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ZEBの定義

ZEBとは

ZEBの定義は国内外で様々な議論や検討がされています。経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会とりまとめ」(平成27年12月)では、ZEBを「先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制やパッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システムの導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物」と定義しています。現在、ZEBの実現・普及に向けて、4段階のZEBを定性的及び定量的に定義しています。

ZEBの定義の拡充

経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」(平成31年3月)では、延べ面積10,000㎡以上の建築物は、年間の新築着工に占める割合が棟数ベースでは1%程度ですが、エネルギー消費量ベースでは36%程度と大きく、新築建築物全体のエネルギー消費量に与える影響が大きいことから、エネルギー基本計画で設定した2030年目標を達成するためには、延べ面積10,000㎡以上の建築物におけるZEB化の実現・普及が重要となると考えられます。
そこで、ZEBの定義において、延べ面積10,000㎡以上の建築物を対象とし、「ZEB Oriented」を追加するとともに、これまで建築物全体(非住宅部分)でのみZEBの評価を可能としていた複数用途建築物について、建築物(非住宅部分)のうち一部の建物用途においても評価可能となるよう、複数用途建築物におけるZEBの評価方法を拡充しています。

ZEBの定義
ゼロエネルギーの達成状況に応じて定義される4段階のZEBシリーズの画像
定性的な定義 定量的な定義(判断基準)
『ZEB』 年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物 以下の➀~➁のすべてに適合した建築物
基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減(再生可能エネルギー*を除く)
基準一次エネルギー消費量から100%以上の削減(再生可能エネルギー*を含む)
Nearly ZEB ZEBに限りなく近い建築物として、ZEB Readyの要件を満たしつつ、再生可能エネルギーにより年間の一次エネルギー消費量をゼロに近付けた建築物 以下の➀~➁のすべてに適合した建築物
基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減(再生可能エネルギー*を除く)
基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満の削減(再生可能エネルギー*を含む)
ZEB Ready ZEBを見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物 再生可能エネルギー*を除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量削減に適合した建築物
ZEB Oriented ZEB Readyを見据えた建築物として、外皮の高性能化及び高効率な省エネルギー設備に加え、更なる省エネルギーの実現に向けた措置を講じた建築物 以下の➀及び➁の定量的要件を満たす建築物
➀該当する用途毎に、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から規定する一次エネルギー消費量を削減すること(※1)
A) 事務所等、学校等、工場等は40%以上の一次エネルギー消費量削減
B) ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等は30%以上の一次エネルギー消費量削減
➁「更なる省エネルギーの実現に向けた措置」として、未評価技術(WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術)を導入すること(※2)

*再生可能エネルギー量の対象は敷地内に限定し、自家消費分に加え、売電分も対象に含めることとする。

※1 一次エネルギー消費量の対象は、平成28年省エネルギー基準で定められる空気調和設備、空気調和設備以外の機械換気設備、照明設備、給湯設備及び昇降機とする(「その他一次エネルギー消費量」は除く)。また、計算方法は最新の省エネルギー基準に準拠した計算方法又はこれと同等の方法に従うこととする。
※2 未評価技術は公益社団法人空気調和・衛生工学会において省エネルギー効果が高いと見込まれ、公表されたものを対象とする。なお、未評価技術のリストは、今後、評価方法の更新や未評価技術の実証結果等を踏まえつつ、必要に応じて適宜見直すこととする。
出所)経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会とりまとめ」(平成27年12月)、経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」(平成31年3月)より作成

建築物省エネ法

平成27年7月、社会経済情勢の変化に伴い、住宅・建築物におけるエネルギー消費量が著しく増加していることを背景に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下、「建築物省エネ法」)が公布され、平成29年4月に全面施行されました。
建築物省エネ法は、わが国における住宅・建築物のエネルギー消費性能(以下、「省エネ性能」)を向上させて行くために、建築主等の自発的な省エネ性能の向上を促す誘導措置に加え、住宅・建築物の規模等に応じた規制措置を講じています。誘導措置としては、「エネルギー消費性能向上計画認定・容積率特例」、「基準適合認定・表示制度」が挙げられます。一方、規制措置は、延べ面積が2,000m2以上の建築物の「建築物エネルギー消費性能基準(以下、「省エネ基準」)」への適合義務、および従来の「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」で措置されていた延べ面積が300m2以上の住宅・建築物の新築等の「省エネ措置の届出」、そして住宅事業建築主が新築する一戸建て住宅に対する「住宅トップランナー制度」で構成されています。
※住宅:戸建住宅、共同住宅など  建築物:住宅以外の建築物

BEI(Building Energy Index)

建築物省エネ法において住宅・建築物の省エネ性能の評価対象となるのは、建物に設ける空気調和設備、換気設備、照明設備、給湯設備、昇降機です。なお、家電やOA機器等のその他の消費機器は評価の対象になりません。省エネ基準適合義務対象の建築物の規制に係る省エネ基準は、一次エネルギー消費量で評価し、性能向上計画認定・容積率特例の誘導措置に係る誘導基準は、一次エネルギー消費量および外皮の性能で評価します。一方、住宅については、省エネ基準、誘導基準のいずれにおいても、一次エネルギー消費量および外皮の性能で評価します。
また、建築物省エネ法では、住宅・建築物の一次エネルギー消費量の基準の水準として、BEI(Building Energy Index)という指標を用います。BEIは、実際に建てる建物の設計一次エネルギー消費量を、地域や建物用途、室使用条件などにより定められている基準一次エネルギー消費量で除した値で評価し、新築される住宅・建築物の一次エネルギー消費量基準に適合となる水準は、BEI≦1.0となります。つまり、新築される建築物においては、設計一次エネルギー消費量基準一次エネルギー消費量以下であれば省エネ基準に適合しているということになります。
ZEBの評価でも建築物省エネ法と同様に、BEIを用います。国立研究開発法人建築研究所が公表している建築物のエネルギー消費性能計算プログラムを使用してBEIを計算します。再生可能エネルギーを除きBEI≦0.50の場合にZEB Ready、さらに再生可能エネルギー導入によって0.00<BEI≦0.25となる場合にはNearly ZEB、BEI≦0.00となる場合には『ZEB』と判定されます。このようにZEBの評価に当たっては、建築物省エネ法の評価方法が用いられています。

建築物の一次エネルギー消費量(非住宅部分)
建築物の一次エネルギー消費量(非住宅部分)の画像 *出所)「建築物の省エネ設計技術」編集委員会「建築物の省エネ設計技術
省エネ適判に備える」(平成29年5月、(株)学芸出版社)より作成

複数用途建築物におけるZEBの評価方法

(1)複数用途建築物におけるZEBの対象範囲
以下のA)とB)のいずれか、又は両方とする。
A)建築物(非住宅部分)全体
B)建築物(非住宅部分)のうち一部の建物用途*(※1)
(2)建築物(非住宅部分)全体におけるZEBの判断基準(定量的な定義)
対象範囲において、『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Oriented(※2)いずれかの定量的要件を満たすこと。
(3)一部の建物用途におけるZEBの判断基準(定量的な定義)
以下の➀及び➁の定量的要件を満たす建築物(非住宅部分)とする。
➀対象範囲の建物用途において、『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Oriented(※3)いずれかの定量的要件を満たすこと
➁建築物全体(評価対象外を含む非住宅部分)において、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量を削減すること
複数用途建築物におけるZEBの評価イメージ
複数用途建築物におけるZEBの評価イメージの画像

※1 一部の建物用途を評価する場合、建築物(非住宅部分)全体の延べ面積が10,000㎡以上であることを要件とする。
※2 ZEB Orientedは一次エネルギー消費量削減の基準を建物用途毎に達成することを要件とする。
※3 ZEB Orientedは対象範囲の建物用途の延べ面積が10,000㎡以上であることを要件とする。
*本定義における複数用途の定義は、建築物省エネ法上の用途分類(事務所等、ホテル等、病院等、百貨店等、学校等、飲食店等、集会所等、工場等)に準拠する。

ZEBの評価と評価基準
非住宅(※1)建築物
❶建築物全体評価 ❷建築物の部分評価
(複数用途(※2)建築物の一部用途に対する評価)(※3)
評価対象における基準値からの一次エネルギー消費量(※4)削減率 その他の要件 評価対象における基準値からの一次エネルギー消費量(※4)削減率 その他の要件
省エネのみ 創エネ(※5)含む 省エネのみ 創エネ(※5)含む
『ZEB』 50%
以上
100%
以上
- 50%
以上
100%
以上
  • 建築物全体で基準値から創エネを除き20%以上の一次エネルギー消費量削減を達成すること
Nearly ZEB 50%
以上
75%
以上
50%
以上
75%
以上
ZEB Ready 50%
以上
75%
未満
50%
以上
75%
未満
ZEB Oriented 建物用途 事務所等、学校等、工場等 40%
以上
-
  • 建築物全体の延べ面積(※1)が10,000㎡以上であること
  • 未評価技術(※6)を導入すること
  • 複数用途建築物は、建物用途毎に左記の一次エネルギー消費量削減率を達成すること
40%
以上
-
  • 評価対象用途の延べ面積※1が10,000㎡以上であること
  • 評価対象用途に未評価技術(※6)を導入すること
  • 建築物全体で基準値から創エネを除き20%以上の一次エネルギー消費量削減を達成すること
ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等 30%
以上
- 30%
以上
-

※1 建築物省エネ法上の定義(非住宅部分:政令第3条に定める住宅部分以外の部分)に準拠する。
※2 建築物省エネ法上の用途分類(事務所等、ホテル等、病院等、百貨店等、学校等、飲食店等、集会所等、工場等)に準拠する。
※3 建築物全体の延べ面積が10,000㎡以上であることを要件とする。
※4 一次エネルギー消費量の対象は、平成28年省エネルギー基準で定められる空気調和設備、空気調和設備以外の機械換気設備、照明設備、給湯設備及び昇降機とする(「その他一次エネルギー消費量」は除く)。また、計算方法は最新の省エネルギー基準に準拠した計算方法又はこれと同等の方法に従うこととする。
※5 再生可能エネルギーの対象は敷地内(オンサイト)に限定し、自家消費分に加え、売電分も対象に含める。(但し、余剰売電分に限る。)
※6 未評価技術は公益社団法人空気調和・衛生工学会において省エネルギー効果が高いと見込まれ、公表されたものを対象とする。

ZEBに向けた取組の方向性

ZEBに向けた取組の方向性としては、建築物における負荷の低減と設備の効率化を図ることによりエネルギー需要を少なくし、最適な規模の再生可能エネルギー設備を導入していくことが合理的です。つまり、先ずは➀外皮性能の向上などにより負荷を抑制し、その上で必要となるエネルギー需要に対して➁自然エネルギー利用及び➂設備システムの高効率化を行うことで、基準一次エネルギー消費量に対して50%以上の省エネルギーの実現を目指します。そして、➃再生可能エネルギーの導入により、建築物の外部からの自立性を高めていきます。

ZEBに向けた取組の方向性の画像 *出所)経済産業省資源エネルギー庁「平成30年度ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」(平成31年3月)
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