環境省
VOLUME.75
2020年2月・3月号

健康に良い住まいづくりは、温度を知ることから始めよう 省エネルギー住宅は健康にも良いというメリットが報告されています。
住まいの温熱環境や省エネルギー化の専門家に、住まいの温度と健康の関係について伺いました。/教えてくれた人 住まいと環境社代表・Forward to 1985 energy life代表理事 野池 政宏さん

 住まいには、さまざまな健康リスクが隠れています。特に室内の温度と健康には深い関わりがあり、温度と湿度が高いと屋内でも熱中症になる危険性があることはよく知られています。熱中症以上に危険なのが、冬の入浴時などに起きるヒートショックです。ヒートショックは、温度の急激な変化によって血圧が大きく変動し、心臓や脳の疾患が起きることをいいます。ヒートショックが原因で亡くなる人は、熱中症や交通事故よりはるかに多く、年間1万7000人にのぼるともいわれています。住まいの断熱性能を高め、室内の温度を適切に保つことは、こうした健康リスクを軽減するためにも大きな意味があります。

 家の中を快適な温度に保つポイントは、窓の断熱性能にあります。夏は窓から入る日差しで室温が上がり、冬は窓から室内の熱が逃げてしまうため、窓はいわば住まいの「弱点」。カーテンの裾が床に付くようにしたり、内窓を取り付けたりすることで、熱が逃げにくくなり、省エネにもつながります。夏は、窓の外にすだれなどの日よけを付けるだけで、レースのカーテンの3倍もの日よけ効果があります。

 ヒートショックは、リビングなど暖かい部屋と脱衣室や浴室の温度差をなくすことで防ぐことができます。入浴時は小型のヒーターなどで脱衣所を暖め、温度差を10℃以内に収めることを心掛けてください。脱衣室や浴室の断熱リフォームをするとより効果的です。

 健康に良い住まいづくりは、家の中の温度や湿度を知ることから始まります。私がおすすめしているのは、リビング、脱衣室、寝室の3カ所に温湿度計を置いて暮らすこと。窓はどの程度の温度と湿度で結露するのか、リビングと脱衣所は何℃違うのか、といった住まいの現状を数値で知ることで、どんな対策を講じればいいのかが具体的に見えてきます。日常的に身の周りの温度や湿度を意識し、より省エネで体に負担のかからない住まいづくりにつなげていただきたいと思います。

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