ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

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ZEBを実現するための技術

ZEBを実現するための技術は、大きく「エネルギーを減らすための技術(省エネ技術)」と「エネルギーを作るための技術(創エネ技術)」に分けられます。さらに省エネ技術は、「建物内の環境を適切に維持するために必要なエネルギー量(エネルギーの需要)を減らすための技術(パッシブ技術)」と「エネルギーを効率的に利用するための技術(アクティブ技術)」に分けることができます。
実際にZEBを実現する場合には、①パッシブ技術によってエネルギーの需要を減らし、②どうしても必要となる需要についてはアクティブ技術によってエネルギーを無駄なく使用し、③そのエネルギーを創エネ技術によって賄うといったステップで検討することが重要です。
また、建物の運用段階では、どこにエネルギーの無駄が発生しているか、どのように効率的に設備を運用するかなど、エネルギーをマネジメントする技術(エネマネ技術)も重要です。このエネマネ技術によって継続的なエネルギー消費量の削減を図ることができます。

ZEB実現のための3つのステップ

ここでは、一般的な建築物においてZEBを実現する上で特に重要となる技術として以下について概要を紹介します。
なお、技術のより詳細な情報を知りたい方は、「ZEB設計ガイドライン」もご覧ください。

ZEB実現のために特に重要な技術

PASSIVE(パッシブ技術)

■外皮断熱

外皮断熱とは、建物の室内と屋外の境界となる外皮(壁、床、屋根、窓等)部分を、熱が伝わりにくい(熱伝導率が低い)素材でできた断熱材を用いて施工することで、熱の出入りを抑制し、無断熱の建物に比べて室内温度を快適に保つために必要なエネルギーを少なくする技術です。
夏期には日射熱等の侵入を防ぎ、冬期には室内の熱が外へ逃げてしまうことを防ぐことで、冷暖房にかかるエネルギー消費効率を高めるとともに、建物の表面温度と室温の差を少なくし、室内の温度差や温度むらを小さくすることができます。

断熱材による効果のイメージ
外皮断熱による効果のイメージ
【壁等の高断熱化】

ZEBの実現に向けては、消費エネルギーが大きいとされる空調の負荷を低減するために、壁、床、天井等の外皮部分に高性能な断熱材を導入することが有効です。
断熱材には、大きく分けて繊維系と発泡系の2つがあり、いずれも熱を伝えにくいという気体(空気等)の特性を利用しています。
繊維系の断熱材には、ガラスを溶かして繊維状に加工した「グラスウール」、高炉スラグや玄武岩等を溶かして繊維状に加工した「ロックウール」、古紙を再利用した「セルロースファイバー」があります。これらは価格が比較的安価で施工性にも優れ、広く普及しています。一方で、断熱性能を十分に発揮させるためには、壁体全体として適切な防湿・気密設計を行うことが重要です。

発泡系断熱材には、「押出発泡ポリスチレン」「ビーズ法ポリスチレン」「硬質ウレタンフォーム」「フェノールフォーム」などがあります。これらは高い断熱性能を有し、板状製品のほか現場吹付けタイプもあり、用途に応じて選択されています。近年では、より薄い厚さで高い断熱性能を実現できる材料も開発・活用が進んでいます。

断熱材の主な種類とその熱伝導率(物性値)
断熱材の主な種類とその熱伝導率(物性値) 出所)「平成28年省エネルギー基準(平成28年1月公布)関係技術資料 エネルギー消費計算プログラム(非住宅版)解説Ver.3.3.2(2023年1月)」,p.48より作成
【窓の高断熱化・遮熱】

建物の開口部は、外皮の中でも最も熱の出入りが多いことから、断熱性能が高いガラスの窓を採用することで、熱の出入りを抑制することが重要となります。
断熱性能が高い窓ガラスとして代表的なものに、複層ガラスが広く普及しています。複層ガラスとは、一般的に2枚のガラスの間に中空層を設けて、そこに熱伝導率が低い乾燥した空気や、より熱伝導率が小さいアルゴンガス・クリプトンガスを封入することで、断熱性能を高めたものです。
近年では、Low-E(低放射)膜を用いた複層ガラスが主流です。Low-E複層ガラスは、2枚のガラスのうち1枚のガラス面に特殊な金属膜をコーティングすることで放射熱の伝達を抑制する技術です。Low-E複層ガラスには「断熱タイプ」と「遮熱タイプ」の2種類があり、断熱タイプは室内側にLow-E複層ガラスを用いることで、冬に室内の熱を逃がさないようにします。一方、遮熱タイプは室外側にLow-E複層ガラスを用い、夏の強い日差しを反射して室内の温度上昇を抑えます。

複層ガラスの種類と特長
複層ガラスの種類と特長 出所)パナソニック株式会社ホームページより

■日射遮蔽

日射遮蔽とは、屋根や外壁、窓から侵入する日射を遮蔽し、冷房負荷を抑制するための技術です。
特に、夏期には、一度室内に日射(熱)が侵入すると、その熱を冷やすために冷房エネルギーを大量に消費することになるため、快適な室内環境を実現するためには日射遮蔽技術が重要となります。
日射が室内に侵入してくるルートとしては、窓ガラスから透過して侵入するルートと、屋根や外壁に当たり熱に変わって室内に伝わるルートがあります。前者からのほうが取得する日射熱が高い傾向にあり、窓ガラスにおける日射遮蔽対策が特に重要となります。
一方、冬期においては、日射熱を取り込めたほうが暖房負荷の抑制につながります。また、夏期においても照明エネルギーの削減の観点からは、昼間の自然光(昼光)をうまく取り入れたいというニーズもあります。このように、夏期の冷房時には日射熱の侵入を抑制しつつも、冬期の暖房時には取り入れられる、日射熱は遮蔽しつつ日照は取り入れるという、相反する要求性能に対応するための対策を考える必要があります。
開口部における日射遮蔽の具体的な対策としては、ブラインドやルーバー、高性能ガラス等があります。こうした対策を効果的に組み合わせれば、上述のような、相反する複数の要求性能にうまく対応していくことができます。近年では、日射条件に応じて自動的に角度を調整する制御型ブラインドや可動ルーバー、グラデーションブラインド(ブラインドのスラットの角度を1枚ずつ制御)なども一部活用されています。

は、基本的に動かすことができませんが、太陽高度や窓の高さを踏まえて、その長さをうまく設計することで、夏の太陽高度が高い日射は遮り、冬の太陽高度が低い日射は取り入れるようにすることができます。また、開口部以外の壁面等においても、日射の反射率の高い素材を採用する等により、日射に対する断熱性と日射反射性を高め、遮蔽性能を向上させることが可能です。

日射遮蔽対策の例(ブラインド、庇)
日射遮蔽対策の例(ブラインド、庇)

■自然採光

自然採光とは、建物の開口部から昼間の自然光(昼光)を取り入れ、室内を明るくし、人工照明(室内照明)の利用を減らしてエネルギー消費量を削減する技術です。
人工照明に使われるエネルギー消費量は、一般的なオフィスビルにおいて、空調で使われるエネルギー消費量の次に多いとされております。昼光を利用し、室内に必要な明るさを確保できれば、照明の消灯や、明るさの調整により、エネルギー消費量を削減することができます。
自然採光の手法としては、空間の上部に開口部(トップライト)を設ける手法や、建物の窓面の中段に「ライトシェルフ」と呼ばれるを設置し、上面で太陽光を反射させ、より多くの光を室内の天井部に取り入れて室内を明るくする手法、内側が高反射率鏡面となっているダクトを天井部に設けて、通常は届きづらい室内奥まで昼光を運ぶ「光ダクトシステム」と呼ばれる手法などがあります。
昼光には、「時間とともに変化する」、「室内の視環境として必要以上の明るさをもたらすことがある」、「熱を伴う」といった特徴があります。このため、利用にあたっては、これらの特徴を考慮して、空間特性や使い方に適した採光手法を取り入れることが重要となります。

例えば、執務室など均質な明るさが求められる用途では、直射光を遮りつつ安定した昼光を取り入れ、温熱環境を悪化させないよう、トップライト等の開口部には採光量を調整できる機構を備えることが重要です。一方、ある程度の明るさの変動が許容されるパブリックエリア等では、「自然」を感じられる変動、ゆらぎのある自然光によって、かえって快適性が高まる場合もあります。

自然採光手法の例(ライトシェルフ)
自然採光手法の例(ライトシェルフ)

ACTIVE(アクティブ技術)

■高効率空調

空調のエネルギー消費を削減するためには、外皮断熱や日射遮蔽などのパッシブ技術により負荷を抑制したうえで、高効率な空調設備の採用と適切な制御を行うことが重要です。特にオフィスビルでは、空調が建物全体のエネルギー消費の中で大きな割合を占めるため、その効率化の意義は大きいといえます。
空調方式は、下表に示すとおり、大きく中央熱源方式と個別分散熱源方式に分けられます。
中央熱源方式は熱源を機械室などに集約して配置し、冷温水を空気調和機に送水して空調する方式です。
個別分散熱源方式は、熱源を分散させて配置し、冷媒配管を使用して熱輸送して各階あるいは空調のゾーンごとに空調する方式です。
一般に、大規模建築物では中央熱源方式、小規模建築物では個別分散熱源方式が採用されることが多くなっています。

空調システムの主な方式とその特徴
空調システムの主な方式とその特徴

いずれの方式も、以下に示す、「熱源設備」、「熱搬送設備」、「空調機設備」から構成されています(個別分散熱源方式では熱源設備と空調機設備が一体化しています)。このため、それぞれの設備について、より効率の高い設備を採用し、適切な制御を行うことで、エネルギー消費量の削減を図ることができます。

  • 熱源設備:熱源設備とは、空調機設備全体の熱負荷を処理するための設備で、空調機設備に送る冷温水、蒸気等を製造する熱源機(冷凍機、ボイラ等)を主体とし、冷却塔、冷却水ポンプ、給水設備などの付属設備からなります。
  • 熱搬送設備:熱搬送設備とは、熱源設備と空調機設備の間で、冷温水、蒸気、冷媒などを搬送・循環させるためのポンプ・配管や、空調機設備と空調対象空間との間で空気を循環させる、あるいは外気を取り入れるためのファン・ダクト等を指します。
  • 空調機設備:空調機設備とは、空調対象空間に送るための温度・湿度等を調整した空気を作る設備で、空気の冷却器・減湿器・加熱器・エアフィルタ及び送風機等が一体化したものです。
【熱源設備の高効率化】

中央熱源方式の場合はチリングユニットやターボ冷凍機吸収式冷凍機等が、個別熱源方式の場合はパッケージエアコン、ビル用マルチエアコン等が熱源機として用いられます。
こうした熱源機・システムの効率は、一般的にJIS規格に基づく「COP(Coefficient Of Performance:エネルギー消費効率)」や「APF(Annual Performance Factor:通年エネルギー消費効率)」によって評価されます。COPは特定の条件下でのエネルギー効率を表し、APFは気温変化等の年間を通しての実際の使用状況を反映したエネルギー効率を表します。熱源機の効率は部分負荷率に応じて変化し、一般に負荷が小さいほど効率は低下します。一方、実際の運転は年間を通じて部分負荷が中心となるため、ピーク時だけでなく年間の負荷特性を踏まえて、機器構成や運転制御を計画することが重要です。 これらのCOPやAPFは近年著しく向上していることから、より高効率な熱源機を採用することで、エネルギー消費量を削減することができます。加えて、地中熱や排熱回収型ヒートポンプなどの活用により、さらなる削減が可能となるケースもあります。

【熱搬送設備の高効率化】

熱搬送に要するエネルギーは流量に比例し、揚程(ポンプが流体を揚げる高さ)の二乗に比例します。また、搬送できる熱量は温度差と流量に比例します。このため、熱搬送に必要なエネルギーを低減するためには下表のような対策が挙げられます。

熱搬送設備の高効率化に関する対策例
熱搬送設備の高効率化に関する対策例
【空調機設備の高効率化】

空調機設備の省エネルギー化に向けては、温度と湿度を分離して制御する潜熱・顕熱分離方式や、人体の快適性に着目した放射冷暖房などの新たな空調システムがあります。従来の空調は主に温湿度を制御して室内環境を調整してきましたが、実際の快適性は、温湿度に加え、気流や放射、着衣量、代謝量などの要素にも左右されます。

放射冷暖房システムは、放射の原理を利用し、室内の表面温度を制御することで建物利用者の体感温度を調整するシステムです。これにより、空気温度の設定を緩和し、省エネルギーを実現することが可能となります。また、従来の空調機システムに比べて、気流のドラフトや温度ムラによる不快感が少なく、適切に設計・制御することにより快適性を実現できるとされています。

高効率空調機システムの例(天井放射冷暖房空調システム)
高効率空調機システムの例(天井放射冷暖房空調システム)

■高効率照明

照明のエネルギー消費を削減するためには、自然採光を活用して昼光を積極的に取り入れることが重要です。そのうえで、不足する明るさを高効率なLED照明で補い、適切な照度を確保しながら消費電力を抑えます。さらに、照明を適切に制御することで、より高い省エネルギー効果が期待できます。

【LED照明の導入】

近年ではLED照明が主流となっています。白熱灯照明や蛍光灯照明の発光効率※は、それぞれ15lm/W程度、75lm/W程度ですが、高効率な製品では発光効率が150 lm/Wを超えるものもあります。このため、LED照明を採用することでエネルギー消費量の削減につながります。
※発光効率[lm/W]:照明のエネルギー消費効率を表す指標として、照明の光源が発する光の量(光束[lm])を消費する電力[W]で除して表される。

また、LED照明には、長寿命でコンパクトである、応答が速いといったメリットもあります。

【照明制御による省エネ】

省エネが期待できる照明制御の具体例としては、タイムスケジュールによる点灯制御や、人感センサーによる自動調光・点灯制御、明るさセンサーによる自動調光制御、およびこれらを組み合わせた制御があります。

■高効率換気

窓開け換気では、冷暖房した空気が外へ逃げるため空調負荷が増加します。単純な機械換気でも同様です。これに対し、全熱交換器を備えた換気設備を導入すれば、排気の熱を回収・再利用できるため、換気による空調負荷の増加を抑えることができます。

普通換気と全熱交換換気(温度交換効率70%)の仕組み 出所)「図解入門よくわかる最新空調設備の基本と仕組み」,p.187を参考に作成

【全熱交換器の仕組み】

全熱交換器は主に紙製の熱交換エレメントを内部に備えた換気設備です。給気と排気が装置内を通過する際に熱が交換されるため、取り込まれる外気は室内に近い温度となり、排出される室内空気は室外に近い温度になります。

CREATE(創エネ技術)

■太陽光発電システム

太陽光発電システムは、太陽光エネルギーを半導体素子により直接電力へ変換する創エネルギー技術です。ZEBにおいては、建物で消費するエネルギーを削減するだけでなく、建物内で再生可能エネルギーを創出することが重要であり、太陽光発電はその中心的な技術となっています。
現在では発電効率20%を超える高効率モジュールが普及しており、オフィスビルや商業施設の屋上等への導入も進んでいます。特に設備の利用時間帯と発電時間帯が重なる用途では、自家消費型として電力需要の一部を賄うことで、一次エネルギー消費量の削減に寄与します。
近年は、屋上設置に加えて、外壁や窓面に組み込む建材一体型太陽光発電(BIPV)の実装事例も見られます。高層建築物では屋上面積が限られるため、壁面やファサードを活用した発電量の拡大が検討されています。さらに、軽量・柔軟性を有するペロブスカイト太陽電池などの次世代型太陽電池の研究開発も進められており、将来的にはBIPVの適用範囲拡大が期待されています。

シースルータイプ太陽電池(KANEKA Wellness Center 風の杜での導入事例)
シースルータイプ太陽電池(KANEKA Wellness Center 風の杜での導入事例) 株式会社カネカ 提供
ファサード一体型(異形ガラス)タイプ(古平町複合施設 かなえーるでの導入事例)
ファサード一体型(異形ガラス)タイプ(古平町複合施設 かなえーるでの導入事例) 出所)大成建設株式会社ホームページより(画像提供:今田耕太郎)

太陽光発電は、BEMS等との連携により発電状況の可視化や負荷制御機能を付加することで、より効率的なシステムとするケースも少なくありません。また、蓄電池と組み合わせることで自家消費率向上やBCP強化を図る事例も増加しています。

エネマネ技術

■BEMS

BEMSは、Building Energy Management Systemの略称で、建物内のエネルギー使用状況や設備の運転状況を計測・収集し、それらを可視化・分析・制御することで、建物のエネルギー管理や室内環境の適切な維持を支援するビル管理システムです。ZEBでは、建物のエネルギー性能を継続的に把握し、設備運用を最適化することが重要であり、BEMSはその計測・制御・分析を一体的に担うことで、ZEB目標値の維持・達成を支援するという中核的な役割を果たしています。

BEMSの機能は、代表的には以下の3つのサブシステムに整理することができます。

  • エネルギー管理共通基盤:建物内の各所に設置された温湿度センサー、電力量計、流量計、人感知センサーなどで計測した温度、湿度、CO2濃度、各機器の運転状況やエネルギー使用状況、在室人数などのデータを、ネットワークを通じて収集・蓄積するシステムです。
  • エネルギー情報システム:「エネルギー管理共通基盤」で収集・蓄積されたデータをグラフや数値として把握できる形に整理し、時期別や時間帯別の傾向分析などを行うシステムです。
  • エネルギー制御システム:「エネルギー情報システム」の分析結果や設定条件に基づき、空調や照明などの設備機器の運転を自動的に制御するシステムです。

BEMSは上記の3種類のサブシステムを組み合わせた技術であり、機能の範囲や活用方法によって様々な種類があります。なお、近年ではAIを用いた分析機能を持つBEMSや、クラウド上でデータ管理を行うクラウド型BEMSなど、新しい技術を活用したシステムも普及しています。

参考:BEMSの種類の大別
参考:BEMSの種類の大別

なお、混同されやすいシステムとして、BAS(Building Automation System:中央監視・自動制御システム)があります。BASは、主に大規模建築物において空調、照明、防災設備などの建物設備を統合的に監視・制御し、建物の安全性や快適性を確保するとともに、設備運用の効率化を図ることを目的としたシステムです。
一方、BEMSは、建物のエネルギー使用状況を把握・分析し、設備運用の最適化などを通じてエネルギー性能の向上を図ることを主な目的としています。
実際の建物では、BASが設備の監視・制御を担い、BEMSがその運転データを活用してエネルギー管理や分析を行う場合など、両者が一体となって運用される場合が多く、BASにBEMSの機能が組み込まれているケースもあります。

BEMSを導入するメリットは、エネルギー使用の無駄を把握しやすくなることによる光熱費の削減、設備運転の最適化による管理業務の効率化、快適な室内環境の維持といった点が挙げられます。また、エネルギー使用状況を継続的にデータとして蓄積することで、省エネルギー法等に基づく法令対応や報告業務の効率化にも寄与します。さらに、収集したデータをリアルタイムで建物内のモニターなどで掲示する「見える化」により、建物利用者の省エネ意識・行動の喚起にも貢献します。

BEMSは既に多くの建築物で活用されており、新築建築物のみならず既存建築物でも導入が可能です。例えば、既存の分電盤に電力計や通信機器を追加し、クラウド型BEMS(クラウドサービス)を導入することで、エネルギー使用状況の把握と運用改善を行い、電力使用量を大きく削減した事例も報告されています。このように、既存設備と連携させる形で段階的に導入できる場合もあり、BEMSは必ずしも導入のハードルが高いものではありません。建物の規模、用途、運用体制や予算に応じて必要な機能を選択し、無理のない形で活用できる点もBEMSの特徴の一つです。
またBEMSのなかには、太陽光発電量のモニタリングや発電予測データとの連携、蓄電池の充放電制御などを通じて、建物内での自家消費率の最大化を支援する機能を担うものもあります。さらに、電力系統側の需給状況に応じた需要制御(デマンドレスポンス)への対応が可能なものもあり、BEMSは建物単体のエネルギー管理にとどまらず、電力系統との協調という観点においても重要性が高まっています。

<BEMSの例>
BEMSの例 出所)中央環境審議会 地球環境部会(第81回)資料2より
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