Summary
環境と社会によい取組を表彰するグッドライフアワードは、今年度で13年目を迎えました。累計で約2200件を超える応募をいただき、環境大臣賞と実行委員会特別賞を合わせて394件の受賞取組を輩出しています。
2025年8月21日にオンラインで開催した「サマーセミナー」では、昨年度の第12回グッドライフアワードの受賞取組から、環境大臣賞を受賞した青山商事株式会社の執行役員 ESG推進・コーポレート本部長兼総務部長の長谷部道丈氏、実行委員会特別賞を受賞した大妻女子大学の家政学部被服学科教授の吉井健氏と学生の皆様、同じく実行委員会特別賞を受賞した徳島県立那賀高等学校エシカルクラブの皆様に登壇いただき、取組内容の紹介とグッドライフアワードの受賞効果について発表いただきました。
本アワードの総合プロデューサーを務めるBBT大学教授の谷中修吾氏からは取組事例の注目ポイントについて解説がなされ、ご出席の実行委員からは各取組への激励メッセージが送られました。
以下、サマーセミナーの様子をレポートします。
Opening Remark
環境省 大臣官房 地域脱炭素推進審議官
主催者挨拶は、環境省地域脱炭素推進審議官の中尾豊氏が務めました。グッドライフの輪が確実に広がっていることに感謝を述べるとともに、環境施策の最前線の動きを交えながら地域循環共生圏とグッドライフアワードの関係について説明しました。
グッドライフアワードは、昨年5月に決定された第6次環境基本計画において、最上位の目標であるウェルビーイングな社会を実現するための実践・実装の場としても位置づけられています。
中尾豊氏は、本アワードを通じて全国各地の「環境と社会に良い活動」を発掘・表彰・発信することにより、地域循環共生圏の創出を拡大し、国民一人一人のライフスタイルシフトを進めていきたいと話しました。
Introduction
グッドライフアワード 総合プロデューサー
BBT大学大学院 経営学研究科 MBA 教授 / BBT大学 経営学部 教授
イントロダクションでは、総合プロデューサーを務めるBBT大学教授の谷中修吾氏が、グッドライフアワードの概要を紹介しました。受賞を通じて多くの人に取組を知ってもらうことで、それぞれの取組が拡大するきっかけになっています。
また、環境ビジネスの代表的な切り口として、「脱炭素」「資源循環」「自然共生」があると解説しました。環境ビジネスは、SDGsの達成に直結しています。今回のサマーセミナーでは、特に「資源循環」に着目して3つの受賞取組をフィーチャーし、具体的なテーマとして「衣服の資源循環」を掲げたことを紹介しました。
谷中修吾氏は、今年度のアワード応募を検討されている皆様にとっては、サマーセミナーの3団体の取組が大きなヒントになることを強調し、取組内容のみならず、応募動機や受賞後の展開にも注目してほしいと話しました。
Guest Talk
「終わらない服をつくろう。」お客様と共に歩むグッドライフ
青山商事株式会社 執行役員 ESG推進・コーポレート本部長兼総務部長
【第12回グッドライフアワード 環境大臣賞受賞】
青山商事は、「洋服の青山」「SUIT SQUARE(スーツスクエア)」を運営しているスーツ専門店で、業界の中では唯一47都道府県に出店しています。グッドライフアワードでは、創業60周年記念の1つとして立ち上げた「終わらない服を作ろう」という取組で環境大臣賞を受賞しました。サマーセミナーでは、執行役員 ESG推進・コーポレート本部長兼総務部長の長谷部道丈氏に登壇いただきました。
アパレル業界では、衣料品が大量生産・大量廃棄されています。焼却すると二酸化炭素の排出にもつながります。青山商事は、スーツのリーディングカンパニーとして環境問題に向き合い、「終わらない服を作ろう」という服のリサイクル活動を「WEAR SHiFT(ウェアシフト)」と定義しました。
全国700店舗以上の店舗に回収箱を設けて、他社のものを含めて不要になった衣類を回収し、店舗から専門業者に一括送付します。すると、回収された服がウールに変わったり、スーツに変わったり、コートに変わったり、素材によってはポリエステルがコップなどの容器に変わったり、様々な形で不要衣類を活用しています。2023年度には、年間の回収量が355トンになり、リユース・リサイクルの割合は99%に上りました。
現在は、リサイクルした素材で製作した防災毛布を自治体へ提供したり、回収された服の量に応じて森林保全活動「AOYAMAの森」を展開したりするなど、環境と社会に良い活動を継続的に展開しています。
Guest Talk
産学連携・環境に配慮した
サステナブルファッション推進プロジェクト「マールトウキョウ」
大妻女子大学
【第12回グッドライフアワード 実行委員会特別賞受賞】
大妻女子大学家政学部被服学科では、2021年に吉井ゼミがファッションブランドを立ち上げました。国内の様々な企業と共に、環境配慮型の素材の使用、生産方式、商品企画、ECモデル、リアル店舗でのイベントを構築して、広く社会に情報発信を行っています。大妻女子大学の家政学部被服学科教授の吉井健氏と学生の皆様に登壇いただきました。
大学側が商標の登録・管理を行い、学生が商品企画と販売計画を立案・実行して、収益は協力企業側につける形で展開しています。この取組は、教育面だけでなく、SDGs視点で企業の行動変容にも影響を与えることを目的としています。
産学連携企画として「環境配慮型の素材の使用」「余剰生産を生まない受注生産型」「学生主体の商品企画と販売促進」の国産ファッションブランドを展開し、毎年ヒット商品が生まれています。具体的な展開は、担当学生の浦壁さんと関口さんから紹介されました。
プロジェクトでは、企業と連携しながら、商品企画・縫製・生産・販売促進を行っています。これまでに「ららぽーと」「モスバーガー」「豊岡鞄」「東レ」など各社との産学連携プロジェクトを成功させ、「玉川高島屋」では「未来につなぐ国産ファッション展」も開催しました。特に、東レとの連携による日傘では、若年層に対するサステナブル商品として訴求に成功して大ヒットを記録しています。
大規模シンポジウムにおけるプロジェクトの紹介や、テレビ、新聞、雑誌等における活動紹介など、情報発信の実績が蓄積されてきました。今後は、全国の生産者の大規模な参加促進、多くの方々が参加できる場の提供、産学連携による国内外でのECの確立などを目指しています。
今回のグッドライフアワードの受賞を通じて、参加した学生たちは大きな達成感が得られ、社会に出てアパレル業界に就職した後の展開にもつながると評価されています。
Guest Talk
不要となった服を回収し、新たな息吹を吹き込む無料譲渡活動『服活』
【第12回グッドライフアワード 実行委員会特別賞受賞】
平成29年に設立された徳島県立那賀高等学校エシカルクラブは、不要となった服を回収して新たな息吹を吹き込む無料譲渡活動『服活』を展開しています。今回のサマーセミナーでは、企画大臣の䕃山れいか氏、縫製大臣の宮繁鈴々氏、広報大臣の豊川遥希氏、営業大臣の森本天海氏に登壇いただきました。
この活動は、「着なくなった服をどうしたらよいのか」という生徒からの相談をきっかけとして始まり、今年で9年目を迎えました。町内から町外・県外そして海外へと広がりをみせ、累計24,500着の服を譲渡することができています。
また、回収した古着の一部を「古着deワクチン」に提供したり、国際カトリック協会へ寄付する国際支援にも積極的に取り組んだりしています。譲渡できない服はアップサイクルし、リサイクルパネルに加工するなどして、100%再活用を目指しています。
この「服活」を高校3年間の取組にとどめることなく、卒業後もエシカル活動を継続できる場のモデルを構築するため、高大連携や企業連携によってエシカルの環を広めています。先輩たちが決めた伝統を受け継ぎ、企画・縫製・広報・営業などの各分野を担当する生徒を企画大臣、縫製大臣、広報大臣、営業大臣などと呼び、楽しく活動しています。
また、今までの活動を通じて服を廃棄したと仮定して排出されるCO2量や譲渡した服を購入した場合に出るCO2量に対し合計約689.2トンの削減を達成しています。
この『服活』では、グッドライフアワード実行委員特別賞に加え、SDGS探究AWARDS2024審査員特別賞、第10回ACAP消費者志向活動章、第7回とくしまエシカルアワードなども受賞しました。中学校の公民の教科書でも取り上げられるなど大きな反響があり、活動を継続する上で大きなモチベーションとなっているとのことです。
Message
グッドライフアワード 実行委員長
最後に、グッドライフアワードの実行委員長を務める益田文和氏が登壇し、3つの取組の素晴らしさを指摘するとともに、今後の活動に向けて熱いエールが送られました。
また、グッドライフアワードの意義について触れつつ、応募検討中の皆様に向けて激励となる温かいメッセージが送られました。
グッドライフアワードは応募者であるみなさんが主役です。第13回グッドライフアワードでも、たくさんのご応募をお待ちしています。是非、ご検討ください。
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