あなたの何気ない行動が、ヒグマを刺激しているかもしれません。
あなた自身は助かっても、周辺の漁師さんや次の利用者に危険を及ぼすことがあります。
- 釣った魚をその場で捌いて洗ったり、筋子だけを取り出して魚を海に捨てる行為は、ヒグマを引き寄せる大きな要因です。海に捨てたつもりの内臓や魚は、海に還らず再び波で打ち寄せられます。釣ったものは必ずすべて持ち帰ってください。
- 写真撮影目的などで必要以上にヒグマに接近する人が見られますが、これはヒグマの人慣れを促進する結果となります。ヒグマは強大な力を秘めている野生動物であるということを認識し、自分から近づくような行為は避けて下さい。
- 人の接近に気付いたヒグマは、気付かないままに通り過ぎる人間を、そばに隠れてやり過してくれることがしばしばあります。そんな時、匂いに敏感な犬を連れていると、よせばよいのに吠えついて、ヒグマを興奮させ怒らせ「やぶ蛇」の結果を招きます。

実際にあった遭遇例その1
犬を連れて散歩中にヒグマと遭遇。犬が吠えかかったので、ヒグマは犬に攻撃しました。犬は飼い主の方へ逃げてきたため、怒ったヒグマを犬が人の目の前まで連れてくる結果になりました。ヒグマの生息地で、訓練されていない犬をヒグマを知らない人が連れ歩くこと、ましてや放して歩くことはたいへん危険です。
写真:人の目の前をうろつくヒグマ。知床では常に緊張感を持って行動しよう。

知床半島先端部地区では、いつでも、どこでもヒグマに出遭う可能性があります。
出遭っても、決して焦らずに冷静に対処しましょう。

犬と同じで、ヒグマは逃げるものを追おうとする習性があります。慌てて背中を向けて走るのは逆効果です。しかも、クマは人間よりはるかに速く走ることができます。騒がずにゆっくりと後ずさりをしながら、退避しましょう。

母グマは子グマを守るためにはしばしば攻撃的になります。たとえ子グマが単独でいるように見えても、その近くには必ず母グマがいます。体重100キログラムを越える筋肉質の激怒した母グマが、突進してくる悪夢を見たくなければ、近付いてはいけません。

シカの死体や海岸にしばしば打ち上げられるイルカなどの死体はヒグマの大好物です。この様な大きなご馳走を手に入れたヒグマは何日間も付近に居すわって食べ続けます。攻撃を受けたくなければ、すぐにその場を離れましょう。

実際にあった遭遇例その2
クマ同士の争いで瀕死の重傷を負って潜んでいたヒグマに、海岸トレッカーが気付かぬまま至近距離で遭遇。ヒグマは身を守ろうと、最後の力をふり絞るように激しく攻撃しました。幸い、攻撃対象は人ではなくザックとザックに付けたヘルメットだったため、事なきを得ましたが、人命に関わる大惨事になりかねない危険な事態でした。
写真:ヒグマの牙が貫通したヘルメット。


実際にあった遭遇例その3
漂着したトドの死体に餌付いていたヒグマが、通りかかったトレッカーに数メートルの距離でブラフチャージ(威嚇突進)。トドをくわえて草むらに引きずって行きました。この後しばらく海岸線の利用は自粛となりました。
写真:トド死体をくわえてひきずっていくヒグマ。決して近づいてはならない。


実際にあった遭遇例その4
知床岬付近に10メートル程度のミンククジラ死体が漂着。クジラ死体は大きいので分解されるまで長く現場に留まる。ヒグマが連日のように獲物に群がる状況が約1か月続いた。他にも同様に、化石浜に10mを越えるマッコウクジラが漂着したこともある。海岸線はいつどこでも、このような状況が起こり得る。
写真:ミンククジラ死体に食いつくヒグマ。多いときは周囲に10頭近く集まることもある。

ヒグマ対策といっても、難しいことばかりではなく、今すぐできることがたくさんあります。事故の多くは、人に気付かぬまま至近距離で出会ったヒグマが、驚きのあまり攻撃に転じてしまうことで起こります。視界の悪いところでは積極的に声を出したり手を叩くなど、人の存在をヒグマに知らせてあげましょう。
- 人の存在に気がつくと、ヒグマの方で立ち去ることがほとんどです。物音を立てるちょっとした工夫で、不意の遭遇を避けることができます。出遭わぬようにすることが、もっとも確実かつ簡単な安全対策です。
知床半島先端部地区でのトレッキングや登山、シーカヤック、釣りなどの活動中は常にクマスプレーを携帯し、野営地では食料管理の徹底と、テント周辺にヒグマを近づけない工夫が必要です。クマスプレーとフードコンテナはレンタルが可能です。
知床半島先端部へ行く人は、これらのページをよく読み、ヒグマについての正しい知識と対策方法を身につけましょう。
知床の3つの施設で、クマスプレーとフードコンテナのレンタルができます。出発前に立ち寄ってヒグマ対策を万全に行い、知床半島先端部地区の近況をよく調べてから行きましょう。