NPOとして事業を営んでいる2万4,000団体への展開を進めていきます。

そのために、連携強化、いわゆるアライアンスが必要だと思っています。行政の方、そして民間の方たちには、私たちが1番弱いICT技術などを提供してもらい、地域の保護者の方を巻き込みながら、どんどん広げていきたいと思います。
私たちは、子どもたちの「いってきます」を支えるMama's制服バンクを、今後、あなたの町で広げていきたいと願っています。

ぜひ皆さん、力を貸してください。
環境事務次官を務める上田康治氏から表彰されるNPO法人 Mama's Cafeの山本博子氏
【受賞者取組の現地訪問】
グッドライフアワードでは、令和8年1月31日、実行委員会の藤野委員と共に、岐阜県多治見駅近くの『Mama's cafe』を訪問しました。
訪問当日は、年に数回の制服等のリユース販売会が行われていました。試着用のテントや陳列・ポップアップ等に工夫が凝らされ、来場者が笑顔で買い物を楽しんでいらっしゃる様子が伺えました。
また、回収した制服を保管する倉庫も見学させていただきました。制服は社会就労センターでクリーニングされ、学校やサイズ、状態等を分類した上で、日焼けしないよう整理して保管されていました。状態は5段階(Aきれい〜E使用感あり)になっており、段階に応じ値段が異なります。
困窮家庭を含む子どもたちの「いってきます」を支えるというコンセプトの下、低廉な価格に抑えながらも、しっかり"持続可能な"事業としていくための工夫や検討の苦労が垣間見えました。
『制服バンク』の大きな特徴はリユース販売のみならず、サブスク(月額料金で制服を利用・交換できるサービス)や制服オーナー制度(困窮家庭を対象とした新品制服の購入補助)など、多様な取組を行っている点です。
中学生は成長期と重なり、3年間で身長が大きく変わることも珍しくないため、身体に合った制服を常に着用できるサブスクは多くの方に喜ばれるのではないかと感じました。
また、昨今リユース品の利用も一般的となっていますが、併せて制服オーナー制度を通して新品制服の需要も創出することで、地域の経済循環を促しており、『制服バンク』の取組はまさに環境×社会×経済課題の課題を同時に解決する"ローカルSDGs事業"であると言えると思います。
Mama's cafeは皆子育て経験があり、様々なスキルと想いを持つ女性30名程で運営するNPO法人で、今回の受賞取組である『制服バンク』を含め9つの事業を実施されているとのことでした。
あらゆる側面から子育てに関係する困りごとに対応しており、様々な事情を抱える人々の心の拠り所として25年も活動を継続されていることに、心より敬服いたします。
環境省 地域政策課

登壇者:山本博子氏(NPO法人 Mama's Cafe 理事長)