ここから本文です。
奄美群島国立公園の写真

公園の特長

生命にぎわう亜熱帯のシマー森と海と島人のくらしー
指定:平成29年3月7日
面積(陸域のみ):42,181ha
鹿児島県
奄美群島国立公園は、鹿児島県の最南部に位置し、平成29年3月7日に34番目の国立公園として指定されました。
奄美群島の島々には、豊かで多様な自然環境と固有で希少な動植物からなる生態系、そして人と自然のかかわりから生まれた文化景観が残されています。
島ごとに個性的で魅力のある自然と、人々の営みの歴史や暮らしを感じる体験を楽しむことができます。

地形・景観

奄美大島の渓流

奄美大島の渓流

成り立ち
奄美群島は、弧状に連なる琉球列島の中ほどに位置し、新生代の新第三紀(約2,300万年から約260万年前)以降の激しい地殻変動により、大陸や日本本土と陸続きになったり離れたりを繰り返してきました。琉球列島が形成される過程で、生物の移動が制限され、はるか昔は大陸に広く分布していた生物はその島々に閉じ込められ、何万年もの長い年月をかけて島ごとに固有の種へと進化していきました。
約1,200万年前以前

約1,200万年前以前

約1,200万年前以前には大陸と陸続きであったため、アマミノクロウサギの祖先を含む多くの生物は大陸に広く分布していたと考えられています。
約1,200万ー200万年前

約1,200万ー200万年前

約200万年前までには琉球列島が大陸から切り離され、九州に続く北琉球、中琉球、南琉球のブロックに分離しました。このうち奄美群島国立公園のある奄美群島は中琉球に含まれます。
約200万年前ー現在

約200万年前ー現在

その後、中琉球は海面変化などによる近隣の島間での分離・結合を繰り返し、現在の島の形になりました。その過程で、多くの生物は島々に閉じ込められ、何万年もの長い年月をかけて島ごとに固有の種へと進化していきました。
奄美群島の島々は、その成り立ちの違いから、動植物や景観の様子が大きく異なる2種類の島々に分けられます。
山地のある高島(加計呂麻島)

山地のある高島(加計呂麻島)

山地のある高島
(奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島)
新生代新第三紀より古い地層から構成され、山地が多く起伏が大きい。山地が海岸線まで迫り、周囲は切り立った崖をなして平地が少ない。
低く平らな低島(沖永良部島)

低く平らな低島(沖永良部島)

低く平らな低島
(喜界島、沖永良部島、与論島)
新生代第四紀に形成された琉球石灰岩からなり、山地が少なく地形は低平。段丘地形がよく発達しており、数段の階段状をした段丘を見ることができる。
奄美群島は、年平均気温約21℃、年間降水量が多く(奄美大島では約2,800㎜)温暖・湿潤な気候であることと、各島の成り立ちの違いから、亜熱帯照葉樹林、干潟、リアス海岸、サンゴ礁など多様な自然環境が存在しています。

植物

奄美群島の森林は主に、亜熱帯照葉樹林に覆われており、スダジイ、アマミアラカシ、オキナワウラジロガシなど、常緑のブナ科植物が優占しています。 南方系と北方系の種が混在する豊かな植物相を有しており、約120種にのぼる多くの南方系の植物種の分布北限となっていることが特徴的です。また、ウケユリ、トクノシマエビネ、アマミセイシカなどの固有種も多く生育しています。
トクノシマエビネ

トクノシマエビネ

動物

奄美群島は、アマミノクロウサギ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、オオトラツグミ、オビトカゲモドキ、リュウキュウアユ、オオシマケマイマイなどの固有種・固有亜種をはじめとする豊かな動物相を有しています。また、奄美大島や徳之島ではハブを食物連鎖の頂点とした独特の生態系が形成されています。
海岸域には、ウミガメ類の産卵地や、アジサシ類、ミズナギドリ類といった海鳥の集団繁殖地が存在するなど、広範に移動する動物たちの重要な中継地・繁殖地となっています。
海域には生物多様性に富んだサンゴ礁が発達しており、確認された造礁サンゴ類の数は約220種にのぼり、魚類、貝類、甲殻類など多様な生物の生息場所となっています。まとまった規模と一定の生物多様性を有するサンゴ礁として世界的にみても北限に位置しています。
アマミノクロウサギ

アマミノクロウサギ

ケナガネズミ

ケナガネズミ

オオトラツグミ

オオトラツグミ

オビトカゲモドキ

オビトカゲモドキ

アマミイシカワガエル

アマミイシカワガエル

エリグロアジサシ

エリグロアジサシ

オオシマケマイマイ

オオシマケマイマイ

文化

ショチョガマ

ショチョガマ

奄美の人々は、琉球・薩摩の影響を受けながら、日々の暮らしの中で、島唄、八月踊り、豊年祭など独特の伝統文化・芸能や信仰、自然観などを生み出してきました。
諸鈍シバヤ

諸純シバヤ

このため、伝統芸能にも南方系と北方系の歌・演目が入り交じったものが見られるなど、琉球文化や大和文化などが溶け合った文化が形成されています。
サンゴ石垣

サンゴ石垣

集落を中心として前面の海と背後の山をひとつの生活空間とした奄美地域のかつての生活は、海や山に神の存在を認め、自然と一体となったものでした。古道やサンゴ石垣などのかつての生業の痕跡は、自然との関わりを示す文化的景観として現在まで伝えられています。