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2024年06月21日
  • 地球環境

令和6年度の「ベストナッジ賞」コンテストの結果について

1.ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を含む行動科学の知見(行動インサイト)に基づく取組が早期に社会実装され、自立的に普及することを目標に、環境省では平成27年に府省庁初のナッジ・ユニット(ナッジPT「プラチナ」)を、また、我が国全体では平成29年4月より環境省のイニシアチブの下、産学政官民連携・関係府省等連携のオールジャパンの体制による日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)を発足しています。
 
2.平成30年度より、環境省及びBESTは、行動経済学会との連携により、「ベストナッジ賞」コンテストを実施し、幅広い分野の社会・行政の課題の解決に向けて、ナッジ等の行動科学の理論・知見を活用して行動変容を促進し、効果を測定した実績のある取組を募集し、表彰(環境大臣賞)してきました。令和4年度のコンテストにおいて高等学校生が受賞したことを踏まえ、令和5年度より高等学校部門を新設して従来の一般部門とともに実施をしています。
 
3.この度、令和6年度のベストナッジ賞コンテストにおいて、有識者による書面審査及びプレゼンテーション審査の後に、第35回日本版ナッジ・ユニット連絡会議における議論の結果、一般部門について上位2件を、高等学校部門について上位1件を、ベストナッジ賞(環境大臣賞)として選定しましたので、お知らせします。

■ 一般部門の審査結果

応募資料(福井市ナッジ・ユニット)[PDF 392KB]

応募資料(サイバー創研)[PDF 110KB]

・応募数:5件

・書類審査通過:3件

・プレゼンテーション審査の結果:
 以下の取組(2件)がベストナッジ賞(環境大臣賞)として選定されました。審査委員会においては、社会的意義の高い課題に対して、得られるエビデンスの質の高い効果検証の手法を用いている点、地方公共団体や学識経験者との連携により実施している点等が評価されました。

○代表者:福井市ナッジ・ユニット
・ プロジェクト:大腸がん検診受診率向上のための複数のナッジによる行動変容効果の比較検証
・ 実施フィールド:福井県福井市
・ 取組概要:学識経験者との連携の下、大腸がん検診の受診率向上に関して、複数のナッジ介入策を考案し、それらの効果をランダム化比較試験により検証した。
      https://www.env.go.jp/content/000233340.pdf(応募資料)
 
○代表者:(株)サイバー創研
・ プロジェクト:災害時の指定避難所やリスクの認知度等を高める防災マグネット
・ 実施フィールド:北海道、神奈川県
・ 取組概要:地方公共団体や学識経験者との連携の下、防災に関するリテラシーや食料・水の備蓄等の災害への備えに関して、記述式のマグネットシートの効果をランダム化比較試験により検証した。住まいの地域の災害リスクの理解、食料・水の備蓄・確認、家具の配置や警報機の設置、一時避難場所や避難所の把握、家族との集合場所の決定等の項目での改善が統計的有意に実証された。複数の地域において検証を実施し、ナッジの効果の普遍性・外的妥当性について実証した。
      https://www.env.go.jp/content/000233339.pdf(応募資料)

■ 高等学校部門の審査結果

応募資料(広島大学附属高等学校)[PDF 157KB]

発表資料(広島大学附属高等学校)[PDF 1.6MB]

・応募数:6件

・書類審査通過:2件

・プレゼンテーション審査の結果:
 以下の取組(1件)がベストナッジ賞(環境大臣賞)として選定されました。審査委員会においては、生徒自らが学校生活における課題の解決に向けて、予備実験を実施した上で本格実験を実施している点、作業仮説を構築して複数のナッジ介入策を考案し、それらの効果の検証を実施している点、統計解析の手法を進んで学び、解析を実施している点、被験者となる生徒への倫理的な配慮がなされている点等が評価されました。

○代表者:広島大学附属高等学校
・ プロジェクト:人がぶつからないようにするナッジ
・ 実施フィールド:広島大学附属高等学校
・ 取組概要:普段の学校生活において曲がり角等の死角のある場所における衝突を解決するために、複数のナッジ介入策を考案し、それらの効果を検証した。予備実験を実施した上で作業仮説を構築し、ナッジの効果を統計的に実証した。
      https://www.env.go.jp/content/000233342.pdf(応募資料)
      https://www.env.go.jp/content/000233343.pdf(発表資料)

■ (参考1)募集及び審査の方法

● 応募条件
(1)ナッジ等の行動科学の理論・知見を活用して行動変容を促進するものであること。
(2)社会や行政、学校その他コミュニティの課題の解決に向けたものであること(分野は環境・エネルギーに限らない)。
(3)実社会で実際に実施した実績のあること(アイデア段階は対象外)。
(4)効果を何らかの方法により測定したもの。
 
● 審査基準
(1)倫理面への配慮
ナッジの受け手に配慮しているか。過度に心理的負担を与えるものでないか。
(1)新規性
国内外で類似の事例がないか。比較的最近の取組であるか(他の分野で事例があっても、その分野への適用に新規性があれば良い)。
(2)社会的意義
社会や行政、コミュニティの課題の解決に向けた取組であるか(分野は問わない)。
(3)用いた行動科学の理論・知見の適切性
ナッジ等の行動科学の理論・知見を適切に用いているか。作業仮説は適当か。
(4)効果測定の手法の適切性
適切な手法で効果測定しているか。単純な前後比較や対照群を設けずに事後のみの結果の測定ではなく、得られる科学的根拠の水準(エビデンスレベル)が高くなるような手法を用いているか。
(5)他の地域・分野への波及可能性
他の地域・分野においても容易に実施・応用できるか。

■ (参考2)過去において実施した「ベストナッジ賞」コンテストについて

 行動経済学会との連携により、幅広い分野の社会・行政の課題の解決に向けて、地方公共団体においてナッジ等の行動インサイトの活用により行動変容を促進し、効果を測定した実績のある取組を募集しました。新規性、社会的意義、用いた行動科学の理論・知見の適切性、効果測定の手法の適切性、他の地方公共団体・分野への波及可能性を踏まえ、各年度で以下の案件がベストナッジ賞を受賞しました(いずれも環境大臣賞)。それぞれの取組の関連資料を掲載したウェブサイトのアドレスを以下に添えます。
 
● 令和5年度ベストナッジ賞(一般部門)
○ 代表者:法務省・総務省
・ プロジェクト:刑務所における受刑者の就労支援希望の申し出促進策
・ 実施フィールド:刑事施設
・ 取組概要:当事者や支援者等へのヒアリングを通じて、就労支援が周知されてから受刑者が就労支援を受けるまでのボトルネックを整理した上で、就労支援を受けることを促すチラシの効果を検証した。
https://www.env.go.jp/content/000187767.pdf(応募資料)
https://www.env.go.jp/content/000187768.pdf(ポスター発表資料)
https://www.env.go.jp/content/000187769.pdf(発表資料)
 
● 令和5年度ベストナッジ賞(高等学校部門)

○ 代表者:大阪府立泉北高等学校
・ プロジェクト:ナッジを利用した泉北高校のペットボトルの分別状況の改善
・ 実施フィールド:大阪府立泉北高等学校
・ 取組概要:学校のペットボトル専用回収箱における分別回収(ラベルやキャップを分ける、ペットボトル以外のものを捨てない)について、2種類のナッジ介入策を考案した上で、それらの組合せによる介入をクラス毎に分けて実施し、分別に対する意識や行動の変化について効果を検証した。
  https://www.env.go.jp/content/000170129.pdf(応募資料)
  https://www.env.go.jp/content/000170130.pdf(発表資料)
  https://www.env.go.jp/content/000170133.pdf(補足資料)
 
● 令和4年度ベストナッジ賞

○ 代表者:(株)NTT データ経営研究所
・ プロジェクト:タクシー駐停車マナー改善ナッジ
・ 実施フィールド:京都府京都市
・ 取組概要:タクシーの違法な客待ち駐停車が頻発する交差点において、ナッジを用いた看板を設置し、違法停車時間について効果を検証した。
  https://www.env.go.jp/content/000103268.pdf

○ 代表者:三菱電機(株)
・ プロジェクト:歩きスマホを防止するナッジ
・ 実施フィールド:滋賀県彦根市
・ 取組概要:デジタルサイネージを用いて「歩きスマホ者」と「非歩きスマホ者」で異なる内容の映像を提示することにより、通行者の歩きスマホの状況に変化があったか検証した。
  https://www.env.go.jp/content/000103269.pdf

○ 代表者:NECソリューションイノベータ(株)
・ プロジェクト:可燃ごみ処理費の開示による資源循環促進
・ 実施フィールド:宮城県南三陸町
・ 取組概要:可燃ごみ袋を販売している事業者の協力の下、ポスターを作成して可燃ごみ処理費を損失として住民に開示することにより分別行動を促すことができるか検証した。
  https://www.env.go.jp/content/000103270.pdf

○ 代表者:広島大学附属高等学校
・ プロジェクト:駐輪場の自転車の並びの改善へのナッジの活用
・ 実施フィールド:広島大学附属高等学校
・ 取組概要:学校の駐輪場において、適当に止められた自転車によって所定のスペースに他の自転車を止めることができない課題に対して、4種類のナッジを設計し、自転車の整列の改善度合いについて効果を検証した。
  https://www.env.go.jp/content/000103271.pdf
 
● 令和3年度ベストナッジ賞

○ 代表者:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)
・ プロジェクト:固定資産税の口座振替勧奨ナッジ
・ 実施フィールド:神奈川県横浜市戸塚区
・ 取組概要:固定資産税を納付書で都度納付する場合、納付書の紛失や納期限の失念等により納期内納付されない課題に対して、口座振替納付案内にナッジをちりばめたチラシを同封し、口座振替の申込率が高まるかどうかを効果検証した。
  http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/renrakukai26/mat_01.pdf

○ 代表者:つくばナッジ勉強会
・ プロジェクト:避難行動要支援者の同意書の返送率の向上~封筒メッセージの効果検証~
・ 実施フィールド:茨城県つくば市
・ 取組概要:避難行動要支援者の同意書の返送率を向上させることを目的に通知の封筒に関心・興味を引く可能性のあるナッジを組み込んだメッセージを印字し、封筒メッセージの効果を測定した。
  http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/renrakukai26_1/mat_02.pdf
 
● 令和元年度ベストナッジ賞

○ 代表者:NEC ソリューションイノベータ(株)
・ プロジェクト:感謝フィードバックによる資源循環促進
・ 実施フィールド:宮城県南三陸町
  http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/renrakukai13/mat_01-1.pdf

○ 代表者:中部管区警察局岐阜県情報通信部、関東管区警察局静岡県情報通信部
・ プロジェクト:オプトアウト方式による休暇取得の促進
・ 実施フィールド:代表者の所属機関
  http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/renrakukai13/mat_01-2.pdf
 
● 平成30年度ベストナッジ賞

○ 代表者:(株)キャンサースキャン
・ プロジェクト:大腸がん検診受診行動促進プロジェクト
・ 実施フィールド:東京都八王子市
  http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/renrakukai05/mat04_2.pdf

○ 代表者:京都府宇治市
・ プロジェクト:犬のフン害撲滅パトロール「イエローチョーク作戦」
・ 実施フィールド:京都府宇治市
  http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/renrakukai02/mat03_3.pdf

■ (参考3)日本版ナッジ・ユニットBESTについて

https://www.env.go.jp/earth/best.html〉 
 日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)は、関係府省庁や地方公共団体、産業界や有識者等から成る産学政官民連携のオールジャパンの取組です(事務局:環境省)。ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見(行動インサイト)に基づく取組が政策として、また、民間に早期に社会実装され、自立的に普及することを目的に、環境省のイニシアチブの下、2017年4月に発足しました。その後、同年10月のノーベル経済学賞の受賞分野が行動経済学であったことの後押しもあり、取組が深化し、連携体制が次第に強化されています。どのような取組も、地域に根付くものとするためには、関係するあらゆるステークホルダーを巻き込んでいくことが必要不可欠です。このため、行政内に限った取組ではなく、参加者が同じ立場で自由に議論のできるオールジャパンの実施体制としています。

〇 日本版ナッジ・ユニットBEST のウェブサイト(会議資料、報道発表等)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge.html
 
〇 平成29・30年度年次報告書(日本版ナッジ・ユニットBEST活動報告書)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/report1.pdf
 
〇 報告書「ナッジとEBPM~環境省ナッジ事業を題材とした実践から好循環へ~
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/EBPM.pdf
 
〇 ナッジ等の行動インサイトの活用に関わる倫理チェックリスト ①調査・研究編
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/checklist_study.pdf
 
〇 ナッジ等の行動インサイトの活用に関わる倫理チェックリスト ②社会実装編
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/checklist_deploy.pdf
 
〇 我が国におけるナッジ・ブースト等の行動インサイトの活用の広がりについて
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/hirogari.pdf

連絡先

環境省地球環境局地球温暖化対策課デコ活応援隊(地球温暖化対策課脱炭素ライフスタイル推進室)
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8341
隊長
島田 智寛
隊長補佐
池本 忠弘
担当
池本 忠弘