知床半島の先端部に至る道はない。知床岬の台地に広がる風景は、
自ら努力し、ひたすら歩きとおしたツワモノだけに与えられる
とびきりのご褒美だ。
安全なトレッキングは存在しませんが、あらかじめ対策をすることで、リスクを軽減することは可能です。帰路も同じ石と岩の浜を歩いて帰ります。登山や沢登り同様のしっかりとした装備と、余裕のある計画を立てましょう。
知床半島先端部地区のトレッキングでは岩礁帯の海岸を歩くため、満潮時には岩礁が水没し通過できないこともある。潮位を見ながら綿密に計画を立てることと、アクシデントを想定した「予備日」の存在があなたの行動を支える。
岩場を高巻きせずに泳いで渡ることは不可能ではないですが、岩礁に打ち寄せる波は見た目よりもはるかに大きく、波に飲み込まれることも。また、知床の海は夏でも水温が低く体力を奪われます。たとえ距離が短くとも大きな危険が伴うことを認識しましょう。体が濡れてしまいやむを得ずたき火を行う場合には、植生の上や番屋のそばなどでは行わず、痕跡を残さないようきちんと後始末をしましょう。
剣岩
干潮時に通過が必須のポイント。干潮の時だけ水面に出る数百メートルのテラス状の岩礁を歩いて通過しなければならない。右の写真よりもっと深くなるので、冷たい水の中、長距離泳いで通過するのは不可能。あらかじめ、きちんと干潮時刻を調べておこう。
トッカリ瀬
飛び石状の岩礁を通過する。満潮時は完全に水没する。波があると飛び石も見えず、水路に落ちて泳ぐ羽目になる。潮が引いていても時化で波が高い時には通行は極めて危険。波は不規則で時に予想外の大波が打ち寄せ、海に引きずり込まれることがあり、過去に死亡事故が発生している。
装備はテントやシュラフも入れて15キログラム以上!こんな荷物が背負えないアナタは鍛え直してからフィールドへ。石浜は土と違ってヒザへの負担が大きい。しっかりしたシューズが必携だ。 | 垂直の壁を越えるしか方法はない。落差は最大100メートル!雨の後は土付き急斜面がニュルニュルと滑りやすい。クライミングロープを持参していない人や、ロープの使い方がわからない人はここで脱落。使ったロープは回収しよう。 | |||
なんだコリャ!?びっくりサイズの巨岩エリア。岩と岩の間に落ちれば骨折必至!果てしない岩歩きで体力を消耗し、引き返す人が続出している。 | 岩壁をへばりつくように横へ、縦へ。スムーズに移動しないと海にドボン!岩自体も脆く、バランス感覚に乏しい人には危険だらけ。 | |||
通過中の浜にヒグマが!どうやってやり過ごす?突発的な近距離遭遇ではクマスプレーなしに対応することは不可能。 | 満潮時には完全に水没!事前に干潮時刻を下調べしていないアナタには突破できない。事前調査はぬかりなく。 | |||
ヒグマに食物・生ゴミをとられぬようにフードコンテナで管理は厳重に!自分の身を守るためばかりでなく、ヒグマに人の食物の味を教えてしまうと、あなたの後から来る人々まで危険に陥れます。 | どんなに疲れていても、誰も助けてくれはしない。自力で歩ける人だけが、先へ進むことができる厳しい先端部だ。 | |||
- トレッキング中にどういう場所でヒグマに出遭いますか?
- 知床半島は全域がヒグマの生息地のため、いつでも、どこでも出遭う可能性があります。ヒグマに出遭わないために、また、出遭った時のために、ヒグマ対策が必要です。
- 川の近くにテントを張りたいのですが?
- 止めましょう。特に、8月後半から9月には危険です。小川のような小さな川であっても、河口近くにカラフトマスが押し寄せます。ヒグマが頻繁に食べにやってきます。
- トレッキング中にヒグマに襲われた例はあるのですか?
- トレッキングや登山中ではありませんが、1980年代にハンターやサケマス孵化場職員の死傷事故がありました。2017年現在、登山者などの事故は発生していませんが、テントを破られた例や人が就寝中のテントにのしかかってきたという危機一髪の事例があります。
知床の2つの施設で、知床半島先端部の近況や危険箇所の情報、注意事項の提供のほか、ヒグマ対策アイテムのレンタルを行っています。準備が整ったら、出発前に必ず立ち寄って、近況をよく調べてから行きましょう。