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エコツーリズムに取り組む地域への支援

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平成27年度エコツーリズム推進アドバイザー派遣事業

報告会

アドバイザー派遣事業を通じて行われた取組を多くの方々に共有するため、事業報告会を開催しました。本報告会では、アドバイザー派遣を活用して取組を行なった3地域、現地に赴いていただいた3名のアドバイザーから、地域の取組や課題、アドバイザー派遣を通じて目指したこと等を報告していただきました。

主催 環境省(業務委託先 NPO法人日本エコツーリズム協会)
日時 平成28年3月10日(木) 14:00〜17:10
会場 環境省22階 第1会議室
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2 合同庁舎5号館
参加費 無料
関連資料 パンフレット  PDFファイル[460KB]  新規ウィンドウで開きます

開会挨拶

環境省 自然環境局国立公園課 国立公園利用推進室 室長 田邉 仁 氏

田邉 仁氏
  • 本事業は平成17年より実施しており、エコツーリズムに取り組む地域への支援という形で、地域ごとの自然の特性や取組の状況に応じて専門家を派遣し、アドバイスしていただくものだ。
  • 今回は3つの地域と3人のアドバイザーの方に各地域の報告をいただき、皆様の質問に基づきディスカッションを行う。この貴重な機会に、活発な議論をしていただきたい。

地域からの報告1:富山県黒部市・入善町での取組

[富山県黒部市、入善町 報告レポート  新規ウィンドウで開きます ]

一般社団法人 立山黒部ジオパーク協会 参与 小谷 智志 氏

●黒部市・入善町の現況について
小谷 智志氏
  • 2014年8月日本ジオパークに認定された。日本のジオパークの中では唯一民間が運営する組織。9つの自治体と富山県からの支援を受けているが、財政的には脆弱なのが実情。
  • ジオガイド養成講習を121名が受講し、そのうち35名がガイド登録をしている。立山黒部ジオパーク協会内にジオツーリズム部会があり、ツアーの企画をしている。直近ではモデルコースの作成やモニターツアーの企画を手がけた。しかしながら、ツアーの企画・販売を協会側が全面的にやっているわけではない。
●アドバイザーからのアドバイスの内容
  • 持続可能なエコツーリズムの三本柱は①保全②ビジネスとして成立するのか③エンターテイメント性をどこまで高められるのかの3点。持続可能なエコツーリズムのためには、自然の仕組みをベースにエンターテイメント要素を取り込み、ビジネスとして成立させる事が必要という話が印象深かった。エコツーリズムがもたらす効果は持続可能であることを大前提に、それをお客様にも伝えて行くことが必要。体験型ツアーで知識だけを伝えるのではなく、楽しんでもらう。
  • 参加者の満足度を上げるには、アンケートを実施し、データを蓄積・分析し、マーケティングをする上での数字を押さえることが大切(勘でやるのではない)。インバウンド対応の強化は、地域別(アジア、欧米)それぞれの特徴を理解した上で行う。
  • ガイドプログラムの企画、販売には、まず市場を知ることが大切で、どういう人が来ているのかを把握し、楽しんでもらえるコンテンツを探す。観光客の動きや行動を観察するという話が印象的だった。経験値の高いアドバイザーから実践的なお話を伺えて、黒字化に向けて長い道のりではあるが粘り強くやっていきたいと感じた。

地域からの報告2:岩手県陸前高田市での取組

[岩手県陸前高田市 報告レポート  新規ウィンドウで開きます ]

まるごとりくぜんたかた協議会 事務局 越戸 浩貴 氏

●陸前高田市の現況について
越戸 浩貴氏
  • 陸前高田はもともと観光地ではなかったところに、たくさんのボランティアが来るようになり、多くの人に興味を持ってもらえるようになった。この陸前高田に興味を持ってくれる人を資源に、5年10年先を見据えて街を盛り上げていく組織をつくろうということで、交流人口増加のためのワンストップの総合窓口としてまるごとりくぜんたかた協議会を設立。
  • ようやく2年くらい前から陸前高田をどのようなインフラ整備で復旧させていくかが盛んに議論されるようになった。高台造成が進まないと家が立てられないという一方で、本当に安心な構造なのか、行方不明者がまだいるため埋め立てに反対する声もあり、ジレンマが生じている。
  • 交流人口増加のための取組として、社会人研修、企業・行政研修・大学授業、課外活動、中高生向け教育旅行のコーディネートを行う。震災ガイド、学習、海のものが食べられるといっても、隣の大船渡や気仙沼と横並びで特徴がない。陸前高田は観光・人材資源が少ないため、「学び」の価値をとがった形で推進していくことが重要と考える。
  • 『震災で大変になった町』という認識でなく、『社会課題の先進地』として認識してもらう。誰かの町の苦労としてではなく、自分の町、自分の将来にも関わるであろうという目線で学習し、何かを持ち帰ってもらいたい。
●アドバイザーを受け入れて
  • 民泊の受け入れ態勢の本格始動に向けて、民泊推進の事務局になる人間が安全管理指導責任者、衛生管理指導責任者の資格取得の講座を受講し、受け入れ協力者との懇談が必要。
  • 中高生向けの教育旅行事業では、もっと学びの深いことをしたいという理由で陸前高田が選ばれている。民泊、交流を通して生の声が聞こえ、顔が見えるということから、問題を生徒たちが自分に関わることとして捉えやすい。教育旅行といえば陸前高田、京都や広島など他の人気の修学旅行先と並ぶ顔としていきたい。
  • 被災地の“かわいそうなイメージ”を払しょくし、支援を受ける町と同時に、何かお返しができる町にしていきたい。保守的にならず攻めの姿勢を大切にしてとがったことをしたい。そのためさまざまな世代、属性の市民を取り込んでいきたい。

地域からの報告3:奈良県川上村での取組

[奈良県川上村 報告レポート  新規ウィンドウで開きます ]

川上村 地域おこし協力隊 竹中 雅幸 氏

●奈良県川上村の現況について
竹中 雅幸 氏
  • 奈良県と三重県の境にある川上村は、吉野林業の発祥地であり、面積の95%は杉とヒノキの山林。吉野杉の林には400年前に植えられたという記録の残っている木もあり、日本古来の森林の姿が見られる。この森を『歴史の証人』という形で村が買い取り、水源地の森づくりを目標に平成11年から保全している。この林全域のユネスコ申請を目指している。
  • 平成8年の『川上宣言』で謳われている「自然と一体となった産業」こそ、これからの川上村にとってのエコツーリズムと考える。現在までに取組んできた水源地の森ツアーや伐採見学ツアーにも特色が見られる。しかし「ふれあい」という色合いが強く、生業として運営されているものがないのが現状。
  • エコツアーガイド経験者と一緒にエコツアーのプログラムを作っているが、旅行会社にいた経験も短いため、ツアー運営・集客・収益性のノウハウに乏しい。昨年度15回開催したプログラムにはのべ122人が参加してくれたが、協力隊の予算に頼っている部分があり、生業としてエコツアーの運営が成立しているとは言えない。エコツアーを生業として成立させるための道筋と、川上村としてエコツアー・ツーリズムをどうしていくか示してもらうためにアドバイザー派遣を申請した。
●アドバイザーを受け入れて
  • 今回のアドバイザー派遣には、2名のアドバイザーが来村し、原生的な自然とどう付き合っていくべきか、山と人との関わりという点で、どのように地元の人と付き合っていくべきかをプロ目線で話を伺った。プログラムの組み立て方、売り方など日々プロとして実践していることを教えてもらった。
  • 二人のアドバイザーが共通して言うことは、川上村には5日間過ごせるくらいの資源があることは分かったが、それの芯が何なのかというのが見えてこないのが大きな課題ということが指摘された。これにより、自然環境を「ふれあい」でなく「産業」として位置付けていくことが必要ということが分かった。
  • エコツーリズム全体構想は今すぐ取り組むということではなく、川上村にあった既存要素を束ねるときにフレームワークとして捉えるのが有効ということが整理できた。今後の課題として全体構造の作成を考えていきたい。

アドバイザーからの報告1:岩手県雫石町(観光商工課)

[岩手県雫石町 報告レポート  新規ウィンドウで開きます ]

アイ・エス・ケー合同会社 代表 渡邊 法子 氏

●エコツーリズム推進アドバイザーを呼んだ目的
渡邊 法子氏
  • 雫石町は総面積の7割が森林で、動植物の多様性に満ちている。その中には全国的に知られエコツーリズム界でも賞を受賞する小岩井農場を有する。雫石町での第3次産業(サービス業)に従事している人の割合は35%をこえ、経済面でも70%以上を支えている。観光業が定着しやすく、エコツーリズムには適した地域だ。
  • 地域には山岳ガイドや自然観察ガイド、または案内できる人という人的資源は30人ほど存在し、ツアーの催行に向けて地権者との交渉や環境作りという活動に取り組んでいる。その上で、エコツーリズムとは何なのか、この地域でエコツーリズムを広げ、どういうことをしたらいいのか、また、地域住民を巻き込んでエコツーリズムにどのように取り組むべきか、きっかけとなることがあれば聞きたいという要望だった。
●エコツーリズム推進アドバイザー派遣について
  • 胎動期の雫石で、エコツーリズムとは何なのかを一緒に考える機会となればと思い、これまでエコツーリズムに従事してきた人と、これから携わりたいと思う人が知り合ってもらう機会を設けた。案内人こそエコツーリズムの付加価値であることを互いに認識し、共有できる枠組みのようなものを作れるようにヒアリングを行った。
  • 今回の派遣で体験したスノーシューウォークには、地元役場職員も一緒に参加した。初めてスノーシューウォークを体験するという職員の参加で、森に生息する動物のことなど、地元の人ですら知らない感動があることがわかった。エコツーリズムの顧客というのは必ずしも遠方から来た人ではなく、その地域に住む人もお客様と考える必要がある。事実、雫石町の観光データによれば年間200万人の訪問者のうち50%が県内からで、大半がマイカーで来て屋外での体験を目的に来ている。このようなポイントから、商圏は県内にも広げることができて、地域資源を紹介するツアーには、地元の人に体験してもらってこそ、その地域ならではの資源や歴史を次世代に伝えていく土壌が出来上がると伝えた。
  • 地域のご老人がその地の方言で地形や地名から来る物語を小冊子にまとめる語り部の会も開催されている。エコツーリズムの商品は自然の中を歩くことだけではなく、地域のことを理解することも素晴らしいエコツーリズムの商品であると伝えた。
  • 持続可能なエコツーリズムを事業として成立させるのに必要な資源は整っているが、全体をコーディネートするという役割だけが整っていない。それぞれの従事者や組織が一つの土台で水平的なネットワークを構築すれば、立派なエコツーリズムが実現できる地域だと確信した。今後この地域が全国の模範となるエコツーリズムの流通を示すことのできる取組を実施できると期待したい。

アドバイザーからの報告2:岡山県真庭市(蒜山エコツーリズム推進事業実行委員会)

[岡山県真庭市 報告レポート  新規ウィンドウで開きます ]

公益財団法人日本自然保護協会 参事 横山 隆一 氏

●エコツーリズム推進アドバイザーを呼んだ目的
楠部 真也 氏
  • 岡山県真庭市は「里山資本主義」という言葉を使って、バイオマスエネルギーの開発や真庭市の林業を薪炭林として、エコな活動に取り組んでいる。明治頃、軍馬を育てるため森を切って草原にした。今ではジャージー牛というおいしい牛乳を出す乳牛の飼育がされている。ブナや栃の森もあり、日本海側の要素が強くみられる。場所によってはサクラソウの大きな自生地もある。古くから温泉が湧き出る川もあり、世界最大の両生類オオサンショウウオも生息する。最近ではB級グルメ「ひるぜんやきそば」が有名。山から取ってきた山葡萄の苗を育て、山葡萄100%のワイン作りにも成功している。
  • 蒜山地域におけるエコツーリズムは、平成16年から大山隠岐国立公園の一角をなす自然豊かなエリアで準備を始め、組織設立やガイド養成をしてきた。エコツーリズム資源も揃って、一見温和に取り組まれているように見えるが、実際のところは対立している。事務局機能は設立後行政から地域の観光協会に渡されたが、観光協会設立当初の規約や構造は実効性に乏しく、組織が分裂し平成25年から休眠状態になっている。エコツーリズム立ち上げの頃から地元の公務員・教育活動に携わる方々が中心となってやってきたガイドクラブは、どちらかというとボランティア色が強い。一方I/Uターンで戻ってきて「外の目」を持つ人たちが中心となり、エコツーリズムを事業化したいと思う人たちが構成する蒜山ツアーデスクと対立しているのが現状。行政はその間で板挟みとなっている。今回の派遣事業をきっかけに、蒜山のエコツーリズムを立て直したく、今回のアドバイザー派遣に応募された。
●エコツーリズム推進アドバイザー派遣について
  • 人間が、他の人間とその下に動物・自然を隷属させて行く「エゴロジア」と、人間、動物、自然が共生する「エコロジア」という2つの図を基に、蒜山で行われているのはどちらかを議論した。また言葉の定義を見直しながらエコツーリズムを見直した。「旅」と「旅行」という言葉は普段何気なく混同させながら使っているがその意味は全く違うことを説明した。また「みる」という動作についても、漢字で表すと種類がたくさんあり、エコツアーの中で異なる種類の「みかた」を一つずつ体験することがエコツアーのプログラムになると伝えた。
  • 生態系サービスの持続は、ただ豊かな自然に囲まれているだけでは何も始まらないという話をした。生態系サービスの持続には取り巻く豊かな自然を活かせて、またその自然をしっかり理解しないことには持続ができない。

アドバイザーからの報告3:北海道遠軽町(白滝ジオパーク推進協議会)

[北海道遠軽町 報告レポート  新規ウィンドウで開きます ]

株式会社知床ネイチャーオフィス 代表取締役社長 松田 光輝 氏

●エコツーリズム推進アドバイザーを呼んだ目的
楠部 真也 氏
  • 北海道で遠軽町というと自衛隊の駐屯地のイメージが大きい。遠軽町は海に面していないため、町の中心産業は農業。黒曜石の世界有数の産地であることでジオパークに認定された。しかしビジュアル的に迫力がないため、今後のブランディング方法に工夫が必要。
  • これまでの取組は旧石器時代の鏃に用いられていた黒曜石を資源としたツアーや、丸瀬布昆虫生態館が子供向けプログラムを実施するなど、行政機関のサポートを受けながらエコツーリズム、ジオツーリズムを展開している。エコツーリズムの下地は整っている。
  • もともと観光地でなかったため宿泊施設の選択肢とキャパシティが少ない。税金を使って行っているツアーがほとんどのため必要経費しか取れず収益構図が作られていない。現在担当者個人の努力が大きい面があり、後継者不足や将来的な人材不足が懸念される。この地域は遠軽町、丸瀬布、生田原、白滝村が合併してできた町で、観光協会はそれぞれの町にあるが、連携が十分にとれていないため一つの組織になりきれていないことも課題の一つ。
  • 今後、地域の資源を使ってジオパーク推進に取り組み、経済活性化を図りたいという希望はあるものの、どうしたいのか具体的なイメージがわかない。遠軽町はエコツーリズムで有名な場所ではないため、エコツーリズムで食べていける人を育成できるとは思えないと諦めが大きいのが現状。
●エコツーリズム推進アドバイザー派遣について
  • 関係者はジオパークには登録認定されたがビジュアルに迫力がないためお客様が来ないのではと心配している。しかし、この地域には自然資源や歴史文化資源といった資源はあるので、ブランディングを正しく行えば十分お客さまを呼び込める地域にできると伝えた。
  • キャットスキー、犬ぞり、黒曜石、シルキースノーといった優れた観光資源が多数ある。また個人では農家民泊、農業体験を始めるところも出てきている。このような優れた資源も手伝い、滞在型観光が可能な地域だと感じた。
  • 次へのステップに必要なのは、民間事業者が中心となってエコツアーの運営と、収益を上げられるような料金設定と収益構造の改善を行い、後継者を育成し、観光イメージのブランディングとさらなる観光資源の発掘、商品開発と販売方法を確立することが必要と伝えた。
  • キャットスキーや雪質を考えるとインバウンド向けの商品が作れると思う。そういう人たちを呼び込んでスキーをしたりジオツーリズムをしたり、今後外国人向けに商品作りをしやすいと提案した。
  • アドバイザー事業のメリットは、地域へのアドバイスはもちろん、合併した町で地域の人材交流の場になることだと感じた。また地域観光資源を知るとともに交流することも必要と感じた。

パネルディスカッション

モデレーター
  • 日本エコツーリズム協会 事務局長 辻野 啓一 氏
パネリスト
  • 一般社団法人立山黒部ジオパーク協会 参与 小谷 智志 氏
  • まるごとりくぜんたかた協議会 事務局 越戸 浩貴 氏
  • 奈良県川上村 地域おこし協力隊 竹中 雅幸 氏
  • アイ・エス・ケー合同会社 代表 渡邊 法子 氏
  • 公益財団法人日本自然保護協会 参事 横山 隆一 氏
  • 株式会社知床ネイチャーオフィス 代表取締役社長 松田 光輝 氏
  • 環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室 室長 田邉 仁 氏
  • (1)2020年東京オリンピック開催に向けて取り組んでいるインバウンド対策はあるか。
渡邊氏
ディスカッション
  • インバウンドでもエコツーリズムでも、地元が仕組みを作って商品を買ってもらえる状態の整備、受入態勢を整えることが大事。これらが整って、プロモーションができる。また「東京オリンピック」といっても、インバウンドの舞台は日本全国であることを忘れてはならない。
小谷氏
  • 富山市在住のアメリカ人の知識人に、『立山黒部ジオパーク』という日本語の「立山」や「黒部」という言葉では、欧米人は検索しないだろうということで、名前を変えた方が良いと指摘された。
  • インバウンド対策といっても、狙うターゲットによって策は異なる。例えば移動手段で欧米人は自ら歩き乗り物を使わないのに対し、アジア人は乗り物を使う傾向にある。そのためターゲットを欧米人かアジア人にするかでインバウンド対策は異なる。
  • 今後はトレッキングをベースにし、キャンプ場と空港や新幹線駅とうまく連携させたいと話し合い、企画作りしたいと思っている。
松田氏
  • 冬になると雪の降らない国から雪に憧れてやってくるアジア人観光客のガイドツアー利用が増える。公共交通機関が充実していない分、ガイドツアーに参加すれば宿に送迎してくれ、またガイドと一緒ならばいろいろと周れるという利点がある。また宿泊施設側がいろいろと質問されて回答に困り、ガイド付きツアー参加を促しているのもガイドツアー利用増加の理由として考えられる。
  • インバウンド需要増加に伴い現在の課題は外国人対応。日本人と外国人を同じツアーに参加させて2カ国語で説明すると、話せる内容も半分になってしまうため、日本人参加者の満足度が下がってしまうという懸念と、自然との接し方に慣れていない国からの人に、どのように動物にエサを与えないようにと伝えるかが今抱えている問題。
  • (2)エコツアーのツアー料金設定の基準を教えてほしい。
松田氏
  • 海外のエコツアーの価格や、国内の娯楽産業で1日にお客様がどれくらい使っているかも参考にできる。ただしその数値が完全に当てはまるという訳ではない。
  • またプロのガイドとして食べていける年収をいくらにするかによっても、料金設定は変わる。
  • (3)ジオパーク申請を検討する上で、地域内での想いの共有はどのようにしているか。苦労などを聞かせてほしい。
小谷氏
  • まずは成功事例を作ることが大事。ある企業がうまくいったから、自分たちもそのようにやってみようと広げていくのが大事。しかし、自治体の想いとは温度差があり、想いを一つにするというのはむずかしいと感じる。ジオパークはユネスコの正式事業になり、自治体の見方も好意的になってきている。
越戸氏
  • 「震災前の陸前高田に戻しても前より良くしなければ意味がない」という共通意識はあるが、「震災前後」という時間軸の区切りで、元に戻そうとする力と発展していこうとする力が働きどこかで衝突する。何をやっても睨まれているのが実態。
  • 多くの人を巻き込んで体制を整備することは難しい。若者が「子供扱い」されやすい中、こういうことをやろうとしているので協力してほしい、と懐に入り案件や研修を一緒に行い仲間になっていくというやり方をしている。
  • (4)全体構想の認定を受けて変わったこと、効果が出ている例があれば教えてほしい。
田邉氏
  • 全体構想を作っただけで何か効果が出るとは感じていない。全体構想の認定を受けるメリットは国が広報の支援をすること。どのように売り込みをかけるかは自分達で考えて、支援とマッチングさせる努力が必要。
  • (5)将来Iターンを考えている。外の目で地域を見るにあたり気をつけることは何か。
横山氏
ディスカッション
  • 「自分がよそ者だ」という意識を持つこと。よそ者の目で地域を見るときは、地域の人から学ぶ姿勢で臨む。また外から来た人間であるからこそ気付くことのできる、その地域にある普遍的なものやありふれたもの、当たり前のもの、その地域にしかないものにできるだけ気付いて地域の人に伝えるようにも心がけている。
  • Iターンとしてどう振る舞ったらいいかということについては、地域に溶け込んで地域社会を構成する重要な人材になっていかなければならない。また地域がそのような期待をされているならば、その期待に応えられるようにたくさん勉強していかなければならない。地域によっては若者の言動が軽んじられることもあるが、若いからといって遠慮せず、その地域にとって有益な発言・行動に精を出すことが大事と思う。
  • (6)地域の魅力や楽しさを伝えるには、地道なPRが必要。何か効果的な方法や媒体があれば教えてほしい。
渡邊氏
  • 静岡県稲取には江戸時代から伝わるつるし雛があり、九州と山形にも同様の伝統がある。同じつるし雛でも、文化や歴史によって人形に込められた思いは違う。そこでこの3都市を結び3地域のつるし雛サミットを行った。その3都市のつるし雛を発信したことで稲取には福岡と山形、山形には静岡と福岡からといった具合に多くの訪問があり、3都市それぞれにとって効果があった。
  • 少し離れた商圏でも発信力がありそうなところがあれば交流してみるのもいいかもしれない。インバウンド誘致の点では、歴史・地形・地質などで関連性のある国と交流してみるのも効果的かもしれない。
  • (7)ターゲットの絞り込みはどのようにすべきか。
渡邊氏
  • 旅行会社がお客様を連れてくるところもあれば、情報発信しなければ集客人口を見込めないところもある。まずは周辺地域の人たちをターゲットにするのも、人を呼び込む一例。外からのターゲットを絞る前に、どれだけ地域の人が外から来た人に応対できるか、入山のし方や自然について語れる人を増やしていかないといけない。地域によって目的や来場方法などのデータに基づいてPRするのも必要。
  • (8)エコツーリズムが流行らない理由は何か。
松田氏
  • 今まではマスメディアやマスコミが発信すれば社会が動いていたが、今は口コミ(個人)が人を動かしている時代。それにあった魅力ある商品を作っていかなければ人は来てくれない。情報発信は必要だが、自然を楽しめるコンテンツを整える必要がある。また「魅力ある商品」にエンターテイメント性を盛り込むことも重要。
  • 情報発信して広げていくためには、地域の特性を知らなければならない。そのためには他の地域も見てみて、自分の地域の長所が何なのかを知った上で発信することが大切。
横山氏
  • そもそもエコツーリズムとかエコツアーを流行らせなければならないものなのか。自覚できる「流行」はマスメディアで取り上げられるものだけ。「流行」を「ファンが付いている」と置き換えて考えてみる。
竹中氏
  • 大々的にエコツーリズムで人を呼び込んだ方が良いというイメージはない。一度にたくさんの人が来ても、それだけの人数を収容できる宿泊施設も道路もないので、適正なくらいが丁度いい。

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