ここから本文です。
南アルプス国立公園の写真

公園の特長

海底の記憶が刻まれた高峰群
~深い森に抱かれ、今なお隆起し続ける重厚な山岳地~
指定:昭和39年6月1日
面積:35,752ha
山梨県、長野県、静岡県
南アルプスは、甲斐駒・鳳凰山系、白峰山系、赤石山系の3つの山系から構成され、日本で2番目に高い北岳(3,193m)をはじめ、3,000m級の高峰を十座以上有し、大井川、天竜川、富士川の源流部となっています。日本アルプスの中でも最も南に位置し、夏に雨が多く、冬の雪は少ない山域です。大量の雨が引き起こす河川浸食作用によって、深く切れ込んだV字谷が数多くみられ、また積雪量が少ないことから、森林限界の標高が高く、稜線付近まで森に覆われているという特徴が見られます。
日本で氷河が存在した痕跡のある最も南の場所で、高山帯には2万年前頃に造られた氷河地形・周氷河地形が現存しています。仙丈ヶ岳や荒川三山などで見られるカール(圏谷)もその一つです。氷河時代に分布を広げ、今なお高山帯で生きているライチョウ、キタダケソウ、チョウノスケソウや高山蝶などの動植物も見られます。また、古くから山岳信仰の対象でもあり、自然環境のみならず、文化の継承にとっても重要な地域です。

地形・景観

間ノ岳の山体と南面の谷の写真

間ノ岳の山体と南面の谷

南アルプスは100万年ほど前から東西方向の圧縮を受けて急速に隆起した非火山性の山々で構成された構造山地で、大きな山容が特徴です。
南アルプスは、現在でも隆起が続いており、その速度は年間3~4㎜で、日本最速の隆起速度です。また、世界と比較しても、その隆起速度はトップレベルです。
小仙丈カールの写真

小仙丈カール

氷河の作用によって形成されたカール(圏谷)が特徴的な地域でもあり、地面の凍結・融解作用によってできた構造土などの周氷河地形も見られます。
荒川前岳の大崩壊地の写真

荒川前岳の大崩壊地

山地が急激に隆起すると、稜線部や山腹斜面などが崩壊しやすくなります。そのうえ南アルプス地域特有の湿潤で雨の多い気候の影響を受けて、谷は深く浸食されます。
その結果、V字谷や線状凹地、崩壊地などが多く見られます。
赤石岳のV字谷の写真

赤石岳のV字谷

三峰岳から見た野呂川源流部の写真

三峰岳から見た野呂川源流部

南アルプスの森は、気候や地質の影響で森林限界の標高が高く(2,700m程度)、高所まで森林に覆われています。また、標高800m以下の丘陵帯から高山帯まで森林の垂直分布が明瞭に表れています。
荒川岳のお花畑の写真

荒川岳のお花畑

おおよそ標高1,600m付近までの山地にはブナをはじめとした広葉樹林が、標高2,700m付近までの亜高山帯にはシラビソなどからなる針葉樹林が、それ以上の高山帯ではハイマツ帯やお花畑が広がっています。
亜高山帯のダケカンバ林の写真

亜高山帯のダケカンバ林

また、高山帯と亜高山帯の境目付近にはダケカンバ林が発達します。
南アルプスの稜線部では、雄大な山々を背景に美しいお花畑を見ることが出来ます。
コケむした林床の写真

コケむした林床

植物

南アルプスには、氷河時代に分布を広げ、その後温暖になっていく過程で、気温の低い高山に残った生物(氷河時代の遺存種)が見られます。 キタダケソウ、チョウノスケソウ、タカネマンテマ、ムカゴユキノシタなど、高山に生きる一部の種がこの「氷河時代の遺存種」です。
その他、タカネビランジや、キタダケキンポウゲ、サンプクリンドウなど、南アルプスやその周辺地域にのみ分布している固有種も多く見られます。
荒川前岳南東斜面のお花畑と赤石岳の写真

荒川前岳南東斜面のお花畑と赤石岳

動物

南アルプスの動物相は、山深く原生的な森林が残されているため、哺乳類は種類数も個体数も多く、ツキノワグマ、ニホンカモシカ、ホンドギツネ、ニホンザル、ホンドオコジョなど30種以上が確認されています。
ホンドオコジョ(山岳地帯に生息する、肉食の小型哺乳類)の写真

ホンドオコジョ(山岳地帯に生息する、肉食の小型哺乳類)

鳥類でこの公園を代表するのは国指定の特別天然記念物であるライチョウです。高山帯に棲み、光岳が分布の南限となっています。 自然の豊かさを反映して昆虫類も豊富であり、高山性のチョウ類も生息しています。
ライチョウの写真

ライチョウ

クモマツマキチョウ南アルプス・八ヶ岳亜種 (長野県指定天然記念物)の写真

クモマツマキチョウ南アルプス・八ヶ岳亜種 (長野県指定天然記念物)

文化

南アルプスの山々は人里離れた奥深い自然地域ですが、古くから信仰の対象となっており、人々との関わりがありました。
地蔵ヶ岳の写真

地蔵ヶ岳

子授け地蔵伝説
子授けのために地蔵ヶ岳(鳳凰三山)に登拝した夫婦が奉られている地蔵一体を持ち帰り、願いが叶うと二体にしてお礼の登拝をするといいます。
大聖寺平の写真

大聖寺平

御嶽を拝む
その昔、長野県大鹿村から小渋川を詰め、大聖寺平まで登る道は、遥か木曽の御嶽山を拝むために開かれたものといわれています。
栗沢山から見た甲斐駒ヶ岳の写真

栗沢山から見た甲斐駒ヶ岳

駒ヶ岳信仰
甲斐駒ヶ岳(東駒ヶ岳)は、1800年代の江戸後期に、現在の北杜市側の黒戸尾根から開山されました。麓の駒ヶ岳神社を拠点に駒ヶ岳講が盛んに行われ、現在でも駒ヶ岳神社では白装束の講者たちが般若心経を唱えて参拝したあと山頂を目指す、講中登山が引き継がれています。
甲斐駒ヶ岳山頂付近(駒ヶ岳神社本社)の写真

甲斐駒ヶ岳山頂付近(駒ヶ岳神社本社)